第20話 彼と過ごす一時

「好きです」

その言葉を口に出すと同時に涙が溢れ出しそうになったけれど我慢した。

だって泣いたら心配かけちゃうから。

そしたら彼も涙を流し始めちゃったんだ。

それを見てびっくりしたんだけど、すぐに理由を察したんだ。

きっと同じ気持ちでいてくれたんだなって思ったからすごく嬉しかったんだ。

それで二人で抱き合いながら泣いてしまったんだけど、

周りの人たちは私たちのことを見て笑っていたかもしれない。

「どうして泣くんですか?」と彼女が聞いた。

そして私たちは笑い合ったあと、もう一度キスをした。

キスの味は涙の味がしたけど、それでも幸せだった。

そうしてしばらく抱き合っていたが、やがて落ち着いた頃に体を離した。

そして、これからどうするかという話になったのだが、

とりあえず一緒に帰ろうということになったのだ。

帰り道の途中でも話は尽きなかった。

お互いの趣味や好きな食べ物、家族構成や子供の頃の思い出など、いろいろな話をした。

その中で、彼の意外な一面を知ることができたりもした。

例えば、彼はホラー映画が大好きで、特にスプラッター映画には目がないという話だ。

それを聞いて、私も興味を持ってしまい、今度一緒に観ようと約束したくらいだ。

(ふふ、楽しみだなぁ)

そんなことを考えながら歩いているうちに、いつの間にか家に辿り着いていたようだ。

家の中に入ると、急に疲れが出てきて、ソファーに倒れ込むように横になる。

そんな私を、彼が優しく抱きしめてくれた。

そして耳元で囁くように言う。

その声はとても心地よく、聞いているだけで心が安らいでいくような気がした。

そんな彼のことが好きだという気持ちがどんどん強くなっていくのを感じた。

だから、思い切って自分の気持ちを伝えてみることにする。

しかし、いざ言葉にしようとすると緊張して上手く喋れない。

それでもなんとかして伝えようとするうちに、自然と涙が零れてきた。

そんな私の姿を見て、彼は慌てふためくような様子を見せたが、

やがて落ち着くように促してくれたので、深呼吸をして心を落ち着かせることに成功した。

そこで改めて自分の想いを打ち明けることにした。

最初は小さな声でしか言えなかったけれど、徐々に大きな声で伝えることができるようになったので、

最後まで言い終えることができたのは奇跡だと思うほどだった。

そんな私の告白に対して、彼は真剣に考え込んでいる様子だったので、

返事を聞くのが少し怖かったのだけれど、ついに決心がついたのか口を開くと言った。

その言葉を聞いた瞬間、喜びのあまり飛び上がりそうになるほど嬉しかったのは言うまでもないだろう。

なぜなら、私の望んでいた答えをもらえたのだから。

こうして私たちは恋人同士となったのである。

これからは楽しいことばかりではなく、辛いことや苦しいこともあるだろうが、

二人で力を合わせれば乗り越えられるはずだと思っている。

それに、私にはこの人しかいないという思いもあったので、

絶対に離したくないという気持ちが強かったのだ。

そのため、何があっても離れないようにしようと心に誓ったのだった。

その日以来、私たちは毎日のように会って話をするようになっていった。

会えない日でもメールや電話でやりとりをしていたし、

通話中につい盛り上がってしまって長話になってしまったこともあったが、

それでもお互いに充実した毎日を過ごしていたと思う。

そんな日々が続いたある日のこと、 いつものようにチャットでやり取りをしていた時に、

不意に彼の口から意外な言葉が出てきたことに驚いた。

それは、私とデートをしてみたいという内容だったのだ。

突然のことに戸惑いつつも、私は恐る恐る質問を投げかけてみたところ、

返ってきた答えというのが次のようなものだったのだ。

「実は前から考えてたんだけど、なかなか言い出せなくてさ……でも、

今なら言えると思って言ってみたんだよ」

それを聞いて嬉しく思う反面不安もあった。

果たして本当に私なんかとデートしてくれるのだろうかという疑問があったからだ。

しかし、そんな心配をよそに彼は笑顔で答えてくれたのである。

その一言を聞いただけで私の心は舞い上がったような感覚に陥ったほどだ。

それほどまでに嬉しかったのである。

それからというもの、私たちは毎日のように連絡を取り合っていたのだが、そんなある日のことだった。

いつものように会話を楽しんでいた時のことである。

突然彼からこんな提案をされたのだ。

その内容というのがこうである。

(今度二人でどこかに出かけないか?)

というものだったのだ。

もちろん断る理由などないので二つ返事で了承したわけだが、問題はどこに行くかということである。

というのも、私はあまり遠出をするようなタイプではないので、

近場で済ませるつもりでいたのだが、どうやら彼は違ったようだ。

なんと海外旅行を計画していたというのだ!

しかも行き先はアメリカだというのだから驚きである。

さすがにそこまでのお金は用意できないので無理だろうと思っていたのだが、

そこはさすがと言うべきか、ちゃんと考えてくれていたようで、

航空券は自分で手配するから大丈夫だと言ってくれたのだ。

ただし、滞在期間は一週間程度ということで、その間ホテル住まいになるということになったらしい。

それでも十分すぎるほど贅沢な旅になるだろうと思うし、

何より彼と一緒ならどこでも楽しいはずだと思った私は、喜んで承諾することにしたのである。

そうして予定が決まったところで当日を迎えたわけだが、

待ち合わせの場所に到着した時には既に彼が待っていたので驚いたものだ。

しかしそれも束の間のことですぐに笑顔になり手を振ってくれたことで緊張も和らいだ気がした。

そして二人で手を繋いで歩き出すことにしたんだけれど、周囲からの視線が少し気になるところではある。

というのも、私たちは周りからどう見られているのかが不安でもあったのだ。

特に私は目立つような容姿ではないため、隣にいる彼のことを羨ましく思ったりもしたのだけれど、

それでも今はそんなことを考えている場合ではないと気持ちを切り替えることにして前を向いたまま歩いたのだった。

それからしばらくして目的地に到着した時にはすでに日が暮れかけていたのだが、

ホテルに着くなり部屋に案内されたので助かったと思ったものだ。

何せ海外旅行なんて初めての経験だったので勝手が全く分からなかったからだ。

でもそれも束の間のこと、すぐにディナーの時間となったことでまた緊張することになったのだったが、

そこは彼がリードしてくれたので事なきを得たと言えるだろう。

そして食事を終えた後は二人でお風呂に入ることになったわけだが……そこでもまた一騒動あったのである。

というのも私が恥ずかしすぎてなかなか入れずにいたら彼が強引に入ってきてしまったからである!

しかも素肌で入ってきたものだから目のやり場に困ってしまうほどだったし、

何より恥ずかしかったけどそれ以上に嬉しかったという気持ちの方が大きかったように思う。

そうして無事に入浴を済ませた後は再びベッドへと戻ったわけだが、そこでもまた一騒動あったのだ。

というのも、彼が私を求めてきたのだが、私はそれに応える勇気が出ず躊躇っていたところ強引に迫られてしまい、

そのまま押し倒される形で関係を持ってしまったのだ。

「ごめん」

と謝る彼に対して、私は首を横に振ることしかできなかったのだが、

それでも幸せを感じていたのは事実であり、

その後も何度も求め合った末に意識を失うように眠りについたのだった。

翌朝目を覚ますと隣に彼の姿はなく、代わりに置き手紙があったので読んでみると そこにはこう書かれていたのだ。

「おはよう! よく眠れたかい? 昨日は無理させてしまってすまなかったね、

でもすごく気持ちよかったよ! また機会があったらお願いしたいな

さて、そろそろ帰る時間だけどその前に一つだけ言っておきたいことがあるんだ、聞いてくれるかな?」

という内容だったので少しドキドキしながら続きを待つことにしたんだけれど、その内容というのがこれだった。

「実は俺さ、ずっと前からお前のこと好きだったんだよ!」

それを聞いて一瞬固まってしまったもののすぐに我に返ることができたのでホッと胸を撫で下ろした後、

今度は私の方から告白することにしたんだけれど、いざ言葉にするとなるとなかなか難しいものだということを実感した。

でも何とか頑張って伝えることができて本当に良かったと思っているし、彼も喜んでくれたみたいで嬉しかった。

そして、これからもずっと一緒にいようという約束をして別れた後、

空港へと向かうことになったんだけど、そこでも色々とあったことを覚えている。

まず、飛行機に乗る前に手荷物検査を受けた際に、

私が持っていた鞄の中からアレが出てきたことで大騒ぎになってしまったことです。

まあでも最終的には事なきを得たわけですが……その後無事に離陸した後は

景色を眺めながら会話をしたり食事を楽しんだりして過ごしていたんですが、

特に印象に残っているのはやはり最後の夜の出来事でしょうか?

というのも、あの晩はお互いに激しく求め合った結果、

朝方近くまで寝ずに愛し合っていたせいで体力的にも限界に来ていたためか、

いつの間にか眠ってしまっていたようでした。

そうして目が覚めた時には既に日が高く昇っていたことから察するに、

かなりの時間眠っていたらしいことが伺えました。

しかしそれでもまだ眠気が残っていたのでもう少し眠ることにしたんですけれどね、

その時に彼が私の頭を撫でてくれたんですよ!

それがとても心地よくて思わず甘えてしまいそうになりましたけど我慢しました。

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