第5話 敵だ! ヒーローの出番だ!

「よし、今夜決行だ!」


「しかし、なぜ今になって結界が?」


「分からぬが、きっと我々を試しているのだろうな」


「きっとそうだ! 何百年と張られていた結界が急に無くなるなんて、我々をみくびっているとしか思えない! 舐められたもんです」


「そうだな、ここらで我々の凄さを見せつけてやろう!」


 円卓を囲み、鎧を装備した男達が会話をしていた。


「いつまでも、奴らの思い通りにはさせん!」


「ヨセフ・オリバー!! 奴に我々、人間の凄さを思い知らせてやろう!」


 その発言に、男達の雄叫びが上がった。




 ーーーーーーーー




 城に戻ればもちろん騒ぎになっていた。


「ボス! どこに行っていたのですか!」


「ごめんなさい」


 フォルストに怒られた。


 最近気づいたんだけど、彼女結構怖いんだよね。


 顔はめっちゃ綺麗だよ?


 たぶんそれもあるからだと思う。


 もう大人しくしてよ。


 と、その時。


「ボ、ボス!! し、城がががっ! ど、どどどうしましょう?」


 フォルストに怒られていると、水色の髪をした可愛い女の子が慌てて入ってきた。


 この子はウニタス。


「ウニタス。一回落ち着いて。何があったの?」


 フォルストが言った。


 フォルストは、僕の手下の中で一番偉いんだ。


 そして、ウニタス。彼女は問題児。というか、ペットみたいな感じ。


 そんな彼女が慌てまくっている。


「し、城に! お、お城に侵入者が! い、今、みんなで追い返してるけど、ひ、人多くて!!」


「侵入者? そんな筈は……。この城は常にボスの結界によって守られているはず……」


 ヨセフ君、結界なんてはれるんだ! すげー!


 え?


 てことは、僕がそれをしないといけないってことだよね?


 僕、結界の張り方なんて知らないよ?


 フォルストと目が合った。


 なんか怖い。


 そらしちゃった。


「ウ、ウニタス嘘ついてないよ! ほ、本当に、いっぱい来てる! フ、フォルスト信じてー!」


 ウニタス可愛い。フォルスト怖い。


「ボス、確認して参りますのでこちらでお待ちください」


「うむ」


 フォルストとウニタスは、ささっ、って瞬間移動みたいに、残像を残して消えた。


 僕もそんなんしてみたい。


 でも、僕って多分弱いよね。


 前世でも弱かったし、常に彼女達に守られてるし、今だって待っててって。


 ま、いいんだけど。


 だって僕が動かなくても勝手になんとかしてくれるしー、僕はただ座ってるだけでいいしー。


 しかし、待てよ?


 侵入者ということは、悪党だな?


 悪党ということは、正義のヒーローの出番だということ。


 では、僕の出番だ!


 こんなところでぼけっと座っているわけにはいかぬ!


「待って〜! 僕も行く!」


 そして、僕はちゃんと地面を足で歩いて、その重い扉を開いて長い廊下に出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る