第八話 『聖騎士の試練:冒涜者 冒険者ファトゥス視点side』

カリスがくる少し前の冒険者ファトゥス視点


遺跡の前で野営する際に誰がやるのか口論になった

「おい、天幕は出来ねぇのか!」

「こっちも手いっぱいだからお前やれよ!」

「ちょっと、集中して祈れないじゃない!」

「アフマクお前も手伝え!手ぇ動かせや!」

「女にそんな事させますの!?」

喧々囂囂けんけんごうごう、とそう言ったものが当てはまる様相だった。

「イディオお前1番力あるんだから天幕の方やれば良いだろ!!」

「じゃあテメェは飯用意しろや!!」

「そうですわ!」

「アフマクは薪を集めろ!」

「嫌ですわ!」

いつもはこんな事なかった筈なのに何故こうなった!!

俺たちは何も悪い事はしてない!後ろめたく思うこともない!!

「おい、武器の手入れは誰がするんだ!!」

「お前がやればいいだろ!!」

どうもうまくいかない!聖騎士(パラディン)である俺が何故こんな苦労をしなくてはならないのだ!!

脳裏によぎるのはあのダークエルフの奴隷だ。

そうだ、全てはアイツのせいだ。あの穢れた妖精デルヴのせいでこうなっているのだ!

「おい、飯はどうなってる!」

「今やってるだろ!!」

「速くしてくださいまし!」

「お前も手伝え!」

「おい、これ焦げてるぞ!」

「捨てろ!食料なら"腐るほど"ある!」

焼け焦げた食料と雑嚢袋内の腐った食料を投げ捨てる。

それでも苦いところが多く、あまり褒められた味ではない。

いつも味わう甘美な味ではないのだ。

「おい、天幕倒れるぞ!」

「お前が下手なだけだろ!!」

「じゃあお前やれ!」

「とにかく抑えろ!」

倒れそうになる天幕を支えて倒れないようにしてそんなこんなで朝を迎えた。

天幕が倒れたりしてそんな出来事もあり疲労があまり抜けなかった。

だが依頼を終わらせてしまわなくてはならないため強行軍を敢行することにした。


遺跡内部に入ると漆黒の闇に包まれており何も見えない。

大きな木の棒に布を巻きつけて油を染み込ませて松明にすれば僅かな範囲を照らし出す。

アフマクに光を出させるという手もあったが何があるかわからないのと数回程度しか扱えない魔法よりもこっちの方がコスパはいいと判断したからだ。

もちろん、聖騎士である俺がアンデッドなんぞに遅れをとる事はない!

ズンズンと進んでいくと何かが闇の中で蠢くのが見えた。

「何かいるぞ!」

大声で警告をすると、その何かはこちらに攻撃を仕掛けてきた!

『██████!!!』

武器を持った骸骨戦士、いわばスケルトンだ!雑魚モンスターのひとつだ、これなら楽勝だ!

骸骨戦士の攻撃を避けて長剣を叩きつければいつものように金色の光が……?

ギィン!という耳障りな音がして驚愕する。

「な……っ!?」

長剣はいつものような光を纏う事はなくそのまま骸骨戦士の兜に僅かにめり込んで受け止められた。

そのまま反撃をされて慌てて避ける。

「このやろぉが!!」

イディオが足払いをかけ、骸骨戦士は仰向けに床に倒れる。

アフマクがそれを追うようにメイスで頭を打ち据える。

しかし、それをキッカケにか周りで同じ骸骨戦士達の黒い影が蠢くのが見えた。

「おい、囲まれてるぞ!」

「入ってきた方にも沢山いますわ!!」

「撤退は無理だ!切り抜けるぞ!」

骸骨戦士達の攻撃を何とか潜り抜け、足を取られそうになりながらも駆け抜ける。

骸骨戦士へ何度も攻撃しては光を纏うことも無く弾き返され、長剣が欠けていく。

それでもなんとか1体か2体を倒す事が出来たが、反撃によって服も鎧もズタボロになっていた。

「こいつら!!」

なんとか長剣でまた1体を破壊するが更に増えていく。

「キリがねぇ!!」

「こないでくださいまし!!」

「なんでいつものように光らないんだ!!」

骸骨戦士の剣によって弾き返される事を繰り返す。

モンスターである骸骨戦士達は顎をカタカタと鳴らしている、まるで笑っているようだ。

「おい、奥に石碑が沢山あるぞ!!」

「そこ抜けたら多分終わりだ!急ぐぞ!」

「わかりましたわ!」

「あ、おい!神官が先に逃げるな!!」

「嫌ですわ!自分の命が大事ですわー!」

脱兎の如くアフマクが離れると同時に追いかけようとすると骸骨戦士達に掴まれる。

何とか振り払うことに成功して骸骨戦士を蹴り飛ばしたその先にはイディオがいた。

「おいテメ、ぐぁっ!!」

イディオが気を逸らした瞬間骸骨戦士達は殺到する

「やめろ!おいはやく、はやくたすけ!がぁぁぁぁあ!!!!」

血が溢れる、自慢だった筋肉も左腕も骸骨戦士達によって破壊される。

俺はその様子を見ながらもそのままイディオを囮として即座に逃げ出した。


逃げ出して石碑のある部屋を抜けた先には荘厳なまでなステンドグラスが天井を彩り、壁には何かを表す壁画が描かれていた。

中央には石棺があり、アフマクは入り口に入ったところで息を切らしていた。

「何とか、逃げ切れましたわ……」

「みたいだな……あれはなんだ?石棺か?」

「もう早くここから出たいですわ……」

そっと石棺に近づこうとすると遠くから誰かの声が聞こえた。

誰かがこの遺跡に入ってきたのだろう。

「速く終わらせてあの石棺からお宝を頂こう」

「そうですわね」

アフマクと意見を同じくして近づく。

『██████』

突如として何かの呻き声と共に黒い渦が石棺の上に集まるのがみえた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る