第33話 突然の告白
「ひゃっ!?」
思わず声が出てしまって慌てて口を塞ぐ、幸い、彼には聞こえていなかったらしく、
ほっと胸を撫で下ろした、と同時に、また、舌を這わせてくるものだから、
くすぐったくて身を捩ってしまう。
それがかえって誘っているような動きに見えたらしく、執拗に攻め立てられることとなった。
その結果、最終的に気絶寸前にまで追い込まれることとなってしまった。
流石にやりすぎだと思い文句を言えば、悪びれもせずに微笑んで、
ごめんと言いながら頭を撫でてきた。
そんな彼を見ていると、怒る気力も無くなってしまって、大人しく受け入れることにした。
その後も何度か同じことが続いたが、最終的には受け入れてしまうあたり、
やはり私も相当惚れ込んでいるんだろうなと思ったりもした。
なんだかんだ言いつつ、満更でもない気分だったりするのも事実だったりするわけで、
結局のところ、惚れた方が負けというのは本当なのかもしれない。
そんなことをぼんやりと考えている内に、睡魔に襲われ、いつの間にか意識を失っていた。
目が覚めると、視界いっぱいに彼の顔があって、
「うわっ!? ちょっ、近いですよ!」
思わず叫んでしまった、いくら恋人とはいえ、寝起き早々こんなに
近付かれたら誰だって驚くと思うのだが、どうか許して欲しいところである。
というのも、そもそもの話、私と彼では身長差があり過ぎて、
必然的に見上げる形になってしまう上に、こうして密着されると、
私の顔は彼の胸に埋まってしまうという有り様なので、色々と不都合が生じることがある。
具体的には、呼吸困難になったり、心臓の音が激しすぎて眠れなくなったりと、
大変困る事態に陥ることが多いのである。
しかしながら、当の本人は特に気にした様子もなく、
むしろ喜んでいる節があるので、困ったものだと思ってしまうわけだ。
それに、時折悪戯を仕掛けてきたりすることもあって、
油断ならない相手でもあるのだ、本当に性質が悪いと思う、
そういう所も含めて好きになったわけだが、それとこれとは別問題なのである。
「おはよう、よく眠れたか?」
爽やかな笑顔で挨拶してくる相手に、
溜息交じりに応じつつ、身体を起こす、
時計を見ると、針は既に昼前を指し示しており、
朝と言うよりは、最早午後に近い時間帯となっていた。
道理で眠いはずである、二度寝しようにも、一度覚醒してしまった脳はなかなか休まってくれず、
仕方なく起きることにしてベッドから降りる。
その際に、服の裾を踏んで転びそうになった所を、後ろから支えてくれたおかげで難を逃れることができた。
危うく顔面強打をするところだっただけに、感謝の気持ちを込めてお礼を言うと、気にするなと言って頭を撫でてくれた。
こういうところがずるいと思う、普段はクールぶっているが、意外と子供っぽい一面もあって、
そんなところもまた魅力的に映るのだから不思議なものである。
そんなことを考えながら身支度を整えた後、朝食兼昼食を食べ終えて一息ついたところで、ふとあることを思い出した。
そういえば、昨日の晩ご飯の時に冷蔵庫の中にあったはずの食材が無くなっていたような気がする。
確かあれは卵焼きを作る時に使ったはずなのだけど、一体どこに行ったんだろう。
もしかして、泥棒にでも入られたんじゃなかろうかと心配になってきた。
もしそうだったとしたら大変だ、一刻も早く警察に通報しないと!
そう思ってスマホを手に取ったところで、背後から声をかけられ、ビクッと肩を揺らしてしまった。
振り返るとそこには見慣れた人物の姿があったので、
それは紛れもなく、私が愛してやまない彼氏の姿であった。
ホッと胸を撫で下ろす一方で、どうしてここに居るのかと疑問を抱いた。
だってここは私の家なんだから、普通に考えたらおかしいよね、
でも、そのことは口にせず、代わりに別の言葉を口にすることにする。
まずは相手の話を聞くことが大切だからね、それから判断しても遅くはないだろうと思ったからだ。
だけど、次に出てきた彼の言葉によって、私の考えは全て吹き飛んでしまった。
「俺、お前のこと好きだわ」
「……へ?」
唐突すぎる告白に、間抜けな声が漏れ出る。
いや、ちょっと待って、どういうこと!?
好きって言ったよね、今、間違いなくそう言ったはずだ。
でも、なんでいきなりそんな話になってるの!?
頭の中がパニック状態になりかける中、なんとか平静を装って言葉を返すことにした。
落ち着け、落ち着くのよ、私!
自分に言い聞かせながら、深呼吸を数回繰り返すことで気持ちを落ち着かせることに成功する。
よし、これで大丈夫だ、多分……。
ふぅっと息を吐き出すと、改めて目の前の彼へと向き直った。
そこで目にしたのは、いつになく真剣な表情をした姿で、思わずドキリとする。
ドキドキしながらも、意を決して口を開くことにした。
緊張のせいか喉が渇いて仕方ないけれど、それでも勇気を出して声を出す。
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