第九話 『聖騎士の試練:戦闘』

今現在のカリス視点


オルシアと共に奥へ向かうと広い空間に出た。

悪意の黒い瘴気が更に視界を埋め尽くすほどに濃厚になっていく。

「……ここが、原因の大元みたいだね」

目を細めてよく見ようとするのをオルシアは不思議そうにして聞いてきた。

「何か、視えてるんですか?」

「え、こう……黒い瘴気……いや、邪気かな?何と言えばいいのかわからないけど……」

なんとか説明しようとしてあいまいな表現になる。

幼い頃から何故か見える自分としてもどういえばいいのかわからないのだ。

「私には何も見えませんけど……」

「そっかぁ」

怪訝そうにするオルシアの顔をよそに空間を観察すると、

大きな綺麗なガラスがある天井、壁には神話上の物語を表わしていると思われる壁画があるのが見えた。

途端何かが飛んでくる音が聴こえて、とっさにオルシアに突進して抱きかかえながらそれを避ける!

大きなものが床にぶつかり跳ねながら引きずられるような音がしたところを見ると、あの元主人のズタボロになった冒険者たちだった!

「い、いったい何が起こったんですか?」

「……どうやら、あれが答えてくれるみたいだよ」

そっと立ち上がりつつ剣を構えた先にいたのは、ボロボロになった魔導師服をきた黒い悪霊……怨霊ともいえそうな人型のアンデッド系モンスターが憎悪と憤怒に満ちた目で僕を射貫くように見ている。

『貴様、ダークエルフぅぅう!!』

「え、なに!?」

幾つものの黒い魔法の槍が無から出現したのと同時に射出され、肩口を裂かれながらも何とか避けきった。

『よくも、我を封印してくれたなぁあああ!!!!!おのれおのれえぇぇぇええ!!!』

再び黒い槍が襲来してきて、何度か避けようとするが着地したのと同時に魔法の矢が放たれる!

「あ、これ、やば」

「《我が祈りよ全てを阻む盾となれ!》聖壁プロテクション!!」

オルシアの魔法によって半円状の障壁が僕たちの周りを覆い、魔法の矢とぶち当たり嫌な音を立てながらも防ぎきった。

「ありがとう、オルシア!」

「はい!護りは任せてください!」

冒険者……ファトゥスたちの方を見て、今の攻撃等を見て考えると恐らくこのモンスターの仕業だろう。

『おのれ、ダークエルフ風情がぁあ!!数百年前に封印した恨み晴らさせてもらう!!』

数百年前に、ダークエルフがあれを封印したのか、でも僕自身それを知らないけど……言っても聞かなさそうだ。

『《死者の軍勢よ我が声に応え、武器を取れ!》』

そのモンスターが詠唱をすると周りから大量の屍人が出現する!

死霊魔術師ネクロマンサー!カリス様お気を付けください!」

さて、どうする?死霊魔術師を相手にしながら周りの屍人を相手にしようか?

それとも周りのを先に片づけてから死霊魔術師と戦うか?

前者は現実的に考えて僕とオルシアでは無理だ、後者だとまず体力もリソースも足りない。

部屋の隅で気絶しているあの冒険者もとしゅじんたちは戦力外としても……

速攻で、死霊魔術師を叩くしかない、と長剣を胸の前で掲げて神へ祈る。

「……!オルシア!司祭様の!」

「ふぇ、あ、わかりました!」

「タイミングは任せるよ!」

オルシアから聞いた話を思い出し、長剣を構えて突っ込む。

死霊魔術師は黒い瘴気を放ち攻撃を弾き飛ばすのと同時に毒々しい色をした爪が迫る!

「ぐっ……!!」

神官服がいとも簡単に刺し貫かれ腹部に熱い鉄の棒を差し込まれたような激痛が走る。

「ああぁぁっ!!」

貫かれながらも死霊魔術師の腕を斬り落とし、腹部に刺さった手を捨て去るとその手はミイラになり灰になって消えた。

『我が毒爪を受けてなお立ち上がるかダークエルフ!!』

死霊魔術師は僕のその姿をあざ笑う、だがそれでもまだ立っているのを見て苛立ったようだ。

『おとなしく死ねダークエルフぅぅうう!!』

周りの屍人と共に一気に襲い掛かってくるがその時!

「《神の威光をもたらしたまえ!》爆光フラッシュ!」

『なに!!ぐあああぁあ!!』

聖なる光がその杖を中心にして爆発して、巨大な空間を白い光が塗りつぶす!

浄化ではない聖なる光をもたらす魔法だ、アンデッドやスピリットには多大な影響はあるだろう。

死霊魔術師は聖なる光で焼かれた目を抑えながら何とか攻撃しようとしているが当たらない。

「これで、終わり!」

黄金色の光を纏った長剣が死霊魔術師の胸を刺し貫き、血と骨と内臓を全て焼き尽くすような嫌な感触も伝わる。

『おのれ、ダークエルフぅう!!貴様も道連れにしてくれる!!!』

死霊魔術師は恨み言を叫びながらも消滅していく。

『《陽の光よ満ち溢れ照らせ!!》」

太陽の光を召喚する魔法!

それを理解した瞬間光が突き刺さる、だが、死霊魔術師は驚愕に目を見開かせた。

『何故、ダークエルフの貴様が、この光を浴びても!!』

何故死なない!という叫びと共に消えていく。

「僕もわからないよ」

もう消えた死霊魔術師に返答を吐き捨てて息を吐く。

どうやらあの魔法はダークエルフ対策で所持していたようだ。

死霊魔術師のいた場所に落ちていた魔法の巻物スクロールが魔法の炎焼かれて消えていくのが見えた。

周りの屍人も復活させた主人が消えたからか砂となって消えてしまった。

黒い瘴気の、邪気の渦がそれと共に消えていくのが見えた。どうやらあの死霊魔術師がその元凶だったようだ。

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