第16話 彼を支えてあげたい

その後、彼女に連れられて、職場へ行くことになりました。

上司からは、こっぴどく叱られ、同僚たちからも冷たい視線を浴びました。

私は、自分の愚かさを後悔し、もう二度とこんな事はしない、と心に誓いました。

数日後、無事に復帰した私は、以前にも増して、仕事に励んでいました。

そんなある日、私は、偶然にも、あの時の女性を見つけました。

そして、意を決して、声をかけることにしました。

彼女は、一瞬驚いた顔を見せたものの、すぐに笑顔になり、 私をカフェへと誘ってくれました。

それから、私たちは、共通の話題である映画について語り合い、楽しい時間を過ごしました。

別れ際、彼女は、私に連絡先を教えてくれました。

そして、また一緒に映画を見に行こう、と約束してくれたのです。

(やった!)

心の中でガッツポーズをする私。

しかし、そこでふと思いました。

彼女は、私のことをどう思っているのだろうか、と……。

もし、私が彼女に好意を持っていることがバレたら、

嫌われてしまうかもしれない、そう思うと不安になってしまいます。

(やっぱり、まだ早いかな……)

そんなことを考えているうちに、私は、自分の気持ちを伝えることができなくなってしまいました。

結局、その日はそのまま帰宅することにしましたが、

私の心の中では、もやもやとした気持ちが渦巻いていました。

(どうすれば、好きになってもらえるんだろう?)

そう思いながら、ベッドに寝転がり、天井を見上げていると、不意にスマホが鳴り響きました。

見ると、画面に表示されていたのは、例の女性の電話番号でした。

慌てて通話ボタンを押すと、そこから聞こえてきた声は、紛れもなくあの映画の時のものでした。

私は、緊張しながら耳を傾けます。

そうすると、彼女は、突然謝ってきたのです。

驚いて聞き返すと、実は、この映画を観に行ったのは、

仕事の一環であり、仕方なく行ったのだということを知りました。

それを聞いて、私はショックを受けましたが、同時にホッとしている自分がいることに気がつきました。

(良かった、これで、まだチャンスはある……!)

そう思った瞬間、胸が高鳴り始めました。

私は彼女を食事に誘い、彼女も快く承諾してくれました。

デート当日、待ち合わせ場所に行くと、既に彼女は待っていました。

その姿はとても美しく、つい見惚れてしまいました。

挨拶を交わし、早速お店に向かいます。

その間、私たちはいろいろな話をしました。

趣味の話や、休日の過ごし方など、本当に他愛もない話でしたが、

私にとってはとても幸せな時間でした。

そして、いよいよ目的地に到着しました。

そこは、夜景が一望できるレストランで、料理も美味しく、雰囲気も最高でした。

そんな中、私たちは食事を楽しみながら会話を続けていましたが、

その中で、ふいに会話が途切れてしまい、お互い黙り込んでしまいました。

気まずい沈黙が流れる中、私は勇気を出して、彼女に告白しようと決意しました。

ですが、その時、窓の外に目を向けた時、目に飛び込んできた光景に、言葉を失ってしまいました。

何と、そこには巨大なクリスマスツリーがあったのです。

しかも、ただのクリスマスツリーではありません。

その高さは優に100メートルを超えており、ビルの10階以上に相当するほどの高さがある超巨大サイズのものです。

あまりの大きさに圧倒されていると、店員さんから声をかけられました。

どうやら、予約の際に伝えておいたコース料理が完成したようです。

テーブルの上に並ぶ数々の料理に目を奪われつつ、私たちは舌鼓を打ちました。

特に、最後のデザートとして出された特大ケーキには感動すら覚えるほどでした。

食事を終えた後、私たちは再び街を散策することにしました。

すっかり暗くなった街並みを眺めながら歩いているうちに、自然と手を繋いでいました。

彼女の手は小さく柔らかく、それでいて温かみを感じられました。

しばらくそのまま歩き続けましたが、やがて人気のない公園にさしかかったところで、思い切って尋ねてみました。

そうすると、意外な答えが返ってきました。

「私も、好きです」

と答える彼女の顔は真っ赤に染まっていました。

それを聞いた瞬間、心臓が止まりそうになりました。

夢ではないかと疑いましたが、確かに現実です。

嬉しくて泣きそうになってしまいましたが、ぐっと堪えて我慢しました。

そうして、しばらくの間、無言のまま見つめ合っていましたが、

やがて恥ずかしくなってきたので、どちらからともなく笑い出してしまいました。

そして、その後は二人で手を繋ぎながら、ゆっくりと帰路につきました。

こうして、私たちの交際が始まったのです。

しかし、彼女との交際はいいのですけど、私には愛する彼がいるのです。

どうしようと迷っているとスマホに彼からの着信が来るのです。

迷った末に、電話に出ると、彼の声が聞こえてきたのですが、

その声はひどく疲れているように感じました。

(何かあったのかな?)

と思って聞いてみると、彼はこう答えたのです。

それは、最近仕事が忙しくて疲れてしまったこと、

ストレスが溜まってしまってイライラしていること、

そして、私に会いたいと思っていることなど、色々なことを話してくれました。

それを聞いているうちに、私の方まで悲しくなってきてしまいました。

そんな辛い状況でも、私のことを想ってくれているという事実を知り、

ますます彼のことが好きになってしまったのです。

(よし、決めたわ! この人を支えてあげるんだ!

どんな手段を使っても絶対に!)

という強い想いが芽生えたのです。

その後、私はすぐに行動に移しました。

まず最初にやったことは、彼に会うことでした。

直接会って話せば何か変わるのではないかと思ったからです。

案の定、実際に会ったら想像以上に元気そうな様子で安心しました。

それから、一緒にお買い物をしたり、映画を見たり、

ご飯を食べたりして楽しんでいたのですが、ふとした瞬間に悲しそうな顔をすることがあるので、

心配になって尋ねると、何でもないと言って笑うばかりでした。

そんな彼を見ていると、どうにかしてあげたいという気持ちが強くなっていく一方でした。

そこで、あるアイデアを思いつきました。

それは、催眠術を使うことです。

方法は簡単で、相手にリラックスしてもらうために暗示をかけるだけです。

やり方さえわかれば簡単にできますし、彼も喜んでくれるはずです。

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