手をつないだ兄妹 4

「お兄ちゃんはね、トランペットが得意なんだよ」

 あいちゃんがじまんげに言ってくる。

「楽器、小学校からやってるの?」

「まあ、親の影響でだけど」

 ほだかくん、私とそっくりだな。私は、11歳の誕生日がきっかけでやめさせられたけど。

「ねえお兄ちゃん、今度聞かせたら」

 あいちゃんが目をかがやかせている。よっぽど、ほだかくんのトランペットが好きなんだろうな。

「こら、そこまで言ったら七川が困るだろ」

「えー、カンドーするのに。ゼッタイ。もったいぶってるの?」

 あいちゃんが口をとがらせる。

「そんなんじゃないって」

「あいちゃんがそこまで言うなら、私も聞いてみたいな」

 あいちゃんは、私にぱっと笑顔を向けた。

「でしょ、楽しみにしててね」

「まったく、しょうがないなー。で、七川はどうするの? 部活」

 お母さんが入部届をやぶったときの音が、私の頭の中でひびく。

「私、まだ決めてないんだ。だから鈴森くんがすごいよ。もう部活決めるなんて」

「まあ、中学入ったら吹奏楽部って決めてたから。そんなあせることじゃないし、ゆっくり決めたらいいよ」

 ほだかはそう言って、入部届をかばんの中にしまった。

 そうして、私たち3人は、まず初等部校舎の玄関に向かった。玄関の上にはでかでかと「にゅうがくおめでとう」という文字がならんでいて、かべのいろんなところがカラフルなペーパーフラワーでかざられている。

 そこに、初等部の制服を着た子たちがどんどん入っていく。

「あ、七川のお姉ちゃんだ」

 初等部の子は、私に気づくとすぐに笑顔を向けてくる。

「おはよう、ななちゃん。今日もかわいいね」

「4年生になったよ」

「おめでとう! すっかり大きくなったね」

「卒業したのにどうしてこっち来たの?」

「転校生がいるから、職員室まで案内してるの。新しい友だちだよ」

「音美姉ちゃん、また遊んでくれる?」

「もちろん」

「おっ、七川だ。もう1年小学生するんだ。何やらかしたんだ?」

「こら、ぜんぜん違う!」

 いろんな子に声をかけられるたびに、私は笑顔を(最後のはおこったけど)かえす。

「へー、七川って、好かれてるんだな」

「人気者だ……」

 ほだかとあいちゃん、目をまんまるにしている。

「まあね。私もここの子たちが好きだよ。あ、職員室はこっち」

 私はうわばきにはきかえて、ほだかとあいちゃんを案内していく。

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