第11話 大人の初恋は大体拗れる

「ふぁあ…、」


「あら、昨晩はあまり眠られませんでしたか?」


「あ、うんちょっと…考え事で、」


昨夜いろいろありすぎて睡眠不足なうなんだけれど、アリアさん達に話すにはなんだか恥ずかしくて誤魔化してしまう。ちなみにつけられた痕は回復魔法で夜に消しました。いや、三人にお風呂でマッサージされたり身支度を整えられるから、そのままにしておけなかったんだもん…。もったいなかったかな、なんてちょっとだけ思ったり…ラジバンダリ…。


「聖女様はご多忙ですものね…」


「神聖力の講義に教皇様方との面会…。必要であることはわかりますが、些か詰め込み過ぎではありませんこと?」


「休息も大切ですわ。御体に障ります。」


欠伸を噛み締めて昨日の羞恥を飲み込んでいると、真剣な顔で会議を開催していた美人神官三人衆は纏まったのか頷きあっている。


「聖女様、本日のご予定は全てお断りいたしましょう!」


「はえ?」


「そうです!折角こんなにも良いお天気なのですから、気分転換などいかがですか?」


うお、まぶしッ!キラッキラの笑顔が美しすぎて目が眩むかと思った。


ファストこの街は神殿を中心とした観光地なのです。」


「え、そうなの?」


そのわりに神殿内で神官さん以外にあったことが無いんだけれど…。私の疑問が顔に出ていたのか、デイジーさんが補足してくれた。


「私達の滞在している区画は、神殿関係者でも大神官以上の者しか入ることが許されない特別区なのですわ。」


なるほど、毎回ソドムさんに案内して貰ってついていってたから気が付かなかったや。言われてみれば外から見たときは凄い大きな建物だったし、神殿の正面は門番さんがいた所だろう。となるとここは裏側なのかな?


「劇場はもちろん大棚の商業ギルドもございますから、見て回るだけでも楽しめると思います。」


「服飾店は一日では回りきれないほどございますし、是非楽しんでいらしてくださいませ。」


方向性が決まってからは神官服から可愛らしいワンピースに着せかえられて、あっという間に鞄を持たされて外に送り出されてしまった。


「と、言うわけさ!」


「なるほどな。なら今日はシンジョウの興味の向くものを探すか。」


神殿の裏側で呆然としていたらすぐにゼロさんが出てきたので、ことの顛末を説明した次第。睡眠不足なのは内緒だぞ!あとテンション高いのは意識してるからじゃないんだからね!


「だけどよかったのかなぁ?今日はデュヴァルさんだっけ、教皇様と会う予定なのに。」


そんなことをミトラ様がいっていた気がする。


「それは問題ないだろう。神官の言う通り神殿は聖女が第一だからな、お前が疲労で倒れでもすれば全員の首が飛ぶぞ。」


「ひぇえ…ッ」


なにそれワロえない。怖すぎるでしょ睡眠不足って言わなくて良かった…。勝手知ったるかどうかわからないけれど、迷い無く歩くゼロさんについて行けば良かろう。


「それで、シンジョウはどこか行きたいところはあるか?」


「う~ん…、強いて言うなら冒険者のお店とか?サイズの合う洋服とか調理器具がほしいな。でも荷物がなぁ…」


「服か…」


「ん?」


充実した旅路のための装備は嵩張るのです。どうしたものかと悩んでたら立ち止まったゼロさんから見下ろされてるなう。なになにどうしたん?どこみてるんだい?


「なんだね?」


「いや、シンジョウは背が低いからな。いっそ作った方が良いんじゃないか?」


「まさかのオーダーメイド」


服の話しか。しかし理由が切なすぎませぬか?涙ちょちょぎれそうだよ。若干遠い目になっていたら今度はゼロさんが首をかしげて


「冒険者でも上位になれば量産品は使わんぞ。一瞬でも動きが阻害されれば命取りになるからな。」


「なるほろ!…私Fランクですが許されますか隊長…」


「貴族の子供が手慣らしに冒険者になることもある。気にしなくてもいい。」


やったぜ。つまりお金があれば初心者でもおkってことですな。


「お小遣いという名のお給金を貰ったから、金ならあるんや!」


そう、今日のワンピースにあわせた鞄には、見るも恐ろしいお財布が入っているのです。中身はもちろん聖女宛のお布施。


「ゼロさんに渡した分だって余ってるのに…、」


なにが怖いって、少年王が大々的に聖女を広めたから神殿へのお布施が増えているんだって。つまり私の通帳に毎分自動で大金が振り込まれているようなもので。怖すぎて金額とか聞けてないよ。


「そうだな…、先に宝石店に行くか。」


「宝石?ゼロさんなにかほしいの?」


「行けばわかる。」


イタズラ顔で手を取られて、一瞬息が詰まった。いやいやいや、勘違い良くない。これは迷子と転倒防止であって、ゼロさんだって顔色ひとつ変わってないし。って言うか、痕付けられたのだってからかわれただけだから深い意味なんて無い!…はずだから。うるさい心臓に釘を刺して、深呼吸。ひっひっふー!


おてて繋いで到着したのはガラス張りの大きなお店。…良く考えなくても宝石を売ってるんだから高級店だよね。え、緊張してきた。入り口に羽のついた子供のマークが飾ってあるけど、ブランドロゴかな?


吹き抜けの天井にシャンデリアがお迎えしてくれて、ショーウィンドウの中でカラフルな宝石がキラキラ輝いて圧倒されております。


「ぜ、ゼロさんや。ここって私が入って大丈夫なお店?間違えてない?場違いハンパないよ?」


「ふ…、くく、」


「絶許。」


繋いだままの手を引っ張って主張する声も、声帯が自主的に小声に調整するレベルだよ?震える私のなにが面白いのか、笑いを堪えて2階に上がっていくゼロさんにイラッとしたけれどアウェー過ぎて大人しく島国。


「バルト様、お久しぶりでございます。ご健勝そうで何より。」


「ああ、久しぶりだな。」


2階に上がってすぐ、ダンディなおじ様に歓迎されてついゼロさんの後ろに隠れてしまった。ヘイヘイ、いつまで笑っているつもりかね!ゼロさんの挙動が可笑しいからおじ様に変な目で見られちゃうじゃないか!


「…バルト様、わたくしは感激いたしました。まさかあのバルト様が恋人をお連れになって当店へいらしてくださるとは…っ!」


「ち、違います!」


おじ様がぶるぶる震えたかと思ったら、ハンカチで涙を拭いながらとんでもないことを言い出した。なにいうてはりますのん。


「おや、そうなのですか?しかし…、」


な、なんだね?視線を感じる先を見たら、まだ繋いだままだった手が。oh、これは勘違いされますわ。即座に手を離そうとして、逆に強く掴まれて肩が跳ねた。


「おん?!なんで?!離したまえよ!」


「俺はこのままで構わないぞ。」


「私が構うんじゃい!意地悪良くない!」


君とおじ様は顔見知りのようだけれどね、私は初対面なんだぞ!人前でからかわれて、平気なわけがあるか。振り払おうとしても離れないんですけどこのやろぅうっ!


「これ以上からかうなら私一人でお買い物にいくから!」


「それは困るな。」


「あ、」


思いの外簡単に離れた手に呆気に取られて、ゼロさんを見上げたら悪い顔に見下ろされてた。


「なんだ、離れたくなかったのか?」


「………は、」


離れた手が涼しいとか、ちょっと寂しく感じてしまったこととか。恥ずかしかっただけでもっと繋いでいて欲しかったなんて、見透かされた気がして。


「…っ、」


意地悪だ。絶対にからかわれてる。顔が熱い。見知らぬおじ様に見られてる。恥ずかしい。


「ッ、すまん!あぁ、泣くな頼む…悪かった、もうしない。」


泣いてない。こんなことで泣かない。ただ私ばっかり悩んで意識して、悔しいから、声が上手くでないだけだから、だから


「ゼロさんなんかきらいだ…」


蚊の鳴くような情けない声が出た。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「シンジョウ、」


やりすぎた。赤くなった顔を押さえて俯いてしまったシンジョウに声をかけるが、ピクリともしない。俺を意識するシンジョウの反応が可愛らしくついイタズラに振る舞ってしまう。馬鹿か俺は。こんなことをしていれば嫌われて当然だろう。


「…はじめまして、私フェアリークラウン店主のガルシアと申します。先ほどは大変失礼を致しました。よろしければお嬢様のお名前をお伺いしても?」


「…シンジョウです。」


「シンジョウ様。どうぞこちらへお掛けください。」


どうしたものかと途方にくれていると、ガルシアから目配せされ上手くシンジョウをソファに誘導してくれた。


「すまん、助かった。」


「バルト様は意中の女性に意地悪をするタイプなのですねぇ。」


「そんなつもりはないんだが…」


「おやたちの悪い。しかしバルト様がこんなにもわかりやすいのは初めてで、わたくし楽しくなってまいりました。」


「勘弁してくれ…。」


紅茶を持って来た女の店員に話しかけられ、シンジョウが受け答えている間に今度は俺が揶揄され返答に詰まる。


「シンジョウ様、改めましてようこそ当店へ。」


「えっと、…お邪魔します?」


「ふふ、私共の店は宝石ならばオーダーメイドからお求め易い品まで幅広く取り扱っております。モチロン品質は最上級を保証致しておりますので、きっとシンジョウ様の最高の一品がみつかりますよ。」


ガルシアの人好きのする笑みと対照的に、シンジョウが困惑しているのはこの店に来た理由がわからないからだろう。


「ガルシア、今日はマジックリングを買いに来たんだ。あるだけだしてくれ。」


「畏まりました。すぐにお持ち致します。」


「…マジックリング?」


「!ああ、服や調理器具を入れるといい。ここは冒険者と取引もしているから、他より種類が豊富なんだ。」


魔道具に興味が引かれ話の続きを促すようにこちらをうかがってくる姿が、まるで人を警戒する野良犬のようで可愛らしい。いや、我慢しろ。これ以上怒らせれば次はない。


「マジックリングには空間魔法が使われております。空間魔法を扱える魔道士は限られておりますので、どうしても値が張るのですよ。」


戻って来たガルシアの手には五種の指輪がリングトレーに乗せられていた。


「わぁ…、」


「よく五つも手に入れたな。」


「近年のダンジョン強化により宝物ほうもつのランクも上がったようでして、運良く高ランク冒険者から買い取ることが出来たのです。」


ニコニコと人の良い笑みで話しているが、恐らく後で俺に指名依頼を出そうとしているのだろう。その情報の前払いにでもするつもりか。


ガルシアは初対面時から商人らしい商人だった。利が有るとわかればスラム上がりの冒険者パーティーに目利きを教え、宝物の取引を持ち掛けてくるような。


「こちらは右から順に容量が大きくなっておりまして、最大でバンクベア二十頭は入ります。」


「バンクベア?」


「バングベアは体高5mを超える魔物だ。それだけ入れば荷物を全て入れても余裕があるな。」


「う~ん…、」


「よろしければお持ちになってご覧ください。身に着けて頂くと、自動的にサイズが変わりますので。」


一番大きな容量のマジックリングを選ぶのかと思っていたが、真剣な表情で悩んでいるシンジョウにガルシアが保護手袋を手渡している。…利便性よりデザインの問題なのだろうか。保護手袋を着け一つずつ持ち上げては光に透かしている。甘美な装飾が彫られている薄紅の物、豪華な台座に大きな赤い石のついた物。


「あ、…これ、」


「こちらは容量は中程度ですが、浴槽一杯分の荷物は収納可能ですよ。」


「これにします。」


「どうやらシンジョウ様にとって最高の一品に出会えたようですね。ようございました。」


シンプルな銀のリングには、台座も無く黒い石がはめ込まれていた。なるほど、シンジョウの髪色と同じ黒檀の様な黒だ。飾り気のない銀は一瞬冷たく見えるものだが、リング自体が緩く曲線を描いていて柔らかい印象もある。


「気に入るものがあって良かったな、よく似合っている。」


「ふふ、ありがと。」


「他の色も似合っていたが、何故それにしたんだ?」


「ん?」


所有者設定の為に係りの者が針でシンジョウの指先を突き、宝石に血を一滴垂らす。血に反応した魔石の輝きは、青みを帯びて…あお?


「これ、光に透かすと紺色なんだよ。ほら、」


眼を細めて微笑むシンジョウの手に摘ままれ、光に透かされた魔石の中心は青く、外へ進む程黒に似た紺へ色を変えていた。


「シンジョウ様は青色がお好きなのですか?」


「はい、大好きです。」


「それはそれは。ところで、ご存じですか?指輪をはめる指は意味がありまして、私のおススメは右手の薬指です。魔除けになりますよ。」


「へぇ、じゃあそうしようかな。」


熱が上がり止める余裕も無い俺に、至極満面の笑みでこちらを透かし見てくるガルシアが余計な世話を焼いてくる。将来を誓った相手がいると、相手の色の装飾を付ける。身に着けやすい指輪は相手の心臓に近い右手の薬指に。…そんな事をシンジョウが知るはずもないのに、俺と同じ色を選び、流されるまま薬指に付けてしまった。嬉しそうに笑っている姿に何も言えず、いずれシンジョウが意味を知るまでは…いや、本物を贈るまでは、そのままでも構わないだろう。と、自分を誤魔化した。


「んん゛、シンジョウ。マジックリングの他に、欲しいものはあるか。他にも気になる物があれば、ガルシアに言うと良い。」


「他かぁ…最近ピアス開けちゃったし、指輪も買ったから増やさなくてもいいかな。」


マジックリングを買い気分もよくなってきたのか、普段通りのシンジョウに息をつく。嫌いだと泣かれた時は心臓が冷えて血の気が引いた。…トラウマになりそうだ。


「…つかぬ事お伺いしますが、シンジョウ様。今お召しになっているピアスはどこかの工房の物ですか?」


店員に支払いを済ませ、取引用紙を受け取っている間にガルシアがシンジョウに近づいていた。


「不躾な質問で申し訳ありません。ですが、私はこれほど美しい石を見たことがなく…。どうやら私はそちらの作品に魅入られてしまったようです。お礼は言い値でお支払いいたします。どうか教えていただけませんでしょうか…?」


真剣な眼差しと懇願に、既に警戒の解けたシンジョウが眉をハの字に下げて目を泳がせている。わかり易く狼狽え俺に助けを求めるシンジョウが可愛い。もっと困らせたくな…いや、んん。


「シンジョウ、ガルシアには話しても問題ない。俺が冒険者をした時からの付き合いだからな。」


「そうなの?」


「はい。とてもよくしていただいております。」


…それは嘘だ。張り付けた様なガルシアの笑みに、しかしお節介を焼かれた手前指摘も出来ず黙るしかない。実際は大人の交渉に丸め込まれ、危険地帯の鉱石を取りに行かされる間柄だ。まぁ、子供相手にしっかりした査定と保証書を付け、正規の値段で買い取る様な商人などガルシア以外に会った事は無いが。


「ええと、これは工房じゃなくプーカと妖精王の宝石です。」


「なんと…ッ!」


感激しているのだろう、ブルブルと震えだしたガルシアにシンジョウが首を傾げている。シンジョウはこちらの常識を知らないのだから当たり前だな。


「前に少し話したが、妖精は気まぐれに現れ滅多に人間と契約することはない。一生に一度会えるかどうかの妖精、更に妖精王の印とくれば本物を見るだけで奇跡だろう。」


「ええ、その通りですとも!宝石店を初め商人であれば一生に一度はお目に掛かりたい、夢の品なのです!まさか今私の目の前にあるなんて…ッ!」


「おぉう…、」


ガルシアの勢いに押されながらも思案顔で考えこんでいるが、何か気になるのか?


「あの、偽物とか出回らないんですか?」


「実に度し難い事ではありますが、妖精石の偽物は山とございます。しかし本物も、確かに存在するのです。商人になる者の基本知識として、宝石の見分けや鑑定は必須技能。妖精石の偽物を掴まされたなどと噂になれば、店は立ち行かなくなってしまうでしょう。」


「じゃあ騙されても隠しちゃって、被害はあるのに明るみに出せないし取り締まりが難しい。ってことかな?」


「その通りです。」


真剣な表情で頷くガルシアに、何度か頷くとおもむろにピアスを外しだした。…どうしたんだ?


「あの、売るつもりはないのですが…。触ります?」


「………ッ?!」


シンジョウの言葉が余程衝撃だったのだろう、雷に打たれたように身体を硬直させガルシアが動かなくなった。


「シンジョウ、良いのか?」


「ん?いや、むしろ売るつもりなくて申し訳ないんだけれど…。人生が左右されるようなものをさ、夢見て求めて目の前にあったら…私なら記念に握手ぐらいしたいなぁって。思ったんだけれど…」


途中から誰かを想定して話しているようだったが…、もしやシンジョウの『オシ』を思い出しているのだろうか。たしかマリカといったか?余計なお世話だったかも…、と徐々に萎んでいく言葉と引っ込んでいくピアスを持った手を、ガルシアが力強く掴んだ。


「ぜ、ぜひっ!ぜひお願いいたしますッ!」


「ア、ハイ。…どうぞ」


ようやく気が戻ったのか、荒い呼吸を整え深呼吸を繰り返すとシンジョウからピアスを受け取って。


「…ッなんと美しい、」


妖精王のオパールと、プーカの妖精石。夢の品だと言い切ったそれを愛おしそうに眺める瞳にまた薄らと涙を湛えているが、ガルシアの口元は喜びに緩んで。それを見たシンジョウも、嬉しそうに微笑んでいてた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「次はどうする?ダンジョンにでも行くか?」


「ダンジョン!」


ガルシアさんにしこたま感謝されて、従業員さん総出でお見送りされた後。ある程度買い物を済ませて、休憩がてらお昼ご飯を食べていたらゼロさんに提案された。


そういえば、前にゼロさんが話してたな。モンスターがいるんだよね?ここからちょうど国境辺りにダンジョンがあるのか。ほうほう。この国、ライハは周辺諸国に比べて小さい上に周りの国に囲まれてるって言ってたもんね。全方位国境やないか。


「美味しいお肉がゲットできるのならいかねばっ!」


あの不思議食感の美味しいお肉。思い出しただけでよだれが垂れるぜ。待ってろお肉!ガッツポーズではしゃいでいたら、ゼロさんに笑われたでござる。むむ。


「ふ、…ニホンジンは食いしん坊だったな。なら丁度良い、ダンジョンのある街はここのように観光で賑わうから各地の料理が出店で立ち並んでいる。冒険者ランクを上げつつ、食事は外でとればいい。」


高ランクじゃないと入れない土地があるんだっけ?我々、というか私のランクが低すぎるし、ゼロさんの同行でもBランクまでだから、浄化先限定されるもんね。


「食べ歩きかぁ。俄然やる気が出てきたっ!」


「…食べ物に釣られて、人攫いにあうなよ?」


顔は笑っているけれど、結構真剣な雰囲気で言われた。心・外!!


「ゼロさんは、私をどれほど子ども扱いすれば気がすむんだい。」


ムッと眉間に皺が寄る。うむむ、言動かね?あの格好がいけないのか?心当たりしかありませんけどね。子供身長ですみませんねぇ。でも君がそうやって子ども扱いする癖に揶揄ってくるの、許してないよ。


「そういう意味じゃ無いんだが…。」


「言動は矯正とかめんど…じゃなくて、手っ取り早く見た目を変えればいっか。露出するとか。」


おっぱいでも出せばいいのか。最低でも少年に間違われないはずだ。服の上から胸を押さえて唸る。ここの世界の人達のばいんぼいんに比べたら慎ましやかかもしれないけどさ、前の世界では平均よりはあるんだからな!


「今日買ったのは機能性重視だけどさ?オシャレ可愛い冒険者さんもいるし、アリアさん達に見立てて貰えば中々良い出来になるのでは!」


「ダメだ。今のままでいい。」


お、おう。なんでそんな即答してくるのさ。顔こっわ。めっちゃお怒りになるじゃないか。でもビキニアーマーで冒険者するお姉さんとか見たし、露出度と防御力は比例してないんでしょ?かさ張るドレスを着るわけでもないし。動きやすさは譲れないから、防具とかを女性向けデザインに取り換えるとかさ。


「変な奴が寄ってきたらどうするんだ。」


ぷんぷこしてるのは、手を煩わせるなよってことか。だが断る!


「ゼロさんがいるから、大丈夫だもん。」


THE☆他力本願。なんならガルシアさんから教えて貰った魔除けのおまじないだってしてるしね!見せびらかす為に右手を上げてドヤ顔したら、ゼロさんが押し黙った。お?黙ったって事は、これはOKって事かい?勝った。やったぜ。


あとの問題は、この中世なんだかよくわからない世界で好みの服がみつかるかなぁってこと。服屋さんに階級とかあるんだもん。貴族用!貧乏はお断りだぜ!みたいな。どこから探せばいいかなぁ。


と、私の優秀なお世話係三人衆に聞いた所、


「お召し物は此方になります。いかがでしょうか。」


「お、おおう…。TPO…。」


お洋服のお話の流れでちょうどウォンカ様からドレスが届いておりますので、お召しになられませんか?と言われひん剥かれた。丁寧な言葉と笑顔の圧って、荒くれ者より怖いよね。


真っ白なドレスは、デコルテ全開でオフショルダー。それにドレープが繋がっていて…エンパイアとか言うのじゃないかなこれ…?首には白と青の金縁レース。細い金のベルトでシルクのスカートを留めていて。こんな豪華なドレスを着るんだもん、そりゃあいつもより気合のはいった手入れをされるわけですよ。お風呂に柑橘系の香油入れてくれたり、マッサージしてくれたり。え、それ神官のお仕事ですか?!ってサービスで至れり尽くせりのくてんくてんにされた。お陰で揺らいでいたお肌がピッカピカ。


ちなみにドレスは着こなせてないよ。ここテストに出るよ言わせんな恥ずかしい。


髪が短くても器用にまとめられて、恐ろしく繊細な見た目の割に頑丈な髪飾り差し込まれた。


「大聖女様の黒髪に白が良く映えますわぁ。」


「ええ、本当に!ドレープのレースがまるで羽のよう。」


「とてもお似合いです!」


最初は服に着られてるなぁって思っていたんだけどね。この美人さん達めっちゃ褒めてくる…!場に相応しい格好ってあるけど、本来の聖女なら毎日こんなドレスを着るのかな。今でさえめっちゃ疲れるから毎日は地獄だな…なんて、いらない心配をしてた。鏡に映る私は全身真っ白で、髪の黒とお化粧の赤が目を引く。


ドレスに青と金色で刺繍やワンポイントが入っているのは、ウォンカさんのカラーが青だからだろうなぁ。言外に派閥表明させられている。うむ。お世話になっているし、それくらいはしますとも。


「ゼロさんみてみて、『なんちゃって聖女』から『それなりに聖女』へランクアップした。」


プロにメイクされて上品でシンプルなドレスを着せられ、髪も飾り付けられて。ダメ押しに神官さん達に褒めて貰ったら大改造完了のお知らせである。流石に『聖女感』出るよね。だから、廊下で護衛しているゼロさんに見せびらかしに行ったんだが。


「そう、…だ、な。」


ゼロさんは私を見て動かなくなった。電池でも切れたのかな?って暫くウロウロしてたけど、一言発してから何にも反応してくれない。起動停止ガンダムである。


洋服の相談に行ってドレスを着て出てきたから驚いたのかと思ったけれど、反応なさすぎじゃないかい?むぐぐ、…つまらない。昨日今日で散々揶揄われたし、少しはやり返せるかと思ったけれど…やっぱり馬子にも衣装というか、豚に真珠というか。似合っていなかったようだ。煽てられて調子に乗ったわ。反省。なかなか綺麗になれたかと思ったんだけどなぁ。…褒めて貰えなくて、ちょっとがっかり。


「ゼロさん、こういう時は嘘でも似合ってるっていうものだよ。」


「っ、す、すまん!よく似合っている!」


「うん。ありがとー。」


一矢報いたくて意地悪を言ってみたら、指摘されたのが恥ずかしかったのか再起動したゼロさんの顔が真っ赤だ。空気読みって失敗すると恥ずかしいよね。うんうん。


…でも、なんかムカムカするからゼロさんに近づくのは止めておくのだ。ATフィールドなう。ふーんだ。美人な神官さん達に沢山褒めて貰ったから、ゼロさんに褒められなくてもいいもん。


そう思いつつも気になる…と、ゼロさんをチラ見したらばっちり目が合った。でも視線が泳いで逸らされたでござる。眉間に皺よっちゃう。そんなに見るに堪えないかね?ムッとしてしまうから、私も顔をそらした。


うむむ、メンタルの安定を図るのだ。楽しい事考えよう。これからドレスのお礼にウォンカさんにお披露目に行って、ついでにおススメの観光地でも聞こうかな?それから優秀なアリアさん達を手配してくれたお礼も言って、アリアさん達と一緒にお出かけできないか聞いて…


「シンジョウ、」


「なんですか?」


「…っいや、その、」


呼ばれて振り返ったら、未だ眦を赤くして視線を泳がせて言葉に詰まっているゼロさんが。さっきの反応的に服装を褒めるの慣れてないのかな。それなら無理しなくても良いよ。うーん。


「ウォンカ翁、お待たせしちゃうんで。行ってきまっしゅ。」


「ああ、…わかった。」


うむぅ、ダメだ。不機嫌が顔に出ていた気がする。不可抗力だから許してほしい。私が予想していたのと違う反応をしたからって、不機嫌になるのはよろしくない。立てた腹は寝かせるのが大人ですしお寿司。八つ当たり良くないね。切り替えねば。


気合十分でウォンカさんにお礼に行ったら、アリアさん達より柔らかい表現で沢山褒めてくれた。こう、お爺ちゃんに褒められてる気分でなかなか良き!んへへ。私は単純だから褒められるとすぐに機嫌が治るぞ。安易に褒めて頂きたい!


このドレスはウォンカさんがアリアさん達と準備してくれたものだった。私に合わせて仕立てたといわれて、あの短時間でアリアさん達にスリーサイズを把握されたのかと空恐ろしくなる。ぷ、プロ凄い…。


「…そもそも、何故ゼロさんの反応を気にしてるんだろうか私は。別に好きな恰好でいいじゃないか。」


ふと、自分でもよくわからなくなった。褒めてって言って、褒めてもらったからもうミッション達成してるじゃないか。割り当てられた自室で、お店の候補を上げてくれていたアリアさん達が顔を見合わせている。おもわず一緒になって首を傾げちゃうよね。


「あの、大聖女様と騎士様はお付き合いをなさっていらっしゃるのではないのですか?」


「んぇ?違うよ。うーん、上司と部下…いや、保護者と保護対象だよ。」


だって子ども扱いしてくるし、よく世話が焼けるとか犬みたいだって言ってくるし。ゼロさんからすれば私はお子様なのだ。…別に悲しくなんてないでゲソ。そわそわしながら聞かれて即答したら、なにやらこしょこしょと内緒話が始まってしまった。え、なんですか気になるぅ。でも楽しそうだから密談が終わるまで待ってるね!良い上司になりたいから、割り込んだりしないのだ。


お店の名前や詳細が書かれている候補を見ていたら、わふわふ興奮した感じで三人が戻ってきた。おお、どうしたの?


「大聖女様、こちらのお店になさいませんか?!」


「もしくは、こちらがお勧めです!」


読んでいた紙束が回収されて、代わりにお店の広告?を渡された。広告には、新しくできたお店だよ!斬新なデザインで流行っているデザイナーだよ!サイズ展開豊富だから皆来てね!みたいなことが書いてある。


もう一つの方は女性冒険者専用のお店だった。おお、専門店とかあるんだね。昨日は気がつかなかったけど、ゼロさんのお勧めのお店に行ったからそもそも知らなかった可能性が。


うんでも、私は知ってることの方が少ないからアリアさん達が色々教えてくれてとっても助かる。それにこういうの楽しいよねぇ。ってことで、


「ありがとう!明日行ってみようかなぁ。」


「ぜひ楽しんでいらしてください。」


回復魔法が出来るようになったから、基本的に暇なんですよ。望めばルール先生のお勉強会とか開催して貰えるんだけれど、午後は顔合わせで確定だし。あ、そうだ。


「皆とお買い物に行けないかな、ダメ?」


「それはもちろん、喜んでお供いたします。」


「ご一緒させていただけるなんて光栄ですわ。」


「明日が楽しみですわね。」


嫌な顔一つせず色好い返事が貰えて、テンションが高まって参りました。やったぁ!初めて女性とショッピングですよ。お友達とかではないけれど、歳も近いと思うしもっと仲良くなりたい。


「と、言うことで。ゼロさんはお留守番じゃ。」


夕御飯は外で食べる予定です。と、身支度もバッチリ整えて宣言なう。あの聖女服だと目立つし大変だから、一般的な服ですよ。


ラウンドネックにバルーン袖で、コルセットにスカート。民族衣装みたい…これあれだな、ゼロさんと初対面の時に着ていたのに似てる。宿屋の娘さんのお洋服を借りていたときの。あの時より胸回りがピッタリサイズなことには気が付かないふりをした。


ゼロさんも部屋に入ってきて、目が合った時に一瞬固まっていたから、多分同じ事を考えていたんだろうなぁ。


まぁそれは置いておいて。不満げなゼロさんを説得しなければならぬ。


「いや、一緒に行くぞ。」


「…女性用の下着屋さんとか行くよ?」


「ぅぐっ…、」


「選びたいのかい?」


「なんっ、何故そうなる!?」


護衛に就くだけだ!と、ゼロさんが吼えていて、とても愉快。だって顔が赤いから。照れてる?


「ウォンカ翁が、女性騎士を連れてきてくれたから大丈夫だよ。ゼロさん、休みが無いんだから今日はゆっくりするのだ!」


腰に手を当てて踏ん反り返って言ってみた。上司命令ですぞ!休みたまへ。というか、気分転換に行くのに元凶か来たら意味ないでそ!言わんけども。


「…わかった。」


えええ、なんでそんなしょんぼりするんだい。久しぶりの休みなのだから喜びたまえよ…。というか、そもそも『大聖女の騎士』って護衛含まれるのかな?有事の際とかに限定で来るなら過剰労働?


っは!まさかワーカーホリックか?!働いていないと、身体が落ち着かないのかな…。うむ、これからは休みをしっかりとらせて、ワーホリの毒気を抜かなければ。


「よし、ちゃんと休んでね。」


一応、念押ししておく。ごめんよ。流石に外で待つにしても、女性下着屋さんの前で熊が仁王立ちしてたら、営業妨害もいい所だ。あとまだちょっともやもやしてるから。幼稚ですまぬ。


◇◇◇◇◇◇◇◇


突然降って沸いた休日にウォンカ様に充てていただいた部屋で、使っていない防具の手入れをすることにした。


シンジョウに休みを言い渡された。と言うよりも、若干避けられているような気がするのは俺の気のせい…だと、思いたい。


「はぁ…。」


いや、わかっている。着飾ったシンジョウに動揺して…怒らせてしまったんだろう。見惚れていて反応できなかったと、すぐに本当のことを言えば良かったんだ。


シンジョウはこちらの考えとは真逆に解釈することが多々ある。今回も、俺が促されてから褒めたことで、良くない方向に察した可能性が大きい。


次こそはしっかり自分の言葉で伝えなければ、と意気込んだ矢先に宿屋の時と似た服で談笑しているものだから、心臓が止まるかと…


「いや、やはりこのままは拙い。」


防具を拭いてはため息と共に手が止まる。まるで整備が進んでいない。自業自得だが、避けられるのがここまで堪えるとは思わなかった。実際は避けると言うほど、大袈裟な拒絶では無いだけましだが。


目が合っても反らされ、隣に行こうとすれば先を歩き、話しかけようと思っても他の者と談笑している。ついには護衛を外されてしまった。


心臓が脈を刻む度、ズキズキと痛む。内臓を鷲掴みにされているような不快感が湧き上がる。確かに、この程度のことで此処まで身体に不調が出るなら『惚れた方の負け』などという話も出るなと納得できる。


シンジョウに俺を意識させるどころか、自分が深みに嵌まっているのだから笑えない。


『選びたいのかい?』


不思議そうに首を傾げるシンジョウを思い出して、顔に熱が集まる。何故そうなるのか。女物の下着の善し悪しなど、わかるわけが無い。


わかるわけがないが…シンジョウに似合う物なら…、いや、その。宿屋で見たときは斥候の白い薄着な上、黒い下着だったせいで透けてしまっていたがシンジョウは気が付いていないようだった。部屋中から湯上がりだったシンジョウの匂いがして、しばらく動けなかったな。プーカに犬にされた時に見てしまったのは黒のレースで、寝ていたからか着崩れだいぶエロ…んん゛、あれだ。シンジョウは無防備というか無頓着が過ぎる。


本人の好みなのかどちらも黒だったが、白も似合うだろうしなんなら青や紺色のモノでも…、いや、馬鹿か俺は。それ以前の問題が山積みだろうが…ッ。


今まで他人の服装に関心が無かった上、女を口説いたり褒めたりと言うことがほぼ無かったように思う。…ほぼ所かまるで無かったな。


ヴォイスやダズなら俺が気が付かないような細かい変化にも気付いて、上手く褒めるのだろう。ふと、シンジョウを口説いていたヴォイスを思い出して、気付くと手に持っていた油瓶を握り締めていた。…いままで関心がなかろうと、シンジョウの事ならば些細なことでも気が付く自信がある。


「はじめに見たときは、随分サイズの大きな服だったな…。それから、髪も長かった。」


シンジョウがジャージと呼んでいたそれは、薄ら体型がわかる厚手の服で、まるでサイズ感の合っていない暗い色の服だった。たぶん、上下が揃いなのだ。本人は運動着で通気性の良い部屋着だといっていたな。


それから、髪が腰までと長く黒髪が艶々と月明かりを反射していた。肌は白すぎず健康的で、それでも黒髪に映える白さだった。思い出しては肯きながら、自分の記憶を呼び起こす。


その後は、吐いてしまってミランダに着替えを…思い出して、ボッと自分の顔が熱くなる。いまは楽しげに笑っているか、まれに真剣な表情を覗かせる。泣いていたあの時は、それは可愛らしかった。初対面時の手負いの獣のような鋭い目が一変して、弛み涙を湛えて震えていた。気ばかり強く虚勢を張る、弱く庇護欲をそそる感じがグッとくる…。


あの日を思い出してしまって、今朝も褒められなかった。街中でよく見るタイプの服だというのに、シンジョウが着ているだけで何か特別な感じがしてダメだ。


「その後は、…髪が、」


ダズの所為で、シンジョウは綺麗な髪を切ってしまった。似合ってはいるが、理由がアイツだと思うと胃の底が煮立ってくる。絶対に会ったら1発入れる。2発でも良い。


王都を出る事を優先して、急いで最低限の荷物を揃えた。シンジョウは一般的な女より背が低く、その為に服が揃えられなかったと本人が言っていた。子供用の男物を着ていたしな。あれはあれで似合ってはいたが。


それでも身体の要所は華奢で、触れると柔らかくいつも甘い爽やかな香りがしていた。綺麗好きなのか、宿も風呂付きを望んでいたな。


今回の買い物は、世話係の神官達がついている。今頃、楽しんでいるだろう。…ウォンカ様と神官達でドレスを準備したと言っていた。あれだけシンジョウに似合う物を用意できるのだから、目利きなのだろう。


「…美しかったな、」


白く品のあるドレス。白地に這う金の蔦模様と青薔薇が優雅で、女らしい曲線を拾うのに下品にはならない、格を見せつけるような姿だった。


美しかった。纏めた黒髪に映える花飾りも、細い指を隠すレースも、見上げてくる瞳を縁取る朱も。…薄く色づけられた、唇も。


『大好き。』


微笑む、記憶の中のシンジョウに、息が詰まり、バキッと手元で鈍い音が鳴る。


「何をしてるんだ俺は…。」


まるで花嫁のようだったシンジョウの、その隣にあれたら…。磨きすぎた防具達を転がしたまま、二つに割れてしまったバックルを見つめる。予備を壊してどうするんだ。というか、いつの間にこんなに磨いたんだ?


窓の外を見れば日が傾いてきていて、そろそろシンジョウが戻ってきても可笑しくない時間だ。…何とは無く落ち着かず、手早くリングへ防具と道具を片付ける。


…迎えに行くくらいなら、いいだろう。駆け寄ってくるシンジョウを思い出して、口元が緩む。

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