手をつないだ兄妹 5

 そして、私たちは職員室についた。

「失礼します」

 ドアを開けて、私は職員室に声をひびかせる。

「あら、七川さん。どうしてこっちに?」

 すぐそばの女の先生が声をかけてくる。宮原ひかり先生といって、私が5年生のとき――りっかちゃんが事故に巻きこまれたとき――に担任だった人だ。

「転校生に通学している途中で会ったので、ここまで案内しました」

「転校生、ひょっとしてあなたたち?」

 宮原先生が、鈴森兄妹に目を向ける。

「おはようございます。鈴森あいの兄、鈴森ほだかです。今日からよろしくお願いします」

「おねがいします」

 ほだかくんとあいちゃん、いっしょにおじぎしている。

「ああ、鈴森さん。初めまして。担任の宮原です。でもいいお兄さんね。ここまでいっしょに来てあげるなんて」

 宮原先生があいちゃんの担任なんだ。だったら安心だな。

 りっかちゃんがいなくなって、学校でもわんわん泣いていた私を、そっとなぐさめてくれたから。

「七川さんが案内してくれたので助かりました」

「七川さんもありがとう。本当に年下にやさしい」

 宮原先生にほめられると、他の先生にほめられるよりもうれしくなる。

「いえいえ、ここまでいっしょに来ただけですから」

「じゃあ、鈴森さんは職員室でまってて。朝の会になったら私といっしょに教室に行きましょう。新しい友だちもよろこんでくれるわ」

「じゃあな、あい。みんなとなかよくするんだぞ」

「うん、いってきます。音美姉さんもまたね」

 あいちゃんは両手をふった。

 私とほだかくんは、そのまま初等部の校舎を出る。

「すっかり上機嫌だったな。ありがと、ここまで」

 ほだかくんがお礼を言ってくる。

「いいの。私もあいちゃんみたいな子、友だちにほしかったし」

「でもびっくりだよ。あいつにいきなり友だちができるなんてな。明日からもいっしょに学校行こうって感じになったけど、いいの?」

「もちろん。そっちもそれでいい?」

「あいと仲良くしてくれる人は大歓迎だよ。じゃあよろしく」

 ほだかくん、うれしそう。

「鈴森くんって、妹思いだね。私の同級生も妹がいる男の子はいるけど、たいていケンカばっかりで仲悪いのに」

「親がいそがしい人だから、オレがかまってやらないとさみしがるんだよ」

「でも、うらやましい」

「そいつはどうも。じゃあオレ、先に行くから。職員室は玄関の近くだな。本当にありがとう」

「えっ、いっしょに行かないの?」

「……ふたりきりだとみんなにうたがわれるよ? 付き合ってるって」

「ひゃっ!」

 ほだかくんがいきなり付き合ってるなんて言うから、変な声が出ちゃったよ。

「じゃあな。よーし行くぞ。入部第1号はいただきだ」

 ほだかくんは中等部校舎に走っていく。あっという間に、私は置いていかれた。

 ――明るい子だな。

 あいちゃんに好かれるのも、ちょっとわかる気がする。

 けど……

 ほだかくんって、クラス何組だっけ? 聞くのを忘れていた。でも、もうほだかくんとはだいぶ距離があいている。

 まあ、いいか。また会えるし。

 と思ったら、ほだかくんが急に足を止めた。こっちをふりかえって、もどってくる。

 ど、どうしたんだろ?

「あの、七川、もっと大事なこと聞くのわすれてた」

 ほだかくん、ちょっとほっぺを赤くしながら言う。

「C組の教室って、どこだっけ? 何階?」

 あっ……

「鈴森くん、C組なんだ」

「そうだけど」

「私もC組」

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