第三十七話 『誓約の神殿:弱点を見つけろ』
黒い悪意の渦に覆われた精霊の腕が振り下ろされる。
全員大きく下がって攻撃を回避するが着弾すると同時に爆発して熱波が広がり、熱を浴びせられる。
「一度でも当たったら燃えそうですな!」
「あっつい!!イグニは平気でも僕は平気じゃないから!」
「……何が混じってる、本来ならああやっていう事を聞くはずはない。」
「どう言うこと?」
「基本的に精霊は大自然そのもの、命じられてやると言うのは何かが混じってるとしか思えない。」
つまりは大自然の化身でもある精霊を行使する事は通常はできないと言う事だろうか。
「どうやって言うこと聞かせたりしてるとかわかる?」
「基本的に嘆願や召喚してその契約に応じた行動をさせることが多い、けどアレは何かが違う。」
「ううむ、ではあの術者を倒せば良いのですな?」
「おそらくは」
「では、吾が行きましょうぞ」
イグニは素早く踏み込み老人のアンデッドに向かおうとする
だが精霊の拳がイグニの行先を塞ぐように振るわれる!
「ぬぅ!!」
イグニの拳と精霊の拳がぶつかり合い轟音が響く。
途端に爆発してイグニが吹き飛ばされ、元の場所に戻されてしまった。
「中々に厳しいですな」
「なら、これなら!」
オルキッソが杖の石突で床を何度か叩いて魔法陣を展開する。
「《大いなる水の精霊よ、厄災を沈め清める水をもたらしたまえ!》
炎の精霊の上空に魔法陣が展開されると同時に雨水が槍のように降り注いで上半身を貫き蒸気が発生して見えなくなっていく。
しかし、炎の勢いが増して、魔法陣に炎が纏わりつき燃え盛り打ち破られた。
「効いてない!?」
「炎が水を無効化に!?」
「来ますぞ!」
炎の精霊はその勢いのままその巨体に合わない速さで踏み込んできた!
炎を纏った拳が横薙ぎに振るわれる
「くっ、さらに速く!」
後ろに跳躍すると同時に鼻先を炎の腕が掠める。
もう片方の腕が振り下ろされるのを見て逡巡する。
横はダメだ、先ほどよりも強力ならばあの熱の衝撃波で吹き飛ばされる。
では後ろは?無駄に追い詰められるだけだ、だが懐に入れば炎の精霊が何故水が効かないかのその真実を理解するのに役にたつだろう。
そう判断して炎の精霊の拳が着弾すると同時に前方へと跳躍して衝撃波に飛ばされるが精霊の懐に飛び込んだ。
「これで!」
長剣を深く精霊の中心に向かって貫くと、何の抵抗もなく沈み込む。
高熱が剣を伝わり、刃が赤くなっていく。
柄が握りしめるのも辛くなるほどに熱くなり、手のひらが焼けるのを感じて離しそうになるが、歯を食いしばり我慢して剣を引き抜いた。
「(熱い!でも、あの人達の苦しみに比べたら、まだ戦える!)」
刺し貫いた傷痕を睨む、そこから溢れるのは僅かな水だった。
「(水?まさか)」
先ほどのオルキッソの魔法を受けても逆に活性化したのを考える。
ただの炎の精霊であるならば水の精霊の魔法によって幾らか沈静化は出来るはずだ、けれどオルキッソは何か混じってると言った。
『《来たれ、来たれ、聖域の守護者達》』
炎の精霊の隙間から見える老人のアンデッドは錫杖で床を数度叩いて唱える。
錫杖から黒い悪意の渦が広がると上の階層で見たあのスライムと人型生物が召喚された。
「新手!」
「中々にキツイですな……む?」
「えぇ……?」
思わず困惑した声を出してしまったのも無理はないと思う。
召喚されたのが女神官のアフマクの姿をしたスライムだったかりだ。
「……オルキッソ」
「擬態機能はない」
「だよね」
「とすると、あの術者に改造でもされたのでしょう。」
「厄介なのが増えた、今度は制限しない方がいいわね。」
この神殿や峡谷に1番詳しいオルキッソに思わず聞いたら即座に返される、それはそうだ。
あの老人のアンデッド自身がしてるようには見えない、というか何かしらの行動に全てあの錫杖を使用してるのが気になる。
炎の精霊を見て剣を見ると先端部分はそのままなのに後半部分は赤くなってる、熱は少しおさまってきたようで色は戻り始めていた。
という事は、本来の姿は……
「オルキッソ、
「水の精霊に!?そんな事したら反発して!」
「その反発を利用して自己強化魔法にしてるんだと思う!」
「なるほど、妙に手応えがないのもそのせいですな」
炎の精霊ならば熱を保たせるために何かしらの硬い部分は存在しているふず、だがそれは無いと言うのなら燃える水と呼ばれるものを水の精霊の核にして召喚したのだろう。
それならば魔法の力で自らを燃やしつつ水属性に対する防御は完璧になる。
だがそれはあまりにもデメリットが多い。
初見であれば対処ができないだろうがそれが知られたら一気に弱くなる!
「イグニ、ブレスは?」
「いけますとも」
「それは温存、あのスライム達に使う。」
「む?それは」
「話はあと、オルキッソ、あの精霊に他の魔法、いける?」
「いけるけど、何する気?」
「僕に任せて」
「……分かった、貴方に従うわ、指示を。」
そうして改めて構え直した。
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