第二十七話 『情報収集:手がかりを探して』

今現在 朝 主人公のカリス視点


さて、初めての依頼を受けたはいいけどどうやって調べようかと思案

今わかっているのは、この人の妻という人がいなくなったこと、オルシアが襲撃されて聖剣を奪われたことと加害者の見当がついてはいるけど、同一人物なのかということだ。

でも他にどうやって探そうか、そう悩んでいるとイグニが夫の吟遊詩人さんに聞いていた。

「ところでその妻という方も吟遊詩人の方だったのですかな?」

「そうだ、8年前から一緒に旅をしている。」

そういえば確か、あの人は8年前から一緒に旅をしていたと言っていた。

「そういえばどうして吟遊詩人さんは1人でいたんですか?」

そう聞くと言いにくそうにしていたが観念したように告げる

「……実は、妻が幼い頃に出会ったとか言うダークエルフなんていないと言ったら喧嘩になって……」

「なぜいないと?」

「俺が聞いているダークエルフはとにかく邪悪な存在で日の下を歩けないのもそのせいだと聞いていたからだ。」

「へぇ、それ、誰に、聞いたの?」

アフェクさんの圧が吟遊詩人さんにのしかかる。

……すごく、こわい。

「俺のいた故郷では幼いころからそう聞いてたんだ、だからそう怖い顔しないでくれ、俺が悪かった!」

男の吟遊詩人さんは慌てて付け加えて謝罪をした。

でもダークエルフの事なのにどうしてハイエルフであるアフェクさんが怒るのだろう?

僕はいつもあのファトゥスたちにそうやってやられていたから僕が怒るのはわかるけど……

「……聞くことはもうないわね、行くわよ」

「え、あ、ま、待って!」

足はやに立ち去るアフェクさんの後ろを何とかついていき神殿を出た。


神殿を出て広場まで来るとそれなりの人達がいる、吟遊詩人たちも集まっているようだ。

「アフェクさん、なんであんなに」

「私の父は」

「え?」

「私の父はダークエルフと共に前線で戦った事のあるハイエルフの魔導士ウィザードだった」

「……それで、ですか」

「父から聞いた、神代に置いて女神と共に地下世界へと赴き、戦い続ける事を決めた誇り高き闇の同胞ダークエルフだと、だから許せなかった。」

「……アフェクさんは父を、誇りに思ってるんですね」

「……ごめんなさいね、手がかりを探さなくてはならないのに、私のせいで」

「い、いえ、その……ダークエルフについて僕自身が知らなかった事、教えてくれて嬉しい、です」

「……アフェクオルキッソ」

「はい?」

「アフェクは略称、好きに呼びなさい」

「え、えっと、はい、じゃあ、オルキッソ、さん」

「呼び捨てでいい」

「はい、オルキッソ」

もしかしたらお詫びのつもりなのか、それとも少しは信頼してくれたのだろうか、後者だとしたら嬉しい。

「でも、深夜のあの人が同一人物だと分かったからそれだけでもいいよ。」

「会われたのですか?」

「この広場で会ったよ」

「何で深夜にここにいたの?」

「ちょっと、考え事……でも、あの人が何で襲われたんだろう?」

「さて、もしかしたら何かを目撃したのか或いは……」

「……僕が深夜にここで目撃したのはフードを被った2人が走っていく所だったけど、あの人に見えたかどうかは」

人間ヒューマンですと暗視がない分不利ですからな」

「人間でも魔法薬や魔法、恩恵によって暗視を獲得する場合があるけれど、それを持っていたとは思えないわね」

ううん、他に探すところといえばどうすべきか。

「ふむ、では今度は衛兵に聞くというのはどうでしょうか、深夜の事ではありますが多少は手がかりになるでしょう。」

「それなら衛兵の詰め所ね、行きましょう」

そうして衛兵の詰め所にたどり着いて覗き込んでみると門番の人と同じ格好をした人達がいた。

一日中あの格好してるのなら身体が痛くなりそうだなと思っていたけどここで休んでるのかな?

因みにアフェク……オルキッソが衛兵さんに事情を話して冒険者として話を聞かせてもらう事になったのだ。

暫くして衛兵隊長という人が来て恭しくオルキッソに礼をした。

「これはこれはハイエルフ殿、このようなところに何か御用との事ですが何を?」

「深夜に事件が起こったけどその時誰か広場にいた人は?」

「事件?申し訳ありませんが私どもにはどういう事か分かりかねますが、昨晩でしたらちょうど交代の時間だったと記憶しております。」

「2人組のフードを被った人物に心当たりはある?」

「2人組……お待ちを、お前たちの中で昨晩2人組を目撃した者はいるか!」

衛兵隊長が衛兵達に声を掛けるとその中の1人が返事をした。

「昨晩に西の門にて2人の男女が大きな荷物を持って出ていくのを確認しました!」

「荷物?」

「はい、聞いてみればこの荷物を急いで届けないといけないから深夜に出立するとの事で」

……あからさまに怪しい、けどオルキッソは続ける

「……本当に、西門から行ったのね?」

「ええ、こんな深夜に変わった依頼を受ける人がいるものだなと思いましたが、何かありましたか?」

「……そのどちらかが戻ってきたら捕縛する事を推奨するわ」

「は、何の罪で?何があったのですか?」

「殺人未遂、強盗その他諸々、でも決して悟られないで」

衛兵隊長もそれを聞いて眉を顰め、それを了承してくれた。

一度衛兵の詰め所を離れてオルキッソに先ほどのことを聞いて見る

「西門から行ったことを確認してたのは何でですか?」

「……本来ならもう少し時間をかけたかったけど仕方ない」

オルキッソは深く息を吐きながら続ける

「この西門から半日ほど行ったところに誓約の神殿がある峡谷があるの、一応途中に村もあるけど、あそこは閑散としているわ」

「誓約の……まさか」

「その2人組がオルシア殿を襲撃して聖剣を奪い、聖剣を持っているのを見咎められて吟遊詩人を襲い荷物に詰め込んだ、ということですかな」

「……でしょうね、でも準備はできる、人を運んでるのならかなり足は遅くなってる」

「……ふむ、その誓約の神殿に至る道は何が?」

「基本的にあそこは罠が多い、それは道中話すわ」

それより準備をしようということで僕達は合意した。

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