第四十三話 『精霊魔導師の分析 Ⅲ アフェクオルキッソside視点』
「して、どう動きますかな?」
「周りのを一気にやるのなら私の精霊魔法で燃やせる。」
範囲を狭めるなら
「オルキッソ、内部まで貫通はさせれる?」
内部まで貫通となると水の精霊による超高圧縮の刃、地の精霊による床を変形させて隆起させて高速射出する地の槍などが頭に思い浮かぶ。
だが、それらはすべて相手が動いてないのであれば必中に近いだけであり、動き続けてる相手となると格段に精度は低くなる。
「可能、けど精度は低い。」
「じゃあ、伝導させたら確実?」
伝導、熱伝導のことだろうか、いや確か特殊な金属と風の精霊による精製ならば可能性は十分ある!
確実にやる為に
途端に水の精霊が動き出す!
相変わらずの豪腕と力の凄まじい精霊の攻撃と熱波で肌が焼ける、油のような臭いもしている。
その中でもカリスは舞い踊る動きを止めずに水の精霊の攻撃を誘い続けてる、なんとも無茶なことを!
一度でも当たれば死ぬのは確実だ、後で叱るべきか?
思わず前に出そうになるが、カリスは目の前の精霊から目を離さずに此方に攻撃が来ないように立ち回ってるのを見て踏みとどまる。
なら信じるしかない、石突で床を2度叩き詠唱し始める。
カリスが水の精霊の股を潜りながら脚を斬り払い姿勢を崩させるのと同時にイグニがスタッフを叩きつけて上空から水の精霊の中央に向かって投げて地面に縫い付けた。
それに合わせて詠唱も完成させて風の精霊の力で雷の槍をそのスタッフに向けて落として一気に伝導させスタッフを加熱させる。
それによってバランスが崩れ一気に崩壊する。
精霊の全身が膨れ上がり爆発する、予想以上!!
私はなんとか離れていたから良かったけど2人は近づいていたから直撃は免れないはず、防壁は間に合わないか。
スライム達も炎を浴びて苦しんで強酸を撒き散らしている。
あの死体に至っては更にボロボロになって血が溢れているけれど。
どうするか思案してるとカリスに壁を作って欲しいと指示をされる。
竜人にも竜の吐息を使うように指示もしていたので察した。
あの老人のアンデッドは身を固めてるようなので無視する事にした。
そう思考してるとカリスが一気にスライム達が集まる中に躍り出た!
思わず雑嚢袋内のルーンに手が伸びそうになるが堪えて床を叩く。
「《
脳内でスライムの周囲を取り囲み包む謂わば逃げ場のない竈をイメージして地の精霊に命ずる。
カリスが下がると同時にスライムの攻撃を弾きだし、一部の穴だけを残した。
すかさずイグニが駆け寄り胸を大きく膨らませ口から赤い炎の吐息をその一部に向かって吐き出すと嫌な音が響く。
よし、このスライムは終わった、まだ他にも古代魔法のスライムはいるから多少はいいだろう。
向こうでは老人のアンデッドが錫杖取り落としそうになりながらも呟いている。
……少し試すか
「滅する?またあの精霊を出されたら危ないわよ」
「アンデッドであるのならば火葬をした方がよいと思いますが?」
「いや」
「カリス殿?」
「あの精霊もスライムもあの老人……先代国王のものじゃない、あの錫杖が原因だからあれを壊せばいい。」
「国王?何でこんなところにいるのかしら。いえ、何故国王?」
「父から聞いた数百年前の話。」
数百年前、そういえばここにいたダークエルフが出て行ったのも数百年前、話は聞いていてもおかしくは……ん、あれ?
何故なのか聞けばカリスもアンデッドへの違和感と異常に気づいてはいたようだ。
前提となる知識が違うのだろうが、知ってるというのも中々に興味深い。
カリスの目は相変わらず何かを視ている、まるでどこか何もないところを見る黒い子猫だ。
ルーンに触れて杖を横にして弓をつがえるように構えると同時にカリスが飛び出し、錫杖に向かって放たれた斬撃が弾き飛ばされた!
「《飛翔せよ、不可視の矢!》」
呟くように
これで大人しく……あ
息を吐いて見れば竜人が錫杖事床を叩き割っていた、やりすぎ!!!!
竜人に色々と突っ込んでカケラを拾い集める事にした。
不服だがカリスの言ったことは事実のようなので任せる事にした。
その際色々と衝撃的な事を知ったが、カリスが触れると老人のアンデッドは心安らかに白い光に包まれて消えていく。
破片を袋の中に詰め込んだ後あの冒険者がくるのが見えた。
カリスに向かってデルヴがどうのこうのと……私の前でよく言えるなこの人間。
途端に戦闘が始まったのでそっと離れる、その際に竜人が入ろうとしていたが貴方がやったら確実に粉微塵になるからやめろという意味も含めて制止した。
しかしながら、カリスの動きは先ほども見たがまるで祈祷を捧げるかのように舞い踊るように相手を翻弄してる。
更にはあの冒険者が何か苦痛に顔を歪め憎悪に満ちた表情で睨んでいた。
……私には何が起こってるのかわからないけど何かが見えてる?まさか
「竜人、貴方はアレが何かされてるのが見える?」
「いえ、やたら大袈裟に騒ぐなとは……」
「……最初にカリスと出会った時、どんな姿だった?」
「む?それは」
「答えて」
「……あの時はぶつかってしまったのもありますが、ダークエルフそのものでしたな。フードを目深に被っておられましたが」
「……そういうことね。」
思い出した、ダークエルフ特有の魔法を、ただそれが魔法のひとつだと誰もが気づかないだけだ。
カリスのあの動きは全てダークエルフの月の女神の祈祷をする為の剣舞の基礎的な動きだ。
ダークエルフ達はその舞で感情表現や神への感謝も何もかも表したり時には敵対者にとって不都合な物を見せる事が多い。
10年間、その基礎的な部分だけをずっとしていたのだろう、おそらくあの冒険者にとっては見たくないものが見えているはずだ。
あくまでも基礎なのでまだ不安定なようだ。
気付いたらもう決着はついたようだ。
カリスが長剣を突き付けて問い詰めている。
「ひぃいいっ!!」
「もう一度聞こうか、どこに、いる?」
「ひ、お、お前に言うわけないだろ!!」
「じゃあお前の死体を持ち帰って、聞くとしよう。」
確かに死体から聞くやつはあるけど専門家じゃないと……
冒険者が怯えて後退りをして手に当たった巻物を広げて消えた。
……あれは、古代魔法の緊急転移の巻物?なんで
私は即座に冒険者の道具をかき集めることにした、調べ上げなくてはならない。
他にも沢山の謎が私の前に開示されている。
カリスが来てから突如として動き出した、ならばカリスと共にいれば解明出来るかもしれない。
……それに、放って置けない、父の言葉に従おう。共にいこう
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