第十七話 『冒険者登録』

現在主人公視点


受付さんに連れてこられた部屋はこれまた見知らぬものが多い部屋だ。

何に使うかはわからない球、白紙の書類、読めない言語で書かれた文字などが散らばっていた。

「ここで登録をするんですか?」

「はい、その前にお聞きしますが文字の読み書きの方は?」

「……読むほうは大丈夫ですけど、書く方は……」

読むだけなら何とかなるのは、8年前の恩人であるあの人たちが沢山教えてくれたからなのと、書くのも習ったが1週間と短かったため殴り書きぐらいしかできないのだ。

「ゆっくりで構いませんよ、代筆も可能ですが……いかがしましょうか?」

「カリス様、大丈夫ですか?」

「……流石にここで任せたらダメな気がするから、書きます」

「では、こちらの方に名前と年齢とその他事項の記入お願いします。」

「はい、えっと、こう」

羽ペンをわしづかみにして四苦八苦しながらも何とか書き記していくが、あまりにも汚い文字だ。

何度か書き直すことで何とか読めなくもない文字で書き記すことが出来た。

「……名前はよし、年齢は……太陽と月を数えてたから多分16で合ってる……」

「年齢はみんな同じですな」

「イグニも同じだったの?」

「吾のような外見ですと判りにくいですからな、その分だとエルフもダークエルフも同じだと思いますが?」

地下世界スヴァルタルグラウンドで幼い頃に見たダークエルフしか見たことないからよくわかんない。」

実際他のダークエルフもいたかもしれないけれど、全部を知る前に奴隷商人の手によって誘拐されてしまったため知らないのだ。

エルフも同様で、馬小屋か使われていない小屋の隙間から見えた人たちしか知らないがないのだ。

……時折、何とか助けようとしてくれた人はいたけど、それだけはできなかった……してはならない理由があったからだ。

そう考えると気分が重くなる。

「では書けましたらこちらにもお触れ頂けますか?」

「これは?」

自動書記録石オートロガーと呼ばれる魔石です、冒険者さんたちの行動と結果の全てを記録するためのものです。」

「……全部記録」

「はい、本来は文字の読み書きが出来ない方のために発明された物ですが、非常に便利なため広く扱われるようになったんですよ。」

みんなでその魔石に触れると、鈍く輝いて光は消える。

「記録されたものを提出すれば、いいんですか?」

「ええ、一般的に冒険記録アドベンチャーログと呼ばれていて、それを基に知名度や評価が決まります、それでうまくいけば上のランクへ行くことが出来ますよ。」

「ちなみにそのランクは見習いはG、他地域へ移動が許されるのはF以上でしたな。」

「お詳しいですね竜人の……イグニさん。」

「父が冒険者だったからですな、して最高はSランクですがほとんどいないので気になさらずともよろしいかと。」

「そこまでいきますともう神話の英雄くらいですねえ」

A~Cランクは少ないんですけどねえと受付は言いながらもランクが上がることによる利点を話し始める

「知名度や評価が上がると名指しで依頼されたり、様々な特典を得られたりするんですよ、最近では……引退してどこかの国の近衛兵になったという冒険者さんもいましたね。」

「私が聞いた話だと大神官になった人もいたとか、司祭様も冒険者だったんですよ?」

「あ、うん、司祭様に聞いたよ」

まさか領主様も元冒険者でこの長剣を使ってたとは思わなかったけどね!!

「……はい、これであらかたの冒険者登録は出来ましたね。」

「登録ってこんなに簡単に終わるもの、なんですね?」

「ええ、あとカリスさんの持ってこられた領主のワイズ様からによる推薦が一番大きいですね。」

「え?」

「本来であれば奴隷や使用人といった人は冒険者になれないという決まりはあるのですが、手紙によりますと元奴隷であり、村での事件を解決してくれたとのことで。」

「そういう決まりがあったの?」

「ええ、何でも昔、貴族の方による奴隷や使用人を使った問題があったようですよ?」

受付さんは笑顔でそう言いながら資料を纏めて書き込んでいく。

「ああそうだ、こちらの方にも触れていただけますか?」

「これは?」

「ギルドの方針で新規に冒険者になる人を記録するための記憶水晶です、ひとつずつありますので触れていただければすぐに終わりますよ。」

そっと優しく両手で触れると意外と冷たく重くて、頭につけたりして身体でも触れてみると、深い青色の鈍い光を放ち始めるがすぐに治まる。

「これで登録は完了となります。これが皆様が冒険者であるという証明をするタグとなります。」

先ほどの自動書記録石がはめ込まれた白色の手のひらサイズのタグが手渡される。

タグには僕の名前と年齢、その下にGランクと大きく書いてある。

「それは皆様が冒険者になったばかりであるという証です、これから知名度や評価を少しずつ得てランクをどんどん上げて行ってくださいね!」

「え、えっと、はい」

「頑張ります!」

「吾も力を尽くしましょう。」

「それでは3人はお知り合いのようですし、パーティとして登録もできますがされますか?」

「お、お願いします!」

僕も負けていられないと何とか声を出す。

「はい、ではそのようにしておきますね」

よかった、これから神殿についても知るために色々と頑張らないと……あれ、そういえば僕がダークエルフであるということに突っ込まなかったような。

「あの、僕は」

「ワイズ様からの手紙で聞いております、たとえダークエルフであろうとも私たち冒険者ギルドは門戸を広く開けておりますので気になさらず。」

そう受付さんに笑顔で言われて、そうかとどこか安心した。

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