第10話 どうしよう、キスしちゃったじゃない!
「んっ……」
舌を差し込まれて絡め取られると同時に唾液を流し込まれ、飲み込むしか選択肢はありません。
ごくりと喉が鳴る度に羞恥心が込み上げてくるのですが、それ以上に心地良さを感じてしまっていて、
抗うことなどできませんでした。
やがて唇が離れるころにはすっかり息が上がってしまい、ぼんやりとした頭で彼を見つめることしかできません。
その様子を見た彼は満足そうに微笑むと、耳元に口を寄せて囁きかけてきました。
それはまるで悪魔の誘惑のようでもあり、今の私にとっては天使のお告げのようにも聞こえました。
その言葉を聞いた瞬間、私の心は完全に折れてしまったのです。
もう逆らう気力すら残っていません。
だから素直に従うことにしました。
「お願いします……私をめちゃくちゃにしてください」
それを聞いた彼はニヤリと笑うと、再びキスをしてきました。
先程よりも激しい動きで口内を犯し尽くされていきます。
歯茎や上顎の裏など隅々まで舐め回され、蹂躙されるような感覚に陥りながらも、
必死に応えようと舌を動かし続けました。
そうしているうちに段々と意識が遠のいていき、視界がぼやけてきた頃になってようやく解放されました。
肩で息をしながら呼吸を整えていると、不意に下腹部を撫でられる感触があり、驚いて顔を上げると、
そこには不敵な笑みを浮かべた彼の顔がありました。
嫌な予感を覚えつつも見つめていると、案の定とんでもないことを言い出してきました。
「まだまだキスしようか」
「え、ちょ、ちょっと待って、今したばっかりじゃない!」
慌てて制止するも、聞き入れてくれません。
結局、朝まで離してもらえず、何度もキスされてしまう羽目になりました。
翌日、目が覚めると、隣には素肌のまま眠る彼の姿がありました。
昨夜のことを思い出し、恥ずかしくなっていると、彼も目を覚ましてしまったようです。
目が合った途端、微笑みかけられ、思わずドキッとしてしまいました。
そうすると、突然抱きしめられてしまいました。
突然のことに戸惑っていると、彼が口を開きました。
「おはよう、昨日は楽しかったね」
そう言われて、一気に記憶が蘇ってきました。
そうだ、昨日、彼と何度もキスしたんだ。
「あ、あの、えっと、その、おはようございます」
緊張してしまって上手く話せません。
そうすると、またキスをされました。
しかも今度は舌を絡め合う濃厚なディープキスです。
あまりの気持ち良さに腰が砕けてしまいそうでしたが、何とか耐え抜きました。
それでも、暫くの間は余韻に浸っていましたが、
いつまでもこうしているわけにはいきませんので、意を決して話し掛けることにしました。
しかし、何を話せばいいのか分からなくて困っていると、彼が話しかけてきてくれました。
その内容を聞いて驚愕しつつも、どこか納得している自分がいることにも気付きました。
確かに言われてみれば思い当たる節がいくつかありますし、
何よりも自分の中に彼に対する好意があることを自覚していたからです。
「なるほどねぇ、そういうことだったんだね」
私は彼に向き直ると、はっきりと自分の気持ちを伝えました。
そうすると、彼もそれに応えるように真剣な眼差しを向けてきました。
そして、おもむろに口を開くと、思いがけない言葉を口にしたのです。
「この後、俺の家へ来ませんか?」
「えっ!?」
まさかそんなことを言われるとは思ってもいなかったため、驚きのあまり固まってしまいました。
そうすると、彼は慌てた様子で弁明を始めました。
どうやら冗談だったようだと思い、ホッと胸を撫で下ろしていると、急に手を握られてしまいました。
びっくりして見上げると、彼は真っ直ぐにこちらを見つめたまま話し始めました。
「本気だよ」
その言葉に心臓が跳ね上がるほど鼓動が激しくなりました。
思わず目を逸らしてしまいますが、彼は構わず続けます。
「君のことが好きだ」
真剣な表情でそう言われた瞬間、頭の中が真っ白になってしまいました。
何も言えずに固まっていると、彼が顔を覗き込んできたため、反射的に仰け反ってしまいます。
そんな反応を見て苦笑しながらも、さらに距離を詰めてきました。
もう逃げられないと思った私は覚悟を決めて目を閉じました。
そうすると、唇に柔らかいものが触れた感触がありました。
それが何なのかはすぐに分かりました。
キスされたのだと気付いた時には、既に離れてしまっていましたが、不思議と嫌な気分ではありませんでした。
むしろ心地良いくらいで、ずっとこうしていたいと思ってしまうほどでした。
それからしばらくの間、お互いに見つめ合ったまま黙り込んでいたのですが、不意に彼から話しかけられました。
「そろそろ行こうか?」
と言われ、頷くと手を引かれて立ち上がりました。
部屋を出る前に振り返ってみると、そこには見慣れた景色が広がっているだけで、
先ほどまでの出来事が夢だったのではないかと錯覚するほど現実味のない光景でした。
その後、彼と別れてから家に帰るまでの間、ずっと上の空状態で、
どうやって帰ってきたのかも覚えていませんでした。
家に帰ってからも、先程の出来事を思い出して悶々としていました。
「どうしよう、明日からどんな顔をして会えばいいんだろう」
そんなことを考えながら眠りにつきましたが、なかなか寝付けずに苦労したものです。
翌朝、いつものように出勤すると、職場の同僚たちが声を掛けてくれました。
しかし、私が元気がないことに気付いたらしく、何かあったのかと尋ねられたので、
正直に打ち明けることにしました。
そして昨日のデートで起こった出来事について詳しく話したところ、みんなから質問攻めにあってしまいました。
中でも一番多かったのが、どうしてそうなったのかということです。
私自身もよく分かっていなかったので、上手く答えられませんでしたが、
みんなに支えられているんだなということを感じて嬉しく思いました。
(本当にいい人たちばかりだな)
そう思いながら仕事をこなすうちに、いつの間にか定時になっていたようで、
帰る準備をしていたら、後ろから声を掛けられました。
「一緒に帰ろうぜ」
振り返るとそこにいたのは圭介さんでした。
私は頷きながら返事を返します。
そうして二人で会社を後にすることになりました。
「そういえば、君はお付き合いしている人がいるんだよね?」
「えっ、どうして知ってるんですか!?」
驚いて聞き返すと、彼は苦笑しながら答えました。
「君が教えてくれたんじゃないか」
「そうでしたっけ?」
首を傾げながら考え込んでいると、突然手を握られました。
驚いて顔を上げると、彼は真剣な眼差しを向けてきました。
「キスしないか?」
「はい!?」
まさかそんなことを言われるとは思ってもいなかったため、動揺してしまいました。
しかし、彼は構わず迫ってきます。
私はパニックに陥りながらも何とか逃れようとしましたが、結局捕まってしまいました。
そして、そのまま唇を重ねられてしまいました。
最初は軽く触れるだけのキスでしたが、次第に深いものに変わっていきます。
暫くの間、何度も繰り返しキスをされてしまい、頭が真っ白になってしまいました。
それでも必死に応えようと舌を動かし続けました。
そうしているうちに段々と意識が遠のいていき、視界がぼやけてきた頃になってようやく解放されました。
「君はお付き合いしている人がいるのに、俺とキスしたな」
「そ、それは圭介さんが仕掛けてきたんじゃない!」
我ながら情けないと思いつつも、咄嵯に言い返してしまいました。
それを聞いた彼はニヤリと笑うと、再び私を押し倒しました。
そして耳元で囁いてきます。
「俺のこと好きなくせに」
そう言うと、私の唇に触れてきました。
「ほら、もう我慢できないだろ?」
その言葉を聞いて思わず身体が反応してしまい、
それを誤魔化すために目を開きながら彼の顔を睨みつけると、彼も私の目を覗き込んできます。
それから暫くの間、互いに見つめ合ったまま黙り込んでいたのですが、不意に手を握られました。
その手の感触だけでドキドキしてしまっていたのに、
指を絡め取られるような感覚に陥ってしまうことでさらに鼓動が激しくなるばかりでした。
(なんで、なんでこんなことをするの!? おかしいでしょ)
「あ、あの、どうしたんですか、こんな場所で」
私はなんとか平静を装って質問したけれど声がうわずってしまっていた。
だって、いきなりキスしてくるとかありえないでしょ!
そんなことを考えていたら彼が口を開いた。
「だって好きなんだもん!」
とストレートに言われてしまって、心臓がバクバクいってるのが分かるくらい高鳴っていたと思う。
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