第28話 大好きな彼
楽しかった思い出もあれば、大変だったこともあった。
特に、最後の出来事については、思い出すだけでも赤面してしまうほどだった。
でも、それ以上に幸せを感じることができたと思う。
だからこそ、これからもずっと一緒に居たいと思えるようになったのだ。
風呂から上がると、髪を乾かしてから、リビングに向かう。
テーブルの上には、すでに夕食が用意されており、美味しそうな匂いが漂ってきた。
席に着くと、早速食べ始めることにする。
どれも美味しくて、あっという間に平らげてしまった。
食後の休憩をしていると、突然、後ろから抱き締められた。
驚いて振り返ると、そこには笑顔を浮かべた彼の顔があった。
一体何事かと思って見ていると、彼が口を開いた。
「あのさ、今日泊まっていってもいいかい?」
その言葉を聞き、一瞬戸惑ったものの、断る理由もなかったため、了承することにした。
ただし、条件付きでという条件を出したところ、あっさり受け入れられてしまった。
その内容とは、一緒のベッドで寝ることだった。
正直、かなり恥ずかしい提案だったが、意外にも快く受け入れてくれたことに安堵しつつ、寝室に向かった。
ベッドに入ると、彼との距離が近いせいか、鼓動が激しくなるのを感じた。
それを悟られないように、平静を装っていたが、それも長く続かなかった。
やがて、彼の手が伸びてきて、頬に触れられる。
その手つきはとても優しく、温かかった。
その手に身を任せるようにして、身を任せると、そっと唇を重ねられた。
最初は軽く触れる程度だったが、徐々に激しさを増していき、
最後は貪るような激しいものへと変わっていった。
唇が離れる頃には、お互い息が上がっていた。
呼吸を整えてから、見つめ合うと、どちらからともなく笑い出した。
そして、もう一度、キスをした。
今度は先程よりも長く、濃厚なものだった。
しばらくして、名残惜しそうに離れると、最後にもう一度だけ軽くキスをして、眠りについた。
翌朝、目が覚めると、目の前には彼の寝顔があった。
寝顔を眺めているうちに、昨夜の出来事を思い出して、恥ずかしさが込み上げてきた。
だけど、それと同時に幸せな気持ちにもなった。
(やっぱり、私はこの人のことが好きなんだなぁ)
そんなことを思いながら、彼の胸に顔を埋めた。
彼の温もりを感じながら、再び眠りに落ちていった。
次に目が覚めた時、外は既に明るくなっていた。
隣を見ると、まだ眠っているようだった。
起こさないように気をつけながら、ゆっくりと起き上がると、服を着替えるために、クローゼットへ向かった。
下着姿になり、鏡の前に立つと、自分の姿を見つめた。
そこには、見慣れたはずの素肌が映っていた。
しかし、いつもと違う点があった。
それは、胸元に刻まれた小さな痣のようなものである。
昨日、彼がつけたものだということは一目瞭然だった。
それを見て、昨日のことを思い出しただけで、顔から火が出そうになるくらい恥ずかしくなった。
(あんなところを見られるなんて、思わなかった)
心の中で呟きながら、ため息をつく。
それから、急いで服を着ると、部屋を出て、リビングへと向かった。
キッチンへ向かい、朝食の準備をしていると、背後から声をかけられた。
振り返ると、そこには、眠そうな顔をした彼が立っていた。
どうやら、起こしてしまったようだ。
申し訳なさそうに謝ると、彼は首を横に振った。
気にしなくていいと言って、微笑んでくれた。
それだけで、救われた気持ちになった。
朝食を食べ終えると、一緒に片付けをして、出かける準備を始めた。
玄関を出ると、眩しい日差しが差し込んできた。
外に出ると、心地よい風が吹いていて、とても心地良かった。
しばらく歩いていると、目的の場所に辿り着いた。
そこは、以前、雑誌で見たことのある有名な観光地だった。
噂通り、とても綺麗な場所で、感動した。
一通り観光を終えた後、帰り際にお土産を買うことにした。
色々と迷った結果、二人でお揃いのものを買うことにした。
お互いに選んだものを交換して、身につけることにした。
帰り道、寄り道をして、海辺の公園に立ち寄ることにした。
ベンチに座り、海を眺めながら、他愛もない会話を楽しんだ。
夕日に照らされた横顔を見つめていると、自然と頬が緩んでいくのを感じた。
それに気づいたのか、彼が不思議そうな顔をしてこちらを見てきたので、慌てて表情を引き締めた。
それでも、バレてしまったらしく、笑われてしまった。
恥ずかしくて俯いていると、不意に手を握られた。
驚いて顔を上げると、優しい眼差しを向けてくる彼と目があった。
「そろそろ帰ろうか、日が暮れる前に帰らないとね」
そう言って、歩き出す彼について行く形で、私も歩き出した。
しばらく歩くと、いつの間にか家の前に着いた。
鍵を開け、中へ入ると、靴を脱いで上がった。
そのままリビングへ向かうと、ソファーの上に寝転がった。
それを見た彼は、呆れたようにため息をつきながらも、 どこか嬉しそうな顔をしていた。
そんな彼を横目に、私は台所に向かい、夕飯の準備をすることにした。
といっても、簡単なものしか作れないのだが、それでも喜んでもらえると嬉しいものである。
しばらくすると、出来上がった料理をテーブルに並べた。
二人で向かい合って座り、いただきますと言って、食べ始めた。
食事が終わると、食器を片付け、それぞれ入浴を済ませた後、寛いでいると、不意に話しかけられた。
振り向くと、そこには真剣な眼差しをした彼がいた。
一体何事かと思って身構えていると、意外な言葉が飛び出してきた。
「話があるんだ、聞いてくれるかな?」
そう言われて、戸惑いながらも頷くと、彼は話し始めた。
その内容を聞いて、私は愕然とした。
まさか、彼がそんなことを考えていたとは思わなかったからだ。
確かに、最近の私たちは、以前よりも一緒にいる時間が長くなった気がするし、
会話も多くなったように思う。
でも、それが恋愛感情によるものだとまでは思っていなかった。
だから、今までと同じように接してきたつもりだったのだけど、
彼にはそれが不満だったらしい。
「君は、俺のことをどう思ってるんだい?」
そう問われても、すぐに答えられるはずもなく、黙り込んでしまった。
その様子を見た彼は、寂しそうな表情を浮かべていた。
そんな彼の顔を見た途端、胸が締め付けられるように苦しくなった。
どうしてそんな顔をするんだろう、私には分からなかった。
ただ、このまま黙っていてはいけないということだけは理解できた。
だから、勇気を出して自分の気持ちを伝えることにした。
「……好きです、あなたのことが、大好きです」
「本当かい? 本当に、俺を好きだと思っているのかい?」
念を押すように確認してくる彼に、私は力強く頷いて見せた。
そうすると、彼は嬉しそうに微笑んだ。
その表情を見た瞬間、胸の奥底から熱いものが込み上げてきた。
そして、自然と涙が溢れ出てきた。
それを見た彼は、慌てた様子でハンカチを差し出してくれた。
私は、それを受け取ると、涙を拭いながら、言葉を続けた。
それから、しばらく沈黙が続いた後、彼が口を開いた。
その声は震えていた。まるで、何かを恐れているかのように感じられた。
一体、何が彼をそこまで追い詰めているのか、私には分からなかった。
ただ、これだけは言える、彼は苦しんでいるのだと、助けを求めているのだと、
ならば、私がすることは一つしかない、彼を助けてあげたい、支えになりたい、そう思った。
そう思い立ったら、行動に移すまで時間は掛からなかった。
気がつくと、私は彼を抱きしめていた。
驚いた様子の彼だったが、すぐに受け入れてくれたようで、背中に腕を回し、抱きしめ返してきた。
しばらく、お互いの体温を感じていた後、どちらからともなく離れた。
そして、見つめ合う形になると、自然と唇が重なった。
最初は軽く触れ合う程度のものだったが、次第に激しくなっていった。
息苦しくなり、酸素を求めて口を開けると、そこから舌が侵入してきた。
歯茎の裏や上顎など、隅々まで舐められ、舌を絡め取られ、吸い上げられ、甘噛みされた。
その度に、甘い痺れが全身を駆け巡っていった。
頭がボーッとして、何も考えられなくなり、ただひたすら、与えられる快感に溺れていった。
どれくらいの間、そうしていただろうか、時間の感覚すら分からなくなるほどの濃密な時間を過ごした後、ようやく解放された。
肩で息をしながら、呼吸を整えていると、彼が耳元で囁いた。
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