入学式 1

 1年C組の教室にて。

「えーっと、びっくりだね」

「オレら、知り合ったばっかなんだけどな」

「こんなことって、あるんだ」

「たまたまだけど」

「うん、こうなったのは、たまたま」

 私とほだかくんが、どうしてこんな会話をしているのかというと……

 席がとなり同士だからだ。

 クラスが同じだけじゃなくて、席までこんなに近いなんて。

 神様が引き合わせたみたい。

 まあ、でも、ほだかくんって顔がいいんだよね。他の女の子たちも、ときめいてしまうっていうか、なんていうか。しかも初等部から上がってきたみんなからしたら、ほだかくんは転校生みたいなものだし。だから……

「あれ? きみ初等部にいなかったよね」

「かわいい」

「髪きれい。さわったらさらさらしてそー」

「目がぱっつり、アイドルみたい」

「名前は、鈴森くんだっけ?」

「外からなの? 小学校どこ?」

「部活どこにするの?」

 あらら、あっという間に囲まれちゃった。

「あ、あの……」

 質問ぜめにされて、ほだかくん、ちょっと困った様子だ。

 でも、ちょうどチャイムが鳴った。

 ほだかくん、職員室に行ってあいさつとか入部届の提出とかいろいろしたから、教室に入ったのが始業ぎりぎりだったんだよね。

「自己紹介はあとでするから、席にもどったほうがいいんじゃない?」

「はー、なんか残念」

 ほだかくんを囲っていた女の子たち、しぶしぶといった様子で席にもどっていく。

「はーい、みんなおはよう」

 女の先生が教室に入ってくる。若い先生で、教室によくひびく声がして、なんだかたよりになりそう。

「C組担任の田中かおりです。中等部にようこそ。初等部から上がってきたみなさんは顔なじみだと思いますが、まずは紹介したい人がいます。鈴森くん」

「はい」

 ほだかくんは立ち上がって、教卓に向かった。田中先生の隣に立つ。

 なんか、教室の中がときめいてる。

 男の子たちは、じーっとだまってほだかくんを見つめていて、気まずいけど。

「じゃあ、自己紹介をどうぞ」

「鈴森ほだかです。つい最近この街に引っこしてきました。部活は吹奏楽部に入ろうと思ってます。よろしく」

 しっかりと胸を張って、堂々とした声で、ほだかくんは自己紹介する。

「よろしくぅ。ってか、吹奏楽部はもう入部したでしょ! 吹奏楽部で長く顧問やってるけど、入学式で入部届を持ってくるなんてあなたが初めて」

 田中先生に言われて、へー、と教室に声がひびく。ほだかくん、照れたように苦笑いをうかべている。

「楽器は?」

 教室のだれかが聞いた。

「トランペットです。小学生からやってきました」

「すごーい」「おしゃれ」「聞いてみたい」

「あと、初等部に妹がいます。もし会ったらやさしくしてください」

「妹いるんだ。会ってみたいなー」

 なんかほだかくん、話すたびに女の子からの好感度が上がっている気がする。

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