第8話 ネズミ狩り

 今回は、大掛かりな企業の管理下にない市街地でラッティング――NPC狩りをすることにした。

 NPCはいくらキルしても、弾薬が減る以外の危険がない。自分が死なないように気を付けるだけだ。

 まあ、プレイヤーが居るようなら状況次第で(つまりは九〇%近いくらいの確率で)キルするから、スカベンジャー(屍肉しにく・残骸漁り)と呼んだほうがいいのかな? 実態は変わらないけどね。

 僕の武器は半自動型セミオート狙撃銃をメインに持ち、背中にはサブマシンガン。ホルスターには大口径マグナムのオートマチック・ハンドガン。

 所持ナナイトは、弾薬生成に困らない程度。安上がりの気軽な日常・WEDだ。

 ずいぶんと広い通りに来てしまったので、敵の狙撃が危険かと思った。どこからでも攻撃を受ける可能性があり、どこから攻撃を受けているのかがわからない場所ポジション状況シチュエーションは危険すぎる。

 廃墟ビルに入り、上がっていく。

 軍用の服や、ボディアーマーなどが目に入る。

 僕は狙撃態勢に入り、徘徊はいかいして一瞬立ち止まったNPC兵士の頭を撃ち抜く。狙撃仕様の七.六二ミリ弾の銃声は、サプレッサーに吸収された。プシュッとな。

 生き残りのNPCが警戒して、動きがやや素早くなるが、胴体などに弾を当てて全滅させた。

 プレイヤーや見逃しているかもしれないNPCを警戒しつつ、ビルを下っていく。

 持つ武器をサブマシンガンに切り替え、降り終わる前後はできるだけ警戒。

 開けた通りでキルしてしまった。ナナイトの回収がやや危険だが、死体をおとりにするのも面倒だ。

 近付いていく。沈黙を破り、自分の横を低初速の弾丸が何発も通っていく。

 サブマシンガンの連射だ。動きが明らかにNPCじゃないね。

 たまたま居合わせただけの同業者か、組織ぐるみでやっている勝手な縄張り持ちか。

 VCの類はやらないので知ったことではないが、応戦開始。胸や腹を狙って高初速の五.七ミリファイブ・セブンサブマシンガンを発砲し、当てる。この弾頭は、より口径の大きな九ミリ弾や四五口径のピストル弾よりは、ストッピングパワー(衝撃による足止め力)の面で劣るものの、ボディアーマーを貫きやすい弾種だ。

 頭部にヒット。プレイヤー、ワンキル。

 警戒しつつ、隠れていく。曲がり角に完全に身を隠せる直前で、追加の銃声がコンクリート・ジャングルに響いた。既に付近に着弾もしている。

「仕方がないな」

 弾薬費と交戦時間が無駄になるが、発砲音からして大口径の狙撃弾のようで、今は敵の位置もわからない。

 不利を悟るものの、相手だって自分がキルした残骸は漁りたいはずで、近付いてくる可能性は大きい。

 曲がり角の先には、ビルの屋上へと通じている階段があった。

 上がっていく。屋上から少し頭を出すが敵は確認できず。平らな屋上ではないので、身を隠しつつ探る。

 セミオート狙撃銃を構え、索敵する。路上を歩くプレイヤーを二人発見。

 長物とサブマシンガンを持っている。前者はマークスマン・ライフルだ。

 マークスマンが気が付く前に、狙撃。頭を狙うのは大変だったが。こちらが撤退したとでも思い込んでいたのか、直線的な動きになっていて楽にキルが取れた。

 慌てて探そうとする相手の腹にも弾をヒットさせる。

 乱射される弾丸が、こちらの横を掠める。位置がバレたらしい。無視してとどめを刺した。無傷だが、少しは肝が冷えた、かもね。

 これ以上仲間が居て、呼ばれたようなら厄介だ。周囲を睥睨へいげいして、大きく回り道をしてから残骸を回収。

 ナナイトに変換後、上空に打ち上げてGゴールドを貰った。

 少量の打ち上げだと手数料的なナナイトの消費量がきついものの、そもそも自分のプレイスタイルはあまりお金を必要としないから、これで良い。

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