第23話 彼との温もり
「あの、その、えっと、その」
と口籠ってしまっていてなかなか言葉が出てこない様子だったので
私が代わりに注文内容を伝えたところ、ようやく落ち着きを取り戻したようで
ホッと一安心していたのですが、その直後に今度は私に対してとんでもないことを言い出したんです。
「あ、いや、ごめん……つい見惚れちゃっててさ……」
と言いながら頰を赤らめる彼を見て、不覚にもドキッとしてしまった私だったのですが、同時に嬉しくもあったんです。
(ああ、やっぱりこの人のこと好きだな)
と思い知らされた瞬間でもありました。
そんなやり取りがあった後で店を後にしてから駅まで歩いて行ったんですが、
その間ずっと手を握られたままだったのでドキドキしながら歩いているうちにあっという間に着いてしまいました。
名残惜しい気持ちを残しつつも改札口の前で別れることになりましたが、最後に彼からこう言われました。
「また明日仕事場で会おうな!」
と言われて笑顔で手を振る彼の姿を見送った後、私も家路につくことにしたんだけれども、
帰宅後もしばらく興奮冷めやらずといった状態で落ち着かなくて大変でした。
(明日も会えるんだぁ……! 楽しみだなぁ〜!)
と思いながら眠りにつき、翌日の仕事場にて彼と再会した私はいつも以上に気合を入れて頑張りました。
おかげでいつもより早く終わらせることができたんですけど、そのお陰で暇ができてしまったんです。
だから思い切って誘ってみようと思いました。
そうすると意外にもあっさりとOKが出たことから、そのまま二人で食事に行くことになったんですが、
その際に立ち寄ったお店でも会話が途切れることなく盛り上がったおかげで楽しいひと時を過ごすことができました。
そうして別れ際に渡されたのは小さな箱で、中には可愛らしいネックレスが入っていたんです。
それを見た瞬間、嬉しさのあまり泣きそうになってしまったんですけど、
そんな私を優しく抱きしめてくれた彼に感謝しつつ、今度こそお別れすることになりました。
帰り際、駅で別れた私は家に帰るまでの間中ずっとニヤけっぱなしでしたが、
部屋に戻ってからは改めて貰ったプレゼントを眺めながら幸せな気分に浸っていました。
しかし、ふと我に返ってみるとなんだか恥ずかしくなり、
慌てて引き出しの奥に隠すように仕舞い込んだあと、シャワーを浴びるために浴室へと向かったのでした。
その後、ベッドに横たわりながら今日一日のことを振り返っているといつの間にか眠ってしまっていたようで、
目が覚めると朝になっていました。
時計を見ると既に出勤時間が迫っていたため大急ぎで支度を済ませた後で家を出たのだったが、
途中である出来事が起きたのです。
それは道を歩いている最中のことでしたが、
突然背後から声をかけられたと思ったら次の瞬間には抱きしめられていたんですよ!?
あまりの驚きで身動きが取れずにいるうちにどんどん顔が近づいて来たかと思うと唇を奪われてしまい、
突然のキスによって頭が真っ白になりました。
それでも何とか逃れようと必死になって抵抗しようとしたものの結局逃げ切れず、
されるがままの状態が続きましたが幸いそれ以上は何もされなかったためホッと胸を撫で下ろしていると
今度は耳元で囁かれた言葉に動揺を隠しきれませんでした。
というのも、なんと彼は私のことが好きだったと言うではありませんか!
そんなの全然知りませんでしたし、何より今まで全く意識していなかったのです。
「いきなりこんなことを言われて戸惑うのも無理はないと思うけれど、
どうしても伝えたかったんだ」
と言って照れ臭そうに笑う彼の顔を見ていると何故だかこちらまで
恥ずかしくなってきてしまってまともに顔を見ることができません!
そんな私の様子を察してか、そっと手を握ってくる彼の手はとても温かくて心地よかったのですが、
それと同時に胸の鼓動が激しくなっていくのがわかったので余計にドキドキさせられてしまいました。
もうこれ以上我慢できないと思った私は思い切って告白することにしました。
「……あの、私でよければ付き合ってもらえませんか?」
と言うと一瞬キョトンとした顔で見つめられてしまいましたが、
すぐに満面の笑みに変わったかと思えば大きな声で返事をしてくれました。
それを聞いて安心したのも束の間のこと、今度は逆に私の方が驚くことになってしまいました。
「俺も好きだよ」
そう言ってギュッと抱きしめられた瞬間、胸が高鳴りました。
(え? 今なんて言った? 好きって言ったよね……? 嘘でしょ!?
信じられないんだけど!? 嬉しいけど恥ずかしいよぉ……!!)
と思いつつも必死に取り繕おうとするのだが、
恥ずかしさのあまり顔を背けることしかできませんでした。
しかしそれも長くは続かず、強引に正面を向かされてしまった結果、
至近距離で見つめ合う形になってしまい、さらに羞恥心が込み上げてくると同時に
心臓が爆発しそうなほど激しく脈打っていることを感じ取っていたのですが、
当の本人はそんなことお構いなしとばかりに迫ってくるものだからもうパニック寸前です。
しかもあろうことかキスまでされそうになったところで咄嗟に顔を逸らしてしまい、
その結果、危うく顔面同士がぶつかりそうになってしまったことで
冷静さを取り戻すことができた私はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
だが、ホッとしたのも束の間、今度は正面から抱きついてきたので、
またもや心臓が飛び跳ねるような思いをすることとなったが、
今度はこちらからも腕を回して抱きしめ返すことでそれに応えることにした。
そうすると彼もそれに応えるように強く抱き締め返してきたことで二人の身体が密着し、
お互いの体温を感じることができました。
それだけでも十分幸せだったのですが、更なる追い討ちをかけるように私の耳元で囁いてきましたので、
思わずビクッと反応してしまったことで更に緊張が増してきましたが、
それでも意を決して返事をすることにしました。
しかし、いざ言おうとした瞬間、再び遮られてしまいました。
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