第11話 浮気? これって大丈夫かな

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

私は思わず声を上げてしまうが、そんなのお構いなしと言わんばかりに

近づいてくる彼から距離を取ろうとしても、どんどん押されていくだけでした。

やがて壁際に追い詰められた時に、私は彼の思いの強さに気付かされる羽目になったのだ。

更にキスを迫る彼から逃れるように顔を背けようとすると、

すかさず正面に回られて唇を押し付けられてしまい、

お互いの舌先が触れ合う感覚すらも感じられそうで、呼吸が荒くなる一方だ。

息を止めている間に彼は強く舌を絡めてきて、なんだか頭の中が真っ白になってしまうような

気持ち良さに身を震わせていると、次第に足に力が入らなくなってきて、

最後には立っていることすらできなくなってしまい、床に倒れ込んでしまった。

その瞬間を狙っていたかのように彼は覆い被さってきたのである。

(あれ、まずいかも?)

と思いながらも押し退けようとしたのだけど無駄だったみたいです。

「今度は君からキスして」

「いや、そんないきなり言われても困ります」

私が慌てている姿を見て楽しんでいるみたいだから、

ちょっとイラっとするけれどそれ以上にドキドキしちゃって、もう訳分からなくなってきた。

そうすると、いきなり抱き寄せられて、耳元に息を吹きかけられたことでゾクッとした。

「ひゃっ」

変な声が出てしまったのが恥ずかしくて、口を手で塞いでいたんだけど、

それでも我慢できずに漏れてしまっていた。

「このへんにしておこうか」

「え、ええ」

私はそう答えると、急いでその場から逃げ出しました。

(なんなのもう……)

それから家に帰ってからも、しばらく悶々としてしまいました。

(あんなことされたら誰だって動揺するに決まってるじゃない)

翌日になっても、まだドキドキしていた私だったけど、

会社に行くと彼はいつも通りに接してきたので、

私もなるべく普段通りに振る舞うよう心掛けていたのですが、やはりどこかぎこちなくなってしまった。

そんな状況の中、私はふと考え込んでしまいます。

(あれ、もしかしてこれって夢だったのかな?)

いや、そんなことないはず。

だって、はっきりと覚えてるもん!

でも、もし本当に昨日のことじゃなかったらどうしようって心配になるくらいに鮮明なんだもの!

だけど、直接聞く勇気もなくて悶々とした日々を送っていました。

そんなある日のことだった。

いつも通りの朝を迎え、仕事の準備をして家を出ようとした時、

突然後ろから声を掛けられた私は驚いてしまいました。

「君!」

その声の主は私の知らない人でした。

(誰だろうこの人、どこかで会ったことあったっけ?)

と不思議に思っていると、彼が話しかけてきました。

「君はイケメン御曹司とお付き合いしているね」

その言葉を聞いて一瞬ドキッとしたが、すぐに冷静な態度を装って応えた。

(この人、私達のこと知ってるのかも?)

そう思っていたけど、ここで黙っていても仕方ないと思い、こちらから質問することにする。

「そういう貴方は誰なんですか?」

と聞くと彼の表情は一瞬にして変わり、真剣な表情で私を見つめてきます。

そしておもむろに口を開きました。

「君の心を奪いにきた」

そう言われた瞬間、顔が熱くなるのを感じました。

恥ずかしくて顔を背けようとするけれど、上手くいかないまま彼に見つめられたまま動けなくなってしまいます。

そうして黙り込んでいると、不意に手を握られてしまったのです。

私は咄嗟に逃げようとしますが、あっけなく捕まってしまって動けなくなります。

そのまま私の手を握っている彼は、真剣な表情のまま黙り込んでいるのです。

暫く沈黙の時間が続きましたが、やがて彼の方が口を開くと、私の耳元まで顔を寄せてきました。

「今お付き合いしている人と別れて、俺と付き合え」

そう言われて、私の頭は混乱してしまい何も考えられなくなります。

そんな中、更なる追い打ちが掛けられていきます。

突然、彼は私に覆いかぶさると強引にキスをしてきました。

舌が絡みつき、口内を蹂躙するかのように蹂躙してきます。

「んむっ」

相手の力は強く、私が抵抗してもびくともしません。

そして、暫くすると、満足したのかどうかは分かりませんが、唇を離してくれました。

そして、そのまま耳元でこう囁かれたのです。

「俺と結婚しろ!」

突然のプロポーズに戸惑いを隠しきれませんでした。

(どうしてそんなことを急に言ってくるのでしょうか)

「返事はどうした?」

そう急かされてしまいましたが、それでも尚、私の中では葛藤していました。

だって、私はもう彼氏がいるんですから!

それに、私にはまだお付き合いしている相手がいるし、結婚するなんて考えられませんもの。

だから、彼のことはお断りするつもりでした。

でも、どうしても断れない理由がありました。

それは、 彼に惹かれ始めていたからなんです。

(でも、こんなこと思っちゃ駄目だよね……私には彼氏さんがいるからっ……)

そんなことを考えているうちに、彼は再び唇を重ねてきました。

(ああ、またキスされてるよ、私……どうして抵抗できないの?)

そう思いながらも、彼に身を委ねていました。

それから暫く経った後、やっと解放されることになりましたが、

その時にはすっかり蕩けてしまっていたのです。

そんな私を見ながら、彼が一言呟いているのが聞こえました。

「よし、これからは逃がさないよ」

と言っていましたが、それを聞き取ることはできず、

聞き返すと、なんでもないとはぐらかされてしまいました。

その後、私達は一緒にお買い物に出かけていきました。

新しい洋服を探して買った後、カフェで軽食をとったりしていました。

その途中で彼が手を重ねてきたのですが、私は抵抗することができませんでした。

(どうしたんだろう私)

そう疑問に感じている間も、彼の手は私の手の甲をさすったり、握ったりしてきます。

それでも振り払うこともできずにされるがままでした。

そうして何分か経過した頃、急に立ち上がって歩き出したのです。

行先はどうやらホテルのようでした。

彼は有無を言わせぬ様子で中に入り、部屋を取ると、そこに案内されました。

部屋についたら、そのまま押し倒されていきなりキスをされてしました。

しかも、恋人にする様な濃厚で深いやつです。

それがしばらく続いた後、やっと解放されました。

その頃にはもう思考能力は失われかけており、ただ彼にされるままになっている状態です。

「さあ、君の心を奪いに来たって言っただろ、今から俺色に染めてあげるよ」

そう言われると、そのまま押し倒されてしまい、身動きが取れなくなってしまいます。

(あれ?  これってマズイんじゃないの?)

と頭の片隅で思うのですが、体が思うように動かなくなってしまっていますし、

抵抗する気力もありません。

結局そのまま身を委ねることにしました。

(でも、これは浮気じゃないし、彼ならいいよね)

私は自分に言い聞かせます。

「じゃあキスしようか」

そう言って、彼が私に覆いかぶさってきた為、私は瞼を閉じてしまいます。

そうして唇を重ねると、キスだけでなく、

彼の手が身体中に伸びていくのを感じたのです。

最初は怖かったけれど、だんだん気持ち良くなっていき、

もっとしてほしいと思ってしまうようになっていました。

「君みたいな女の子を独り占めできる彼氏君が羨まし過ぎるよ」

と言われ、 思わず赤面してしまいました。

(え、私みたいな女性が好きなの?)

そう思うと、ますます興奮してしまいます。

「これ以上は何もしないよ」

と言って離れられると、私は切なくなります。

(もっとしてほしい、もっと、もっと)

と、心の中で思ってしまいました。

でも、それを口に出すことは恥ずかしくてできませんでしたが、どうやら顔に出てしまっていたようです。

そうすると、彼はニヤリと笑うと再び私を抱き寄せました。

そして、耳元で囁かれた言葉は意外なものでした。

「俺のことが好き?」

と聞かれ、何も答えられませんでしたが、それでもなお続けて言われた言葉によって、

私はとうとう陥落し てしまい、とうとう告白してしまいました。

「好きです、大好きです! 付き合ってください」

そう言って抱き着くような仕草をすると、彼が優しく頭を撫でてくれます。

それが嬉しくて、もっとしてほしいという気持ちになりつつありました。

でも、これ以上は流石に無理だろうと諦めたその時でした、突然唇を奪われてしまったのです。

「君みたいな女の子、これからも構ってしまうのは仕方ないな」

と言われた瞬間、私は喜びが止まらなくなり、そのまま何度も唇を重ねました。

それから暫くした後、ホテルから出て、帰路につきました。

帰り道では手を繋いでくれてとても幸せでした。

でも、家に着きそうになった時に突然離されました。

私はもっと繋いでいたかったのですが、恥ずかしくて言えなかったのです。

そんなことを考えている内に、彼は私から離れようとしていきます。

私は咄嵯に手を伸ばし引き止めようとしたのですが、間に合いませんでした。

(どうして?  もっと繋がっていたい)

と思っていたのですが、そんな思いとは裏腹に彼は離れて行きました。

(ああ、そっか、そうだよね、彼は忙しいもんね)

そんなことを思いつつも少し寂しさを感じた私は家路に着きました。

家に着く頃にはすっかり疲れてしまっていたため、そのままベッドで寝てしまいました。

目が覚めた後、ふと頭に浮かんだ疑問について考えていると、ある可能性に思い当たりました。

私ってお付き合いしている人がいるのに、他の男性とキスしたんだ。

しかも、それ以上のこともしそうになったような気がします。

そんなことしてはいけないなんて理解しながらも、心のどこかで喜んでしまう自分がいたことに気づき、

なんとも言えない感情に包まれます。

私は彼氏のことを考えているはずなのに、彼のことは頭から完全に抜け落ちていて、

別の男性のことばかり考えるようになってしまっているのです。

それからというもの、彼との関係はますます深いものとなってゆきました。

彼と会えば会うほど、彼への想いが強くなっていったからです。

ある日のこと、いつものようにデートをしている最中のことでした。

突然彼がこんなことを言ってきたのです。

「ねえ、今度温泉旅行に行こうと思うんだけど、どうかな?」

私は驚きつつも頷きました。

「いいね、行きたい!」

そう言うと、彼は笑顔で応えてくれます。

ああ、楽しみだなあと思いながら当日を迎えることになります。

いよいよ当日になると、私たちはバスに乗って移動していました。

目的地まではまだまだ時間がかかるということで、二人で話をしながら過ごしています。

途中で休憩の為に立ち寄ったサービスエリアで、ご当地スイーツを食べたり、

お土産屋さんを見たりと観光気分を味わっていました。

そんな楽しい時間もあっという間に過ぎてしまい、目的の旅館に到着します。

早速チェックインを済ませると、部屋へと向かいました。

中に入ると、和室の部屋で落ち着いた雰囲気のある部屋でした。

窓からは綺麗な景色が見えていて、心が癒されていくような感覚を覚えました。

「すごい綺麗ですね」

私が言うと、彼も同意するように頷きながら言いました。

「うん、そうだね、とっても素敵な部屋だ」

そう言いながら荷物を下ろしている彼を横目に、私も準備を始めます。

そうして一通り終わる頃に、彼から声が掛かりました。

私は慌ててそちらを向くと、彼に向き直ります。

そうすると、突然抱き締められて、驚く暇もなく唇を奪われてしまいました。

舌を入れられて、絡め取られていきます。

息ができなくて苦しいですが、それでもやめてほしいとは言いませんでした。

むしろ自分から求めてしまっていて、頭が真っ白になって何も考えられません。

暫くの間そうしていると、ようやく解放された時には酸欠気味になってしまい、

足元がふらついてしまいました。彼は私の体を支えつつ、耳元で囁きます。

「好きだよ」

その言葉を聞いただけで胸が高鳴り、心の奥がほっこりします。

そして再び唇を奪われ、今度は軽く触れるだけの優しいキスでした。

唇が離れると名残惜しさを感じましたが、それ以上に嬉しさが込み上げてきて自然と笑みが溢れました。

それから暫くの間、お互いを見つめ合っていましたが、不意に恥ずかしくなって顔を背けてしまいました。

その後、夕食の時間になるまでの間はのんびり過ごしたり、お風呂に入ったりしていました。

その間、ずっと彼のことが気になって仕方ありませんでした。

早く会いたいという気持ちばかり募り、待ちきれないといった様子でそわそわしていました。

しかし、いざ会えるとなると何を話していいか分からなくて、結局沈黙したままでした。

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