入学式4

私とお母さんは、いっしょにろうかを歩いていく。

「中等部の校舎、初等部とあまり変わらないわね」

「外見もそっくりだしね」

「このろうかも、歩いているとなつかしくなるわ」

「お母さんったら、卒業式に来てくれたばっかりでしょ」

 つい先月だ。それでも、お母さんはだいぶ無理して仕事を休んだみたいだけど。

「卒業式の前は、ぜんぜんこの学校に来れなかったでしょ。6年生の運動会や学芸会にも行けなかった」

「仕事があったもん、仕方ないよ。私も大丈夫だから」

 かつてのお母さんは、お父さんといっしょに、運動会でも学芸会でも必ず来てくれていた。

 変わったのは、りっかちゃんとお父さんがいなくなってから。私をひとりで養うために、お母さんは仕事に追われるようになった。

「結局、卒業式の前にここに来たのは、あなたの5年生の授業参観だったわね」

「あの授業参観、覚えてたんだ」

 それだけでもうれしい。

「授業中なのにあなたが……いえ、何でもないわ」

 ――フルートを演奏するまねをしていたことも、きっちり覚えているわ。

 お母さんは、こう言おうとしたのだ。それで先生に注意されて、私もお母さんも顔がまっ赤になった。

 言いかけて、やめたのは……

 私がフルートをしていたことなんて、今のお母さんにはつらい思い出だから。

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