入学式 3

 入学式が終わって、私たちは教室にもどる。朝のホームルームと違って、保護者たちも教室にいた。

 もちろん、私のお母さんも教室にいる。でも、ほかの子の親は白っぽい礼服なのに、私のお母さんだけ黒のスーツを着ていた。入学式というより、仕事に行くときの服装だ。

 それもそう。

 お母さんは仕事を午前中だけ休んで、お昼から職場に行くことになっているから。

 入学式に来てくれないよりはましだけど、あれだと浮いている。

「では、今日はこれまでです。学校を見てまわったり、親子でお話ししたり、思い思いにすごしてください」

 田中先生がホームルームを切り上げて、教室の中がのびのびした空気になる。

 私はお母さんのところに向かった。

「入学、おめでとう」

 お母さんは、ほかの保護者たちと同じように笑ってくれる。

「ありがと。それより、写真とりに行こうよ。すぐ仕事でしょ」

 思い出を残すなら、急がないと。

「そうね、校舎の表玄関がいいかしら。校門のところでもいいけど」

「ふたつの校舎の間に桜の木があるでしょ。そこもいいな」

「桜ね、入学式らしくていいわ」

「でしょ。それで、りっかちゃんにも見せてあげるんだ」

「律歌とお父さんにも、でしょ」

「そうだった、えへへ」

 私は、ほだかくんのほうに目を向けた。

 ほだかくんも、お母さんと話していた。ほだかくんやあいちゃんとそっくりな、栗色の髪と瞳をしている。ひょっとしたらと思っていたけど、美人さんだ。

「音美、どうしたの? 行かないの?」

 私のお母さんに言われて、はっとした。

「ごめんごめん、行く」

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