第7話 初仕事
「槙島先輩、改めて今日はよろしくお願いします」
「リンちゃんの初仕事だね! 私も責任重大だ」
別の日、私は初めて<外奉会>の活動に参加することになった。
この前と同じ軽トラックの助手席に座りながら、揺れに身を任せていた。運転席には、槙島先輩。今日は私と彼女のふたりでの活動ということになっている。
目的地は車で十五分程度の最寄りの集落だ。
比較的治安がいいということで、この人数での活動となった。
「今日は清掃活動……ということでよかったんですよね」
荷台には、箒などの清掃道具がいくつか積まれているのを確認していた。
「そうだね、まあ目的はそれだけじゃなくて、地域の人たちと交流するのも目的のひとつなの。だからひとりで黙々と作業しちゃだめだよ? 効率よりも楽しくやること!」
「わ、わかりました……」
そういうものか……、と自身を納得させながら窓の外を見やる。かつて三車線はあっただろう広い道路を、たった一台で駆け抜けていく。
沿道にある建物は、その悉くが朽ちていた。
しかし、車を走らせるにつれ、次第にまともな建物が並ぶようになってきた。集落に近づいている、ということなのだろう。
「もうすぐ着くよ!」
槙島先輩が教えてくれる。
私は初めての活動場所へと目を向けた。すると、車内から、あまりにも目立つ建物が見えた。
「あれ、城……ですか?」
まるでこの国伝統の城のような建物が、集落の中心に威風堂々たる佇まいで建っていた。
「だね。ここは<キヨス>。お城を中心として維持されている小規模な集落だよ」
私達は<キヨス>城前に到着すると車から降りる。
「早速始めようか」
槙島先輩はそういうと、私にごみ拾い用のトングとごみ袋を手渡してくる。
「この城は集落のシンボルだからね、周辺のごみ拾いをしながらきれいにしていこう」
「分かりました」
「じゃあ、ちょっと待っててね」
掃除を始める前に、槙島先輩はどこかへ駆けて行ってしまった。
私は仕方なく掃除を始める。
改めて城を見ると、あちこちにほころびが見えた。きっと大規模な修繕をする余裕は、この集落にはないのだろう。
それでも、やはり立派な建物だった。
初めて目にする実物のお城に目を奪われていると、槙島先輩が戻ってきた。何人かの子どもたちを引き連れて。
「みんな! 今日はいっしょにお掃除頑張ろうね!」
「「は~い」」
「元気いっぱいだね!」
槙島先輩の掛け声に、子どもたちは大きく手を挙げながら答えていた。
「先輩、どうしたんですか、この子たち」
「どうしたって……、この集落の子どもたちだよ。この子たちと仲良くするのが、今日のリンちゃんの目標です!」
「え、ええ! むりですよ、だって……」
「年下と触れ合ったことないから、でしょ。リンちゃんについて、なんとなく話は聞いてる。でもせっかく<外奉会>に入ったんだもん、したことないこともしないとだめでしょ! それに、孤児院での奉仕活動とか、も~っと大変だよぉ?」
そういわれて私は思い出す。
イクヨとの約束を。
彼女が作った本を子どもたちに読み聞かせすると言ったではないか。
となると、当然……。
「やらなきゃ、ですね」
「その調子その調子」
「よ、よし……! み、みんな~、お姉さんとがんばろ~!」
その日、私は子どもの無尽蔵な体力を思い知ることになったのだった。
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