第15話 彼が好き過ぎて
「あのさ、俺のこと好き?」
私は一瞬戸惑いましたが、素直に答えることにしました。
「はい、好きです」
と答えると彼は嬉しそうな表情を浮かべてくれました。
そして再びキスをされましたが、今度は触れるだけではなく舌を入れてきましたので驚いてしまいましたが、
不思議と嫌な感じはしませんでした。
むしろ幸せな気分に浸っていたくらいです。
それからしばらくの間キスを続けていましたが、やがて満足してくれたのか解放してもらえました。
その後、私たちはお風呂から出て着替えるとリビングへ戻りました。
そうすると彼が言いました。
「そろそろ帰る時間かな? 送っていくよ」
と言って玄関まで案内してくれます。
靴を履いてから振り返ると、彼は笑顔で手を振ってくれています。
私も手を振り返しながら帰路につきました。
帰り道ではずっと彼のことを考えていましたが、不思議と寂しさはなく幸せな気持ちでいっぱいでした。
(また明日会えるよね)
そう心の中で呟きながら家路につくのでした。
翌朝目が覚めると昨日のことを思い出してしまい赤面してしまいましたが、同時に幸せな気持ちにも包まれていたのです。
それから身支度を整えて朝食を食べ終わると、仕事へ向かうために家を出ました。
いつも通りの日常が始まりましたが、ふとした瞬間に彼の顔が思い浮かんできてドキドキしてしまいます。
そして仕事中もずっと彼のことを考えてしまっていたせいか、ミスを連発してしまい上司に怒られてしまいました。
(うぅ、恥ずかしい……)
と思いながらもどこか嬉しい気持ちもあったりします。
そんな日々を過ごしていたある日のこと、彼からメールが届きました。
内容はデートのお誘いでした。
もちろん断る理由などありませんので、すぐにOKの返事を出しました。
待ち合わせ場所と時間を決めると、急いで準備に取り掛かります。
(早く会いたいなぁ)
そう思いながら準備を進める私なのでした。
待ち合わせ場所に着くとすでに彼が待っていました。
私は慌てて駆け寄りながら挨拶を交わします。
そうすると彼も笑顔で応えてくれましたのでホッと胸を撫で下ろしつつ、早速目的地へと向かうことにしました。
道中では他愛もない会話をしながら歩いていきますが、時折手を握られたりしたことでドキドキしてしまいます。
「着いたぞ」
と言いながら彼が立ち止まった場所は、小さな公園でした。
ベンチに並んで座ると自然と肩が触れ合い、余計に意識してしまう結果となりました。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼は距離を詰めてくると耳元で囁きかけてきます。
その吐息混じりの声に背筋がゾクゾクするような感覚に襲われてしまい、
思わず身を捩って逃れようと試みましたが、ガッチリとホールドされているため逃げることはできませんでした。
その間もずっと囁かれ続けていましたが、だんだんと頭がボーッとしてきて何も考えられなくなってしまいました。
そして遂に限界を迎えてしまった時、私は無意識のうちに彼にもたれかかっていました。
彼はそんな私を受け止めてくれて、優しく背中をさすってくれたおかげで落ち着きを取り戻すことができました。
しばらくしてから顔を上げると、すぐ近くに彼の顔があったのでドキッとしてしまいましたが、
それ以上に愛おしさがこみ上げてきたので思い切って自分からキスをしてみました。
そうすると彼もそれに応えるように舌を絡めてきましたが、嫌悪感は一切なくむしろ心地良さを感じるくらいでした。
そうしてしばらくの間キスを続けていましたが、やがて名残惜しそうに口を離すと銀色の糸が伸びていてプツリと切れました。
その様子を見て恥ずかしくなってしまった私は慌てて目を逸らしましたが、彼は余裕たっぷりといった様子で微笑んでいるだけでした。
その後も何度かキスをした後、最後に軽く触れるだけのキスをしてから唇を離しました。
それだけでもかなり体力を消耗してしまったらしく、私はフラフラになっていましたが、彼が支えてくれたおかげで倒れずに済みました。
彼は私を抱きしめたまま頭を撫でてくれたのでとても幸せな気分になりました。
このまま時間が止まってしまえばいいのにと思うくらいに幸せでした。
(いつまでもこうしていたいなぁ)
という願望を抱きつつも、そういうわけにもいかないので渋々離れることにしました。
その後は普通に街を散策したりショッピングをしたりして過ごしました。
夕方頃にレストランで夕食を済ませた後、家に帰りました。
シャワーを浴びてから寝室へ向かい、一緒のベッドに入ります。
その際、彼に抱きしめられる格好になったのですが、ドキドキしながらも身を任せて目を閉じました。
そうすると額に柔らかい感触を感じて目を開けると、そこには彼の顔がありました。
どうやらキスされたようです。
そのまま見つめ合っているうちに段々と距離が縮まっていき、やがて唇同士が触れ合いました。
「おやすみ、愛してるよ」
と耳元で囁かれた瞬間、全身が熱くなり鼓動が激しくなりました。
(わ、私もです)
と思いつつ、彼の胸に顔を埋めるようにして抱きつきました。
そうすると彼は驚いたような声を上げましたが、しばらくすると私の背中に腕を回してギュッと抱きしめてくれました。
それが嬉しくてさらに強く抱きつくと、それに応えるようにして彼も力を込めてくれるのでした。
そうやって抱き合っているうちにいつの間にか眠ってしまっていたようで、目が覚めると朝になっていました。
隣を見ると彼は既にいなくなっていたので、少しだけ寂しく思いましたが、出勤の準備をするために洗面所へ向かいました。
顔を洗ってから化粧をし、髪を整えてスーツを着込んだところでお腹が鳴ってしまいました。
そういえば昨日の夜から何も食べていなかったことを思い出し、何か作ろうかとも考えたのですが、
面倒だったのでコンビニに行くことにしました。
財布を持って外へ出ると爽やかな風が頬を撫でていき、気分が高揚してきました。
今日はいいことがありそうだなと思いながら歩いていると、あっという間にお店に着きました。
店内に入ると軽快な音楽が流れており、それと同時に美味しそうな匂いが漂ってきて食欲を刺激します。
カゴを手に取るとまずはお弁当コーナーへ行き、一通り見て回った後でサラダやお惣菜などを放り込んでいきました。
そして飲み物を選んでいると、ふとコーヒーが目に入ったので手に取ってみると、芳醇な香りが漂ってきたので思わず買ってしまいました。
他にもお菓子やデザート類なども購入し、レジへ持って行きました。
会計を済ませると袋に詰めてもらい、それを受け取ると店を後にしました。
家に帰る途中、歩きながら食べていると、これまた美味しいのです。
まるでグルメ漫画の主人公にでもなったような気分でした。
(このコーヒーを飲んでみたかったのよね)
上機嫌になりながら歩いていたせいか、いつの間にか到着していました。
玄関を開けて中に入るとリビングに行き、買ってきた物を冷蔵庫に入れてから自分の部屋へと向かいました。
そしてベッドの上に腰掛け、先ほど買ったコーヒーを飲んで一息ついていると、
不意に眠気が襲ってきたので抗うことができず、そのまま眠りに落ちてしまいました。
どれくらいの時間が経過したでしょうか?
ふと目が覚めた時にはもう外は暗くなっており、部屋の中も真っ暗になっていました。
そうして、私は仕事を無断で休む事となるのです。
(あー、これはまずいよなぁ……どうしよう)
そう思い悩んでいると、部屋の外から足音が聞こえてきました。
それはどんどん近づいて来て、私の部屋の前で止まると、今度は扉をノックする音が聞こえてきます。
(誰だろう?)
と思い、恐る恐る扉を開けると、そこに立っていたのは、なんとマネージャーさんでした。
(あれ、なんでここに……?)
不思議に思っていると、彼女は私に声をかけてきました。
その声は、いつもの優しい声とは違い、怒りを含んだものでした。
私は、彼女の迫力に押されてしまい、黙って話を聞くしかありませんでした。
彼女が話し終えると、私は、自分の行いを恥じ、反省する事しかできませんでした。
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