第5話 拠点制圧

 氷雪の森林を灼熱の荒野に変えていく、というのは大げさだが、航空機による地上支援の空爆でナパームが燃えていた。

 オレンジ色の炎が、敵兵を焼き焦がし、酸欠状態を引き起していく。

 増粘剤ぞうねんざいによってゲル(ゼリー)状になったベットベトの炎が身体に張り付けば、鎮火はまず起きない。

 火からは離れつつ、進軍を続ける。

 『上』から指示というか、命令が来た。どうやら友軍が拠点の一つである兵器生成プラントを見つけたらしい。破壊すべき、兵器工場だ。

 首尾よく破壊ができれば、現場の兵士が残骸をナナイトに変えてけっこうな現地収入が期待できる。場合によっては残骸の管理権は司令部が握るが、知ったことか。この混戦だし。どさくさに紛れてナナイトを回収・打ち上げないほうがおかしい。

 上空からガトリング砲の、鈍い発射音が聞こえる。発射レートが早すぎ、一つ繋がりになって聞こえてくる。友軍の対地攻撃機の制圧作戦だ。

 マップ機能でも確認したが、進行方向の先に砲火が集中している。ここが襲撃ポイントとなっている。

 攻撃機が帰投していくのを確認してから、敵兵器生成プラントに近付いていく。

 敵兵は撤退し、プラントの放棄を決めたようだ。砲弾が雨あられと降ってきた。

 榴弾砲りゅうだんほうの類だろう。大型の砲弾を地表から打ち上げて、自由落下させ、広範囲を殺傷する陸上兵器だ。

 ナナイトが欲しいが、そうやって進んだ友軍が粉砕されていく。

 足止めを喰らったわけだ。

 目的は果たしたわけだが、そこまで美味しいものではない。

 これ以上の継戦は割に合わないので、僕は自分の持つナイフを身体に突き刺す。

 ナイフに塗布されたナノマシン、体内のナノマシンに即座に反応する猛毒が、僕のアバター――肉体を速やかに死に至らしめる。

 傭兵契約は、終了だ。

 一デス、二桁キルは行っていると良いな。

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