第24話 再び
「恭子ちゃん、実はお願いがあるのよ」
マルガの屋敷でくつろいでいた恭子に突然マルガが改まって話し掛けてきた。
「カラッサの草原で狩りする気ない?」
「狩り…ですか?」
現在カラッサでは草原で取れる魔獣の素材が減少傾向らしい。その原因は明白で一気に冒険者が不足したおかげで納品数が減ってしまったの事、つまり……
「……つまりカザールに雇われていた冒険者達が主な仕入れ元だったって事ですか?」
「そうなのよ……」
「「……はぁ」」
マルガと恭子は二人同時にため息を吐いた。カザール商会に雇われた冒険者達は約100名。しかも全員拘束されカザール商会に対して調査中の現在は冒険者資格を剥奪中である。今の冒険者ギルドは稼働しているが生産性が低下している状態なのだ。冒険者ギルドにある依頼掲示板は張り紙に溢れかえってしまっているらしい。今回、冒険者不足の解決策として新米冒険者達を募集してはいるが先日の事件が尾を引きあまり来ないらしい。
「なるほど……その狩りの依頼が私に来るんですか?」
「依頼というか、一応恭子ちゃんはカラッサの商人だからやるやらないは自由よ。ただ、先ほども言ったように素材の仕入れが安定するまで買取金額を上げようと思ってね。もちろん他の商人にも連絡は言ってると思うわよ」
「……ほう。ちなみに?」
「1.5倍」
ゴクッと恭子は喉を鳴らす。つい先日、あの魔獣を納品したばかりである。金には困っていない。しかしこれから教会に世話になる事は間違いない。それに金はあっても困る事は無い。それに恭子は暇を持て余していた。
「それで、何を狩ったらいいんですか?」
「草原に生息しているものなら何でもいいわ。ただ素材として利用できる状態である事が大原則だけどね」
それから恭子とマルガはカラッサの草原で狩る獲物について話し合う。・カラッサの草原で取れる魔獣は小型のものが多く、素材として利用出来る部分は少ない。しかし食用には向くので食材としての需要はある。
・草食性の魔獣が多く肉の味は良くない。だが皮や角、爪などは使えるものが多い。
・ラビット系やウルフ系を狩る事が多いらしいが滅多に姿を見ないので出会えたら幸運とされている。
・魔核……所謂魔石が小さい事から人気が無い。売れても小遣い程度らしい。
・各種類の上位種も存在しており、今回はその下位種を狩る事が目的らしい。
・現在、カラッサの草原では各種類合わせて100種類以上が生息しているらしい。
「結構いるんですね」
「だから困っているのよ。カラッサの草原は四季折々、素材に恵まれているのよ」
「……そうですね。まあ、どれだけやれるかわかりませんが行ってみます」
「はいはいはーい!私も行きます!」
「マリア?」
「私も行きたいです!」
突然、マリアが会話に割り込んできた。この数日でマリアはマルガとすっかり仲良くなり恭子と共に行動する事が当たり前になっていた。ちなみに食事に関してはすでに一緒に摂っている。
「私はいいけど……」
チラリと恭子を見るマルガにニッコリと笑顔で応える恭子。勿論、問題無いという意味だ。それを見たマリアも笑顔になる。
翌日、カラッサの草原にやって来た恭子とマリアは、さっそく魔獣を探す事にした。ラビット系やウルフ系を狩る事が多いらしいが滅多に姿を見ないので出会えたら幸運とされている。しかし話とは違っていた。
「めっちゃいるじゃん……」
ここ、7日ほど全く狩りが行われていなかったせいで草原は所々魔獣で溢れていた。ラビット系、ウルフ系はもちろんの事。グリーンウルフやスカイバードなど下位魔獣ではあるもののかなりの種類が集まっている。しかも角が生えたモコモコした草食のホーンラビットやブラックベアの姿も見える。
ちなみマリアは狩りをしたこともなければ戦闘能力はない。とはいえ回復魔法や支援能力はあるらしい。今回は完全に総合的な支援をする為に来てくれたらしい。他にも商業ギルドから専属担当のミラがアドバイザーとして同行することになった。
「マリアさん。その背中に背負ってる大きい箱っぽいかばんは何ですか?」
「お弁当です!」
「お、お弁当ですか……」
遠足か。と思わなくも無いがマリアの手作り料理はおいしいので有り難い。昼食時になったら休憩しようと提案し早速狩りを開始する事にした恭子はラビット系を探して草原を歩くことにした。しばらく歩いていると突然マリアが立ち止まった。
「きょ、恭子さん、アレ……」
マリアの視線の先を見ると煙を立てながら走って来る見覚えのある鳥が迫ってきた。そのスピードは凄まじく他の魔獣は巻き込まれないように逃げ惑っている。そして恭子の目の前で立ち止まった。
≪ピーィ!!≫
「「フ、フギンバード!?」」
マリアとミラが同時に叫ぶ。カラッサで幸運の鳥、もしくは神の使いとして有名なフギンバードが現れたのだから。
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