第3話 ゴルディロックスゾーンの地球

 地球は最初から人類が住める環境になかった。太陽が誕生してから、太陽系の惑星の位置が安定するまで、惑星は衝突と合体を繰り返した。そして、惑星移動の中で凄まじい破壊の連鎖の真っただ中を、地球は生き延びて来た。


 系外惑星がハビタブルゾーンに位置しているからといって、人類が生存できるとは限らない。ハビタブルゾーンとは地球と似た生命が存在可能な領域。地球に生物が存在できるのも、空気や水があり磁場があるから。

 しかし、系外惑星を探してみても、生物が存在できる丁度いい位置に惑星が見つかってはいない。『三匹の熊』の童話の例えを借りてゴルディロックスゾーンと名付けられた原理はゴルディロックスという名前の少女が三種のお粥を味見して、熱過ぎても冷た過ぎても嫌で、丁度いい温度のものを選ぶというもの。


 太陽系でも金星では熱過ぎるし、天王星では冷た過ぎて住めないし、地球は丁度いい位置にある。しかし、恒星から近過ぎず遠過ぎないハビタブルゾーンに位置する系外惑星があったとしても、恒星にもいろいろな種類がある。太陽のような単独の星もあれば連星もある。連星は半分以上あるとされている。太陽はGタイプ恒星で表面温度が5300~6000Kで、表面温度が6000~7500KがFタイプ恒星、表面温度が29000~60000KがOタイプ恒星、宇宙で4分の3と多い赤色矮星の表面温度は4000K以下と低温で小さく非常に光が弱い恒星、極超巨星は質量が太陽の100倍以上で寿命は理論上100万から200万年と短い。


 最大の問題は、高度な望遠鏡で系外惑星を発見しても、今日の技術ではそこまで到達できる宇宙船を設計できないということ。また、その系外惑星の確実な実態調査ができる高度技術はまだない。


 超新星爆発が地球から約1万5000光年離れたウォルフ・ライエ星「WR 124」で捉えられている。もし地球の近くで起こっていたら、地球は一溜まりもない。地球はまだ高みの見物でしか現実を見ていない。近くで恒星の消滅、恒星の赤色巨星化、フレア、潮汐固定、超新星爆発、パルサー、クエーサー、ブラックホールの衝突、銀河の衝突など天体ショーでしか捉えていない。最悪な現実も想定外で片付けている。



 太陽は、約46億年前に低温のガスや塵が集まった分子雲の中で誕生した。物質が特に濃い一部で重力による収縮が起こり形成された。残りは扁平な原始惑星系円盤を形成して、ここから惑星・衛星・小惑星やその他の太陽系小天体等ができた。


 まず宇宙塵が太陽の周囲の軌道を回り始め、次々に衝突と合体を繰り返して微惑星という塊を作る。太陽の近くでは、水やメタン等の揮発性の分子が凝縮するには温度が高すぎるため、金属(鉄・ニッケル・アルミニウムなど)やケイ酸塩などの融点の高い物質が微惑星を形成し、岩石質の惑星になった。その後、後期重爆撃により岩石惑星はより大きくなれた。しかし、火星だけは大きくなれなかったのは、高みの見物というより巨大ガス惑星の木星に爆撃の破片を食べられ、お預け状態だったから。太陽系の中で地球の位置は丁度よく、他の惑星とは違う奇跡の道をたどった。


 しかし、系外惑星系は原始惑星円盤から誕生する所は同じでも、その後の道は違っていた。恒星のゆりかごの分子雲の中で連星が生まれ、その熱が水素や水といった軽い物質を吹き飛ばして、数キロ離れた所に水素や凍った水の豊富な領域ができ、それが結び付き巨大なガス惑星が誕生し、原始惑星系円盤との相互作用で中心に引き寄せられる。やがて恒星のすぐ近くを回ることで、それがホットジュピターになる。そして、岩石惑星を丸飲みすることもあり、重力により岩石惑星同士を衝突させることもある。また、近付いた惑星が系外へ放り出されたりする。ホットジュピターの通って来た道は残骸ばかり。ハビタブルゾーンに岩石惑星がないのはこのせいだった。


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