第4話 プチ家出ならぬ、プチ旅行

 もーう!


 遠足詐欺はもう飽きた!


 フォルストは視察視察ってそればっか。


 僕の日常はだいたいこんな感じ。


 朝日とともに起きて、それから視察。昼も視察。夜も視察。


 そういえば、視察で女の子を選んだ日のご飯は美味しいんだけど、おっさんとか、そういうの選ぶとなんか不味いんだよね。


 あれなんなんだろ?


 料理人的な感じ?


 フォルストの気分かな?


 おっさん嫌いなのかな?


 学習したから、最近は視察では絶対女の子を選ぶんだ。


 あとは、たまに、手下の子達とみんなでカードゲームしたりしてる。


 そんくらい。


 結構暇。


 だから暇つぶしに城の探検しようとしたら、迷子になったからやめた。


 というわけで、プチ家出。


 城を出てきたんだけど。


 というか気づいたら外にいた。


 城を出る時は、一人で出ちゃダメみたいな雰囲気あるんだよね。


 子供じゃないのに。


 それにしても、街はやっぱボロい。


 誰かに壊されたようなその風景ーー。


「誰がこんな酷いことを」


 って、正義のヒーローらしく呟いてみた。


 すると、子どもの泣き声が聞こえた。


 ヒーローの登場タイミングはいつも泣き声である。


「き、君たち、何をしている?!」


 というわけで僕は、正義のヒーローっぽく、駆けつけ、カッコよくそう言ってみた。


 小声でね。


 少年が大人の男に囲まれていじめられている。


 なんて悪党達。


 まだ僕には気づかないみたい。


 よし!


「貴様ら! その子から離れ給え!」


 少し声を張り上げて言ってみた。


 異世界転生を果たして少しハイになっているんだ僕は。


 前世ならボコり返されるから絶対無視するんだけどね。


 もちろん、警察に通報してから立ち去るよ?


 僕は調子に乗ってそう言ってみた。みたかった。


「あ? なんだと?」


 男が振り向いて僕を睨んだ。やけに体格のいい彼。


 あ、これぶっ殺されるやつかな?


 怖いかも。


「あ、そ、その子、い、嫌がってるよ」


 僕は視線を下に向けてボソボソ呟いた。


「あ? 聞こえねぇーよ?!」


 怒ってるね。彼は怒ってる。


 やばい、逃げようかな。


「……って、逃げろー!!」


 と、男達が逃げていった。


「は?」


 なんで?


 僕じゃなくて、彼らが逃げてった。


 あれ?


 でもよかった。


 でもなんで? 


 まあ、助かったしいっか。


 というわけで、


「大丈夫かい? 少年よ!」


 気を取り直して、僕は少年に手を差し出した。


 倒れ込む少年に。


 うんうん。正義のヒーローっぽいね!


 ありがとう、正義のヒーローさん! あなたの名前は?


 とか言ってくれるんだろうなー。


「ぎゃ! ぎゃぁぁああ! あ、ありがとうございましたーーーーー!!!!」


 と言って、少年は走って去って行った。


 違う違う、そうじゃ……!


 なんか違う。


 え? なんで?


 僕ってそんな怖い顔してる?


 今朝鏡で見たら、色の白い、女みたいな美少年だったんだけどね?


 さすがに今のは傷ついた。


 ま、いいや。


 腹減ったし、城戻ってフォルストにご飯作ってもらおっ。

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