第3話 彼の事が気になる私

暫くすると、中から人が出てきたため、挨拶をして名刺を差し出しました。

相手の顔を確認した後、こちらも自己紹介をし、そしてそのまま応接室まで案内されました。

そこで本題に入ろうとしたのですが、今回の相手はかなりのやり手である上に強気のようで、

少しもたついているうちに相手側に主導権を握られた形になってしまい、

あっという間に商談のペースに吞みこまれてしまいました。

結局、私は何もできないままに終わってしまいましたが、

帰り際に相手方が浮かべていた微笑みを見て、

嫌な予感しかしなかった事だけは記憶に焼き付いていました。

そうして家に帰りついた私は、今日の反省をすることにして、

今後どうしていくのかを考えてみる事にしました。

(やはりもう少し経験が必要かもしれない)

と思いつつ、 次回に向けて気持ちを新たにするのです。

それから暫くして落ち着いた所で再び彼との思い出に浸るようになっていました。

(好きだ、けれど今は控えなければならない)

そう思いながらも、少しでも近づこうと努力することで自分を奮い立たせていくのでした。

そうして日々を過ごしていたある日、急に彼から連絡が来たので何事かと

思って電話をかけました所、会いたいと言うのです。

ちょうど予定が空いていたこともあり承諾すると、指定された場所へと向かいます。

「元気だった?」

「うん、おかげさまで」

私達は、軽く挨拶を交わした後で早速本題に入りました。

その内容はデートの誘いでした。

もちろん断る理由はありませんので喜んで応じることにしました。

そのまま二人で街へと繰り出した後、色々なスポットを巡りながら楽しい時間を過ごしたのです。

(あぁ、幸せだな)

と思いながら歩いていると、彼が突然手を握ってきたため驚いてしまいましたが、

すぐに握り返してあげることにしました。

そうして手を繋いだまま暫く歩いた後、展望台に到着してから暫くの間二人きりで景色を眺めていました。

その間もずっと手は繋いだままでしたから、なんだかドキドキしてしまいましたけれど、

不思議と嫌な感じはしなかったので素直に受け入れました。

暫くして満足したのか彼が手を離したので少し残念な気持ちになりましたが、

(仕方がないことだよね)

と自分に言い聞かせながら、私達は夜景を見ながらお話をすることにしました。

それから暫くして、急に彼からキスを求められましたので、それに応える形で唇を重ねました。

初めは触れる程度の軽いものでしたが徐々に深く激しいものへと変化していき、

最終的には舌まで絡める濃厚なものへと変わっていきました。

お互いの唾液を交換し合うような長い口づけでしたが、不思議と不快感はなくむしろ心地良いくらいだったのです。

暫く続けた後、ゆっくりと唇を離すと銀糸を引いたのが見えてしまったため恥ずかしくなりましたが、

それ以上に幸福感に包まれていたと思います。

それを終えた後、二人で仲良く帰ったのですが、

その日の夜はなかなか寝付けず悶々とした日々を過ごしたことは言うまでもなく、

結局翌日になってから改めて思い返してみたところ羞恥心に苛まれることになったのは言うまでもありませんでした。

今日もいつものように会社へ出勤してきましたが、今日は特に忙しかったり、

トラブルが発生することもなく平穏な一日を過ごせたことにほっとしていました。

帰宅してからは、疲れからか早めに眠くなってしまい、そのまま布団に潜り込むとすぐに寝入ってしまいました。

翌朝起きてから昨夜のことを思い出してしまいましたが、

(まぁいいか)

と割り切ることにしました。

(それよりも彼の方が気になるんだけどなぁ)

そう思いつつも、次に会った時にはどう接したら良いものか頭を悩ませたのでした。

しかし、結局結論が出ないまま時間だけが過ぎていき、つい先ほど帰宅したのですが、

今度は彼から連絡が入りましたので慌てて電話に出ることにしたのです。

(どうしたんだろ?)

と思いながらも電話を受け取ると、彼は開口一番私にこう言ってきたのです。

「今、お時間ありますか?」

「はい、大丈夫ですよ」

そう答えると、彼は安堵した様子で続けた。

どうやら何か話したいことがあるみたいだけれど、一体なんだろう?

と思い聞いていると、彼の口から飛び出したのは衝撃的な一言だった。

「貴女の下着の色は?」

「へっ!?」

思わず変な声が出てしまった。

一体何を言っているのだろうかこの人は? と思いながらも、

答えなければならない雰囲気だったので仕方なく答えることにした。

「ピンクですけど……」

そう答えると、彼は興奮した様子で更に質問を投げかけてきた。

その内容はと言うと、私の趣味についてだった。

好きな食べ物や嫌いな食べ物から始まり、

最近ハマっていることなどを事細かに聞かれた挙句の果てに、最後にはスリーサイズまで聞かれてしまったのである。

(さすがにそれはちょっと恥ずかしいかも……)

と思いつつも素直に答えたところ、今度はどんな下着が似合うかという話題に変わりましたので、

適当に答えておきました。

それから暫く会話を続けた後で電話を切った後、深いため息を吐きました。

(なんか疲れたなぁ)

そう思いながらもシャワーを浴びてから布団に入りますと、すぐに眠りに落ちてしまいました。

翌朝目が覚めると、既に出勤時間が迫っていましたので、急いで支度をして家を出ました。

会社に到着するとすぐに仕事に取り掛かり、午前中はあっという間に過ぎていきました。

昼休みになると、同僚達と食事に出掛けることにしましたが、

その際も彼のことが気になって仕方ありませんでした。

(今頃何してるんだろう?)

と思いながら、午後の仕事をこなしていくうちに定時を迎えましたので、帰宅することにしました。

そして家に着くとそのままベッドに直行して横になりました。

(早く会いたいなぁ……)

そう思いながら目を閉じますと自然と睡魔に襲われて眠りにつきました。

翌朝目が覚めると、昨日の出来事を思い出してしまい顔が熱くなるのを感じましたが、

同時に幸せな気分に包まれていました。

(今日は会えるかな?)

そんなことを考えながら身支度を整えた後、会社へと向かうために家を出ました。

会社に到着すると、いつも通りに業務をこなしていくうちに時間は過ぎていき、

あっという間に定時を迎えました。

(よし!)

心の中で気合いを入れると、足早に帰宅しました。

家に着くと真っ先にシャワーを浴びてから、夕食の準備に取り掛かります。

そして出来上がった料理をテーブルに並べる頃には、時刻は午後7時を過ぎていましたが、

まだ彼からの連絡はありませんので、仕方なく待つことにしました。

(早く来ないかなぁ)

と思いながら待っている間にもドキドキしてしまう自分がいることに気づきました。

(あぁもう! なんでこんなに緊張してるんだろう?)

そう思った瞬間でした。

インターホンが鳴ったのです。

慌てて玄関に向かいドアを開けるとそこには彼が立っていました。

私は思わず抱きついてしまいましたが、彼は優しく受け止めてくれました。

それから暫くの間抱き合ったままでしたが、やがて名残惜しそうに離れていきました。

「お、お久しぶりですね」

と私が言うと、彼も微笑みながら応えてくれました。

それから家の中に招き入れると、彼はソファに座りましたので、

私もその隣に座ろうとしたのですが、彼に制止されました。

「ここに座って下さい」

そう言われてしまったので仕方なく従うことにしました。

すると突然彼が私の肩に手を回してきたのです。

(えっ!?)

と思った瞬間でしたが、そのまま抱きしめられてしまいました。

そして耳元で囁かれた言葉に私は赤面してしまいました。

(あぁもう! この人は本当にズルい人なんだから!)

と思いながらも嬉しさの方が勝っていましたから素直に受け入れる事にしたのです。

その後暫く抱擁を続けた後でようやく解放されましたが、

まだ心臓の鼓動が激しく鳴り響いていましたので落ち着くまでに少し時間がかかりました。

その後も彼と楽しく会話をしながら過ごしましたが、

ふと時計を見ると既に午後9時を過ぎていることに気づき、

慌てて帰るように促しましたが、彼は一向に帰ろうとしません。

それどころか私の手を握ってきたのです。

その瞬間、私の心臓は跳ね上がりました。

そして、そのまま押し倒されてしまいました。

(えっ!?)

と思った瞬間でしたが、抵抗できずにされるがままになってしまいました。

その後のことはよく覚えていませんが、翌朝目が覚めると隣に

彼が寝ていましたので驚きましたが、同時に幸せな気持ちになりました。

(これからもずっと一緒にいたいなぁ)

と思いながら彼の寝顔を眺めているうちに再び眠気に襲われてしまい二度寝することになりました。

「おはようございます」

目が覚めると、既に彼は起きていました。

私は慌てて起き上がり挨拶を返しましたが、昨夜のことを思い出してしまい恥ずかしくなってしまいました。

そんな私の様子を察してか、彼が声をかけてくれましたので、少しだけ落ち着きを取り戻すことができました。

その後は朝食の準備をするためにキッチンへ向かいましたが、その間もずっと彼の視線を感じていましたので、

とても緊張しましたが何とか無事に終えることができたと思います。

その後二人で食事を摂った後、私は会社に行く準備を始めました。

彼も一緒に行くことになりましたが、その前にもう一度キスを求められましたので応じてあげることにしました。

(あぁもう! なんでこの人はこんなに積極的なんだろう?)

と思いながらも幸せな気分に浸ることができましたので満足でした。

そして、彼と別れてから会社に向かい仕事をこなしていくうちにあっという間に一日が終わりを迎えてしまいました。

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