新章予定地
第20話 カザールの命運
カザール商会、会頭カザール・ウラジミールは家族と側近、そして護衛を連れてカラッサを逃げ出した。その距離はもう50km以上先に距離まで来ていた。逃げようとしている先は実家がある帝国だ。
(くそ!なんで……)
カザールは今回いきなり辺境伯でアルマが行動を起こした理由がわからなかった。何をするにも細心の注意に気を使い、証拠はもちろん証人も残さず活動してきた。そのような生活を10年以上続けてきたのだ。あと少しで商業ギルドに手が届くところに来ていたのに理由もわからずいきなり頓挫したのだ。
実は教会の一件はカザールが主導したわけではなかった。カザール自身は報告は受けていたが方針としては時をかけて教会の手中に収める気でいた。しかし今回はカザールの側近たちが教会のマリアを拉致したことに気づいた時にはカラッサの港はすでにカザール商会の息のかかった冒険者が厳戒態勢が引かれていた。何が最悪かといえばボロボロの教会とはマリアは聖職者だ。その聖職者を拉致するなんて事をすれば遅かれ早かれバッシングを受けることは分かり切っている。だからこそ時間を掛けていたのだ。事が起きてからカザールが分かった事は今回の一件は物件買収を担当者がマリアを拉致を先導しすでに火消はすでに不可能なところまで来ていた。
今回の辺境伯アルマの動きは無駄が無く迅速だった。まるで準備をしており何かあればすぐに動かすつもりだったかのように。確かにカザールはその情報は掴んでいた。それにしても早すぎたのだ。平時であればカザールはすぐにトカゲのしっぽ切りに走ったが今回は状況の把握も許さず、カザール商会の息がかかっている店舗すべて辺境伯騎士団が抑えてしまった。おかげで隠れ家にも行けず、身一つでカラッサかた離脱する羽目になった。
今ではカラッサでは指名手配され、近いうちアーレン王国全体で手配されることは間違いない。
(……いまなら関所も問題なく通れるはずだ!)
カザールはバルバロイ帝国の関所にあと少しという所で目の前にある1匹の鳥が現れた。
「フギンバードか……これは運が尽きていないという事か?」
(これを手土産にすれば……!)
カザールは合図をすると側近と護衛達はフギンバードに捕まえる為、馬車うや馬から降りて目の前にいるフギンバードを囲い始めた。
「まったく救いの無い下郎どもが……」
「!?」
目の前にいるフギンバードがいきなり喋り始めたのだ。カザール達はこの異様な光景にどよめきが起こった。
「貴様ら人間は私の事を神の使いやら幸運の鳥やら呼んでいるが……」
すると真白のフギンバードは光り輝き先ほどは一変、黒髪で黒いドレスを着用した妖艶な女性に変貌を遂げてた。
「……私は確かに神の使いではあるが幸運を授けたことはない。私が授けるのは不幸だけだ。今回不幸を授かるのは貴様たちの様だ。我が主の命令により貴様ら全員を消去する」
「は?」
カザールは目の前の女性が現れたことに驚いているといきなり女性は手で合図した。先ほどまで星が輝いて見えた夜空が知らないうちに漆黒の夜空になっていた。そして漆黒ともいえる夜空から聞き覚えのある泣き声が響き渡る。漆黒の夜空の正体、それは無数のカラスの大軍だった。
「な、なんでカラスがこんなに!?」
カラッサにはカラスは存在しない。カラッサ近郊にはもっと強い鳥類が棲息するからだ。いないはずのカラスが、しかも無数に大空を飛び回っている光景にカザール達は不気味というより恐怖という気持ちの方が上回っていた。
再度真っ黒のドレスを着た女性が指示を出すとカラス達は一斉に急降下しカザール達を啄み始めた。カザールはカラス達の行動に絶叫を上げながら自分の状況を確認すると体中が烏だらけになっていた。そしてカラス達はカザール達が叫び声をあげる中、問答無用に啄む。それは子供女関係なく。そしてしばらくすると何事も無かったかのように飛んでいった。その場には馬車しか残っていなかった。
「主よ……。ほんの少しではありますが世界が動き始めたようです」
カラスの大軍を操っていた女性は真っ黒なドレスを靡かせながら独り言を言う。そしてカラスが飛んでいった方向を向き、遥か先にいる主のことを思い浮かべる。
「引き続き、恭子様を見守りいたします……にしても干し肉また食べたいな」
再び白い鳥に変身すると大草原の何処かへ消えていった。
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