第十八話 『冒険者たちの洗礼?』

冒険者登録を無事に終えて最初の部屋に戻る。

やはり沢山の種族の人たちが多くて目を回しそうだ。

「では、さっそく依頼の方を見てみますかな?」

「えっと実はこの後英雄譚聴きに行こうかなと思って……」

「はい!案内いたしますよ!」

「ほほう、カリス殿は吟遊詩人の英雄譚が好きなのですな」

「うん唯一の楽しみ、ようやく自由に聴きに行けるんだ。」

「唯一とはそれほどまでに入れ込んでおるのですなぁ」

僕にとっては街や村の外の近くで稀に聴ける吟遊詩人達の詩は心に響く安らぎだ。

外で鎖で繋がれていたからそれを遠くから見聞きしていたのが、ずっと最前列で聴きたかったのがこうしていけるのが嬉しい!

「カリス殿はどのような英雄譚が好きなのですかな?」

「双剣使いのダークエルフの英雄譚なんだ」

「それはまた古いものを知っておりますな」

「そんなに古いの?」

「はい、なんでも数百年も前のだとか?」

「……そんなに古いかな?」

「古いですよ??」

「古いですぞ??」

2人に同時に突っ込まれた、故郷では流行っていたのになぁ。

「2人はどういうのが」

「なんでお前がいるダークエルフ!!」

2人へ問いかけようとしたら聞いたことのある大声で遮られる。

そちらの方を見れば前よりも薄汚れた格好をした冒険者のファトゥスが憎悪に満ちた目で睨みつけてきていた。

周りの視線も僕たちに集まっておりかなり目立っている。

「誰ですかな?」

「えっと……元主人の冒険者」

イグニの囁きに同じように返してそうでしたか、と納得したように呟く。

さっき元奴隷と言っていたからではあるけど……

「ダークエルフ?」

「まだ昼だぞ?」

「でもあのフードから見える肌は黒いし耳も長い、確かにダークエルフだ」

ファトゥスのダークエルフという言葉に周りの冒険者達がざわめき始める。

「どうしてここに、太陽の下を歩いてきたの?」

「日光でまともに動けない筈だ」

冒険者みんなの視線が僕に集まってるのがわかって怖くなりフードを目深に被り直して顔を伏せた。

「こうなる前に、出たかったんだけどな……」

ずっと奴隷生活していた時から知っていたことだ。

10年ものの(2年ほどはファトゥスのいた貴族の屋敷で飼われてた期間だが)奴隷としての生活の果てに知った事が、ダークエルフは地下世界スヴァルタルグラウンドに適応した代わりに日光の下で活動する事が出来ないはずなのに僕はそれがなかったおかげで6歳くらいの頃に奴隷商人に目を付けられたのだ。

そうしている間にもファトゥスは憤慨しながらも近づいてくるがイグニが間に立ち壁となる。

「吾の仲間ともに何か御用ですかな?」

「邪魔をするな竜人ドラゴニック!そいつは穢れた妖精デルヴだぞ!」

その言葉で空気が凍ったように感じた。

「ほほう、なぜですかな?」

「そいつは邪悪な地の底から生まれた穢れに染まったエルフだ!常識だろう!」

「では、そうすると吾の種族も穢れていることになりますな。」

イグニの言葉に不意を突かれたのか鳩が豆鉄砲を食ったような表情をファトゥスはする。

「竜人はちが」

「吾の種族の中で地の底の闇より生まれし闇の竜ダークドラゴンを祖とする、いわばダークエルフと同じデメリットを抱えた、貴様のいう穢れた種族が地下世界スヴァルタルグラウンドに存在しているぞ、どう違う?いってみろ」

「ひっ、そいつは」

「吾の仲間を侮辱するという事は吾等われら竜人全体を侮辱するということだ、次はないと思え人間」

イグニの口から炎が漏れ、熱い吐息がかかってファトゥスは腰を抜かしてしまったようで床に座り込んだ。

それを見たイグニは面白くなさそうに鼻を鳴らした。

「イグニ……」

「これは少し荒っぽいところを見せてしまいましたな、お騒がせして申し訳ない。」

打って変わって穏やかに振る舞うイグニの姿に冒険者たちはどこか安堵をしたように見えた。

そんな中でもオルシアは黙ったままで見つめていた。

「オルシア?」

「カリス様、もしかしてあのファトゥスという冒険者の方って、迷いの森の中でみた?」

「ん、あ」

オルシアと迷いの森の中の遺跡へと向かった際に見た野営の痕跡の事を思い出した。

あまりにも冒険者らしからぬ下手さに覚えていたのか、印象としては一番強かったようだ

……あ、これ、使える?

「うん、そうだよ」

「本当にですか?」

「おや、どうされたので?」

「えっとね……」

「迷いの森の中であの人たちを見たのですけど、野営の痕跡が酷かったのを思い出しまして」

「野営、見習いであれば多少苦労はするかと思いまするが、見たところ経験あるように見えますが?」

イグニは先ほどまでの怒りはどこやら、楽しそうに会話に参加をし始めた。

周りの冒険者も興味あるようで、どういうのだ?と集まり始める。

「一言でいってしまいますと、ゴブリンの作った野営地の方がまだ野営地として役に立つかな?みたいな感じです。」

「うぇっ!?ま、まて」

オルシアの言葉に思い出したのか慌てて止めようとするファトゥス、だが周りの冒険者の追及は止まらない。

「ゴブリンの野営地?あれはひどいもんだろ」

「流石に冒険者なら最低限の野営はできるだろ?」

「残念だけど、何もかもぐちゃぐちゃだった、野営地としてはゴブリン以下だったよ」

2人ほどの冒険者のそう返すと、えぇ……?とファトゥスを見る

「野営の準備をまともにできもしない冒険者がいるなんて」

「恥ずかしくないの?」

ギルドの奥からは受付さんが出ようとしていたようだが、治まったのを見て安堵をしていた。

「じゃあ、改めていこうか2人とも」

「おいこら待て!!」

「お前はこっちだ!」

ファトゥスの引き留める声が聞こえた気がしたがすぐに他の冒険者たちの声に紛れて聞こえなくなる。

僕たちはそれを尻目にそそくさとギルドから外へと出た。

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