第二十一話 『情報収集:誓約の神殿』

現在主人公視点


イグニと一時的に別れて魔法ギルドへ赴いた。

大きな杖が光を放つような記号が描かれている看板の立派な家がそれだった。

「大きな家だね」

「家じゃなくてギルドですカリス様」

「そうなの?」

多種多様の匂いが入り混じる大きな家、魔法ギルドは外観的には大きくも質素な印象を受ける。

冒険者ギルドは沢山の人達が出入りする関係から目を引くようや立派な建物だったのを見るとギルドによって違うのだろうか。

「都ならもっと大きく立派な本部のギルドがあるんですよ!」

「これ以上にもっと大きなギルド?」

これ以上に大きなギルドがある、他にどんなのがあるのだろう?知らない事ばかりで楽しい。

「村でカリス様に装備を作ってくれたドワーフさんも職人ギルド出身ですよ?」

「この装備、そうだったんだ。すごく軽くて動きやすいよこれ」

「言ったらきっと喜んでくれますよ!」

奴隷の枷から外された鎖で作られた板を差し込んだだけのやつだけどかなり軽くて動きやすい。

都や王国といった所は見た事ない、いや中に入った事ないといえばいいだろうか、全く知らないモノをもっと知りたい。

けど、それ以上にダークエルフとしての僕は異質だからそれ以上は望んではいけない。

きっと、みんなに迷惑をかけてしまうから。

中へ入ると沢山の書物と巻物が入った棚、ローブを着た魔導師の人間の職員が忙しそうにしている。

「あら、魔法ギルドにようこそ何か御用でしょうか?」

「えっと、誓約の神殿についてならここで聞くといいと言われたんですけど……」

「誓約の神殿?」

初めて聞いたという反応に不安を覚えるけど、すぐに思い至ったようだ。

「ああ、昔はよく使われたという昔の神殿ですね。」

「場所とか分かりますか?」

「神殿なら神官様の方がわかるのでは?」

僕たちの格好を見ていう職員さんは不思議そうにする。

「その、僕のこれは貰いものですので神官では……」

「私のは光の神様に仕える神殿の育ちなので他の神殿の事はあまり……」

「エルフ語知ってるから僕よりも沢山知識あると思ってたけど」

「神殿の座学では特に歴史は苦手ですけど言語は英雄譚を学ぶ為です。」

「そ、そうなんだ」

キッパリと言い切ったオルシアにある意味感心する。

でもこうして案内もしてくれるから助かるし、好きなものほど頑張れるの理解できた。

「そういう事でしたら、詳しい方はありますよ?」

「ほんとうですか?」

「ええ、今出ておられますが、あ」

「戻ったけどお客?」

声がしたほうに振り向くと長身痩躯の緑髪のエルフが立っていた。

「ええ、誓約の神殿の事で聞きたいそうです」

「あの神殿を……?」

訝しげにするエルフは僕の方を見ると僅かに目を開いたように見えたが、とにかく知れるのならと話しかけた。

「えっと、初めまして、誓約の神殿について知りたいならここに来ると良いと言われたのできました。」

「誰に?」

「えっと、吟遊詩人さんに」

「確かにいくつか言及している英雄譚はいくつかあるけれど……」

まさかそっちの方から誓約の神殿にたどり着くなんてと呟いたように聞こえた。

「あの?」

「……で、貴方達がなぜ誓約の神殿を探してるの?」

エルフのお姉さんは気を取り直して静かに問う。

「とある騎士にその神殿に行って誓いを立てろと言われたので」

「言われたから行くの?」

「え、はい」

「なんのために?」

「ぱ、聖騎士の誓いの為に」

「……だめね」

「え?」

「そもそも誓約の神殿は歴代の聖騎士達にとっての聖域、言われたからなるというのは許されない。」

「それは」

「第一、そうやって自分の正体を隠してなろうというその精神は許容できない」

目深に被ったフードにに手を差し込まれ金色の瞳が僕を覗き込んできて思わず目をそらしてしまう。

「いじわるを」

「事実を言ったまで」

オルシアが反論を言う前にピシャリと言い放つ。

「そもそも、冒険者になったばかりなのだから地固めくらいしなさい。」

「地固め……地面を……固め」

「そういう意味じゃない」

地固めと聞いて冒険者の依頼で地面を固めて通路にするとかあるのだろうか?と思ってたのが口に出てしまっていたようだ。

「なにも急ぐ必要はない、たとえその状態で行ってもあの峡谷は越えることはできない。」

「誓約の神殿ってそんな所にあるんですか?」

「ええ、Eランク以上の冒険者であるかあるいはそのランク以上の冒険者が付き添いであれば行くことは可能よ。」

それは、来たばかりである僕にとってはほぼ無理難題のものだ。

「でも、その」

「何から逃げてるの?」

そのセリフに思わず息をのむ。

「逃げたい、死にたくない、行きたい、そう思うのはいいけど、今の貴方はただ言われたからやるといった、そこに貴方はいない。」

「それは……」

「貴方を見つけなさい。」

「僕を、見つける?」

「誰に言われたでもなく、なぜそう思ったのか、なぜそうなりたいのか、貴方の背景オリジンを知りなさい」

「……よく、わからない」

「急にはわからなくていい、もし見つけてきたらその時は」

エルフの姉さんはふ、と柔らかくどこかで見たような笑みを浮かべた。

「父の友人の言葉に従って、このアフェク、貴方を導きましょう。」

エルフ……アフェクはそう言ってギルドの奥へと引っ込んでいった。

まさか、司祭様の友人って他にも……でも

僕はお辞儀をしてそのままオルシアと共に魔法ギルドを出た。

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