第2話 1万年の権利

 我々は地底に住む技術を研究してきました。それは地球移住を最優先で考えたからです。地球にはもう直ぐ氷期が来ます。我々が地上で氷期をやり過ごす方法を知っていてもそれは、独裁政権や専制国家、覇権国家、軍事国家などが戦争を仕掛けて来るので、いま直ぐ地球人とは和平交渉をすることはできません。今の人類世界には、永久に平和は望められないからです。


 知的生命体でありながら、平和が訪れないまま氷期に突入するのですから堪ったものではありません。まずは、我々だけでセミのように地底人として地下に潜み10万年後を見据えて活動しましょう。戦争のない平和な世界なら、氷室期の氷河時代でも白亜紀のような温室期でも陸上で過ごせるはずです。いつ氷期が訪れるかはまだわかりません。いつ来てもおかしくないことは確かです。


「地球人だって文明を持ったのが1万年足らずでしょ」


「我々が1万年住んだら、そのまま地球に住む権利はありますよね」


「まずは、地下に1万人の都市を築きましょう」


「地球人が地下シェルターで暮らしている間に氷期の中の大災害からは、78億の人類を救えないでしょう」


「超大国でも10万年を考えると、100万人は難しいでしょう。最初から1万人に絞られるでしょうね」


「次第に人口が減る道を選ぶのならいいのですが、自給率を是正しないまま食料不足になるのは残酷ですね」


「ただ、政府から離れて計画を立てて人類を繋ぐグループはいるかもしれませんね」


「我々と同じ戦争というような野蛮な考え持たない人類なら、地球で共生できますね」


「そうでない人類は、氷期や地磁気逆転に耐えられないでしょうから、生き残ることは無理だと思います。地磁気逆転により磁場が弱まれば、銀河宇宙線や太陽フレアにさらされるのは間違いありません」



 太陽系しか知らない地球人は、系外惑星の中に知的生命体が存在していると思い、宇宙人の存在を夢見てきました。しかし、望遠鏡や探査機などで調べたデータで解き明かした結果は、破壊的な宇宙の実態でしかなかったのです。つまり、地球のような奇跡の惑星は見付けられないでいます。いくら地球から逃げ出したくなる現実があっても、大国でも国民に知らせることができないのです。


 人類の思考は、止まっています。解決策を戦争しか考えられない人類の限界なのでしょうか。セミは7年間土の中で幼虫として過ごして後、1週間ほど地上で成虫になって子孫を残し寿命が尽きます。種類や環境によって違いますが、長いセミは10年間土の中で過ごします。短いセミは、3~4年で地上に出て羽化し成虫になるのです。

 セミは、夏にオスとメスが出会って交尾して卵を産みます。木の幹や皮に産み付けられた卵は、そのまま冬を越します。翌年の梅雨どきになると、卵は孵化して幼虫になり木の幹から地面に落ちて、そのまま土の中に潜り込みます。幼虫は、木の根からわずかな栄養を吸い、成長していきます。そして、長い期間を経て土から出て2~3時間くらいかけ羽化するのです。羽化を終えて成虫になると、樹液を求めて飛び大きな声で鳴いてメスを呼び寄せます。オスとメスが出会い産卵を終え、成虫になって1週間ほどで寿命が尽きます。環境さえ整えば1ヵ月くらい生きられるようです。

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