第二十五話 『策謀 Ⅰ 冒険者ファトゥスside視点』
カリスが依頼を受ける前日の昼 冒険者ファトゥス視点
何とか冒険者ギルドから逃げ出した俺は惨めな気分になりながらも宿屋へと駆け込んだ。
「報酬はどうでしたの?」
アフマクは暇そうにして問いかける、俺が言ったことはしっかりと守ったようだが、いきなりお金の話で嫌そうに答えてやった。
「いや、あの
「ちょっと、どうしますの!?」
「うっせえ!まだ2週間泊まれるくらいの余裕はある!」
だが、それを抜きにしても莫大な報酬を手にして他の地域へ半年ごとに逃げる計画が立てれなくなるのは痛い。
食糧や物資の補給もそうだが武器の方もそろそろ新調しなくてはならない。
あの
資金の余裕はまだあるがそれ以上にあの聖剣を奪取して俺が聖騎士であると証明しなくてはならない。
あの聖剣は俺のような高貴な血を引く貴族が所有してしかるべきものだ!
「あの欺瞞の騎士風情が言ってた誓いの神殿も探さないといけねえってのに」
「神殿、神殿、うううん」
「何か知ってるか?」
「……いえ、一応神殿に行ってみないとわかりませんわ」
「っち、あーくそ、闇市に行くしかねえか」
あの迷いの森の中の遺跡で
だが、泊まる余裕はあっても物資を全て全て揃えようと思うと簡単に飛んでしまう、莫大な報酬さえあれば可能だったがそれがない今、取れる手立てはふたつだ。
ひとつは実家の支援、だがそれをするにはおよそ数ヶ月はかかるだろうから現実的ではない、ならばもうひとつはどこにでもあるもぐりの、つまりは裏の闇市だ。
「大丈夫ですの?」
「もうそれしかねえだろ、安かろうが使えればいい」
「私あまり使いたくないですわ、雑すぎて扱いにくいですし」
「文句言うんじゃねえ。」
闇市であるため質はピンからキリまである、腐った食糧が多い時は
こんな時実家の屋敷にいた時のあの執事がいれば簡単だが……あいつはあいつで今どこにいるかわからねえからな。
「よし、なら行くぞ、お前は神殿について調べろ、酒場で集合だ」
「わかりましたわ」
闇市、沢山の怪しい
ここにももう半年にはなるが掘り出し物があればまだいいだろう。
「……ちっ、あまりいいのねえな」
魔道具や
「おい、魔導士のジジイがしてた店があったはずだが知らないか?」
「なんだあんた、あいつの知り合いか?」
別の魔導士の露店の店主に聞くと不思議そうに言った。
「ああ、あいつの店を探してたんだが、摘発でもされたか?」
怪訝そうにその魔導士の店主は知らないのか?と言う。
「あの魔導士なら今朝方引き上げたよ、何でも手を出してはならない奴に出した奴がいるって言ってたが知ってるんか?」
「……いや、知らないな」
魔導士の店主の疑惑に満ちた視線を背中に受けながらもその場を離れる。
まさかあの男、本当にこの街から逃げ出したのか、ただの子供のダークエルフに手を出したから何だと言うのだろうか?
そもそも邪神と契約して堕落して地下世界に逃げたそんな穢れた妖精を奴隷にして何が悪いのか。
むしろ地上世界のそれも高貴な俺の家で飼ってやったのだからむしろ感謝すべきではないのか?
誰かが俺を見ているような視線を感じながら安い食糧を買い集めて闇市を離れた。
「くそ、いい魔道具は無かったが、食糧はまあこんなものだろう。」
少し歩いた所で陽の当たる所に出ると大きな広場に出た。
そこには沢山の吟遊詩人たちが英雄譚を歌っており、沢山の人が集まっていた。
あの聖剣さえあれば俺の英雄譚のひとつとして語られるひとつのネタになっただろうに。
その後ろにあのギルドで俺に楯突いた
「あいつら、こんな所で何して、あの
人混みを探すとフードを目深に被った小柄な姿が女の吟遊詩人の前にいるのが見えた、顔は見えないがあの
だがここで手を出したらあの竜人が邪魔をするのは明白だろう。
そして吟遊詩人がリクエストを聞いてダークエルフの英雄譚というのが語られ始める。
「地上世界に出てきた
「ああくそ、俺の父の商売の邪魔をしやがって、地上世界の俺たちの為に犠牲になるのは当然だろうが」
ぶつぶつと呟きながらもその
「ファトゥス様、そちらはどうでしたの?」
「食糧は手に入れた、これからの事話すぞ」
「ええ、わかりましたわ。」
「気分が悪いなクソが」
数分してから酒場の扉を蹴破るようにしてアフマクと共に酒場へと入った。
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