第三十九話 『誓約の神殿:戦闘』

炎の精霊と追加で出現したスライム……うち1人はあの元主人のファトゥスの仲間が取り込まれてるけど……に囲まれている。

その後ろには老人のアンデッド、レヴナントがいるのが見えるが、やはりスライム達も召喚する際にあの錫杖から黒い悪意の渦が出現してそこから出現したのが見えた、あれが媒体だろうがそのまえに、目の前のこれをなんとかする方が先だ。

「して、どう動きますかな?」

「周りのを一気にやるのなら私の精霊魔法で燃やせる。」

範囲を狭めるなら呪文限定化スペルズリミテッドが必要だけど、とオルキッソは付け加えた。

それもひとつの手だけど、確認したいことがある。

「オルキッソ、内部まで貫通はさせれる?」

「可能、けど精度は低い。」

「じゃあ、伝導させたら確実?」

「……そういう事、ええ。」

オルキッソは力ある魔法の言葉フサルクを唱え、銅色のスタッフを生成する。

「む?これは」

「それを刺しなさい、深く。」

イグニは投げ渡されたスタッフを軽々と振り回し構える。

「ふむ、何をするかがわかりませぬがよいでしょう」

「くるよ!」

炎の精霊サラマンダー……いや水の精霊ウンディーネが大きく身体を震わせ、身体を抱き抱えるようにすると膨れ上がり全身から火球が吐き出される!

燃える水の火球を回避し、避けきれない分を長剣で受けると飛び散り神官服が溶けて穴が空いた。

ジュ、という音と共に肌が焼けるのを感じる。

あげそうになる声を何とか抑え、構え直す。

ジクジクと皮膚が焼ける激痛が走る、次はどんな事をしてくるかわかったものではない。

「カリス殿!」

「だ、いじょうぶ!」

イグニを見れば肌は焼けてない、流石は竜人と言ったところか。

オルキッソは何とか避け切ったようだ。

無事なのを確認して前へと出る。

「引きつける!」

水の精霊に向かって踏み込み振り下ろされる拳を掻い潜る。

後ろで爆発音と衝撃波が起こりそれによって後押しされながら刃を寝かせ、太い脚の片方を大きく横薙ぎに斬り払う!

後ろで重いものが落ちる音が聞こえた、片脚を一時的にでも斬り落とされた事で不安定になったのだろう、だがすぐに回復されるのは間違いない。

水の精霊を掻い潜った先はスライムの大群だ、アフマクという死者もいるけど。

「ぬんっ!!」

背後を横目で見るとちょうどイグニがスタッフを水の精霊の頭に叩きつけてその反動を利用して高く飛び上がった所だ。

「これでも食いなされ!!」

そのスタッフの先端を持ち投げると狙い違わず水の精霊の中央部を刺し貫き床に縫い止める!

水の精霊は声なき声をあげ逃れようとするが不安定になったのもあり動くのに時間がかかるようだ。

出来た時間を逃さないのはオルキッソの精霊魔法だ。

杖の石突で床を何度か叩き詠唱するオルキッソの足元に緑色の魔法陣が展開された。

「《風の精霊シルフよ寄り添い集まりて、雷の槍を降らしたまえ!》召喚:雷の槍コールサンダラス!」

もがく水の精霊の上に黒雲が形成されると同時に銅色のスタッフに降り注ぐ!

炎の鎧を貫いて中央部まで銅色のスタッフが一気に赤熱化する。

水の精霊は激しく苦しみ悶え暴れながら全身が水と炎が入り混じり大きく膨れ上がり仕舞いには爆発する!

「ぬおっ!!」

「うわっ!」

予想以上の爆発と共に燃える水が撒き散らされるのを見て何とか回避する。

2人は遠くにいたから巻き込まれなかったようだけど、僕は近くにいたから危なかったけど、成功したからいいか。

スライム達は燃える水を浴びてしまったからか悶え苦しむように全身を蠢かせ強酸を撒き散らす。

「よし、片付けた。後はあのアンデッドだけね。」

「うん、その前にスライムと……あの擬態してるスライムも倒そう。」

オルキッソの目はスライム達を通り越して老人のアンデッドの方を見てる。

僕としてはアフマクをここで始末しておきたい。

けど、この数を相手取るには手が足りない。

とすると、考えられるのは……よし

「壁、作れない?」

「壁?」

「イグニ、壁を作ったらそれでブレスをして丸焼きにして。」

「なるほど、でしたら適任でしょう。」

イグニの竜の吐息ドラゴンブレスを活かすには狭い場所の方が有利であると推測して手短に伝えるとイグニは理解して獰猛な笑みを浮かべる。

オルキッソもそういう事か、とまた床を杖で叩く。

『《此れ成るは神の聖域、我が身を護りたまえ》聖域サンクチュアリ

老人のアンデッドは危険を察したのか身を守る魔法を唱えたようだ。

あの錫杖からは反応はない、とするとあの老人のアンデッド自身のものだろう。

「引きつける、あとはお願い。」

2人に手で合図してスライム達の間へ舞い降りる。

スライム達の触腕を軽やかにギリギリで避ける。

既に一度見た動きだ、そしてこの密集地帯となってるなら互いの身体が邪魔になってろくな攻撃はできないだろう。

アフマクはその腕を振るって掴み掛かろうとする。

長剣を閃かせ、その腕を両断する!

断面からは血の代わりに赤黒く染まったスライムが流出するが、骨も零れ落ちる。

どうやらまだ消化の途中だったようだ、どうりでスライムが中で蠢いてるのに形を保ってると思った。

という事は骨も食べてる最中だったのか、脳とかはまだ残って……なさそうだ。

だって、アフマクだったものの眼窩はもう何もないのに白いスライムが覗いてるから。

水の精霊の燃える水で赤熱した刃で首を断ち切ると、焼け焦げる匂いをさせながらそのまま床へと落ちるのを見届けてから離れる。

「《地の精霊ノームよ、土壁を築き上げ囲いたまえ》召喚:土の宮コールノームルム

僕を攻撃しようと集まったスライム達の周りに瞬時に土色の壁が迫り上がり、一部を残して閉じ込めた。

すかさずイグニが駆け寄り胸を大きく膨らませ口から赤い炎の吐息をその一部に向かって吐き出す!

一部の穴へ吹き込まれた竜の吐息ドラゴンブレスによってスライム達はもがき苦しむ。

スライム達は土壁を壊そうと足掻くが中で連続で破裂音が響き、消滅していくのが見えた。

さて、あとは……

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