第17話 蹂躙
恭子ら3人は教会に到着すると誰もいなかった。恭子は確信ともいえる胸騒ぎがして教会内を探し回った。するとあからさまに『見ろ』と言っているような位置に置手紙が置いてあった。
『マリアを返してほしくば、権利書と交換だ。翌朝カラッサの12番ドックに一人で来い』
(……やりやがったなあいつら)
恭子はマリアを教会に残したことを激しく後悔した。地球でも人を助けて報復を受けたのに、返しの可能性を鑑みてせめて一緒にいるべきだったと。
恭子は手紙をマルガに見せた。
「……これ、証拠になるでしょ」
マルガは手紙の内容を読む。マルガが欲しがっていた証拠である、マリアを拉致しましたよという立派な。仮に拉致してなくても拉致未遂という事で効力を発揮するだろう。しかしこれには商会の名は書かれていない。この手紙の主を捕える必要がある。
「マルガさん、お願い聞いてくれる?」
マルガはこの状況で恭子は妙に落ち着ている風に見えた。
「私は『今から』いくんで、4人分の夕飯とその手紙を使って衛兵の手配をお願いします」
恭子は落ち着ているが完全にキレていた。その証拠に恭子はマルガ達を一切見ない。そして視覚化できるほどの魔力を放っている。マルガとミラは恭子を止めようとしたなぜか感じる恐怖が先行してしまい、とてもじゃないができなかった。
「……わかったわ」
マルガは何かを言いたそうだったが、今の状況で何を言っても無駄だと判断したのか、諦めたような言い方をした。その後は二手に分かれ行動することになった。マルガは衛兵にこのことを伝えるために詰所に報告に行く。ミラはその手伝いをする。そして恭子は単身カラッサの12番ドッグに向かう事になった。
雷属性の魔術、電光石火を使い移動速度を高める。教会から港までは3km以上離れている。しかし電光石火を使えば対して時間はかからない。発動してから5分程度で港の入り口に到着した。
カラッサ港は誰でもわかるぐらい異様な光景だった。17時を過ぎているにもかかわらず人が多い。しかも武装している者ばかりだ。明らかに厳戒態勢の状態である。正面から乗り込んでもいいがマリに何されるか分かったものじゃない。そこで恭子はドックや倉庫の屋根伝いに12番ドックを目指す事にした。と言っても正確な場所は把握しているわけではないし、無関係の建物を破棄するわけにはいかない。
(空もいい具合に暗くなり始めている。潜入には丁度いい……)
恭子は屋根伝いに12番ドックを目指す。恐らく無駄に人が集まっているところが12番とあたりを付けて移動する。そしてついに12番ドックにたどり着いた。
(ここか?)
辺りを見渡す。明らかに厳戒態勢だ。ざっと見ても50人はいるだろう。しばらく見渡すと拘束されているマリアの姿を見つけた。
(あいつらぁ……)
遠目で見てもわかるぐらいマリアは明らかに暴行を受けた後があった。いたるところが傷だらけだ。恭子は沸々と怒りが湧き出てくるのをなんとかこらえる。
(許さない……マリアが傷ついた分、やり返す。数百倍にして)
幸いマリアは比較的壁側で横になって気絶している。非常に奪還しやすい場所だ。恭子は外側からドック内でマリアがいる場所に移動する。そして右腕に魔力を込めて12番ドックの壁を思いっきりぶん殴った。その衝撃でドックに亀裂が走り、一部が崩壊した。恭子は壊れた壁から侵入した。さすがに音まではごまかせない。
「今の音はなんだ!?……貴様だれだ!?」
見張りをしていた者達が気づき恭子の元に殺到した。気絶しているマリアの状況を確認する。息はしているようで命には別状はなさそうだ。恭子は一安心すると行動を開始した。
「よう、カザールの飼い犬共。躾に来てやったぞ」
恭子はやる気も殺る気も満々だった。恭子は目の前にいるカザール商会の私兵と思われるはまだ30人ほど。剣やら槍やら杖さら様々で全員完全武装だ。恭子は両腕両指を前に伸ばし魔力を込める。
「お、おい……なんかやばいぞ!!」
気付いた時は遅かった。
「……釣瓶打ち!!」
恭子の指先から無数の電撃魔術がカザール商会の私兵に放たれた。まるでガトリングガンの様に恭子の指から電撃が放たれ、私兵たちはなす術もなく倒れていく。この一撃で一気に20人ほど気絶させた。残りの私兵は騒ぎに気付いたのか続々と集まる。そしてすべて同じ鎧である事からカザール商会の兵士なのは間違いないだろう。しかし相手もバカではないらしい、一部はすでに剣を抜いて警戒態勢に入っている者もいる。それでも恭子は止まらない。
「てめぇら!!ぶっ飛ばす!!」
恭子はその言葉と同時に魔力を込めた指を突き出す。電撃の弾幕が私兵を襲う。
「ぐあっ!」
「ぎゃああ!!」
恭子の指から放たれる電撃に次々と倒れていく。カザール商会の兵士もまともに戦って勝てる相手ではないと判断したのか、遠距離から弓で攻撃を始める。矢を装填する隙を与えないために遠距離で矢を撃ち込んでくる兵士もいる。
「召雷!!」
遠距離攻撃して来る者には空から落雷が落ちる。私兵の何人かはそれの直撃を受けて倒れていく。
「なんだこいつ!!」
「化け物だ!!」
カザール商会の兵士から聞こえる声は正しい。恭子の戦闘力は間違いなく『化け物』と呼ばれるにふさわしい。そんな恭子相手に正面から戦う者はいない。
「拘束するぞ!!全員で囲んで無力化しろ!!」
私兵のリーダーらしき人物が指示を出し、一斉に恭子を襲う。恐らく魔法師と判断して近接戦に持ち込もうとしたのだろう。ある者は剣で斬りかかり、ある者は魔法で拘束しようと試みる。しかし……
「邪魔!!」
恭子の渾身の一撃が私兵たちを直撃し、鎧ごと粉々に吹き飛ばした。恭子の真骨頂は近接戦なのだ。指示を出した者は完全に判断を間違えた。殴って終わりではない。確実に内臓を破壊する一発を何人にも食らわせる。
(マリアに危害を加えたんだ、死にはしないが一生苦しんでもらうぞ)
恭子の怒りはまだまだ収まらない。そして恭子の蹂躙劇が始まった。ある者は腕を折られ、ある者は喉をつぶされ、ある者は両脚を折られた。中にはもう剣を握っている事すらできない者もいた。そんな状態にも関わらず誰一人とて死んでいないという離れ業。圧倒的有利であったはずのカザール商会の兵士は1分とたたずに半数以上が戦闘不能に陥っていた。
「ば、化け物だ!!」
「早く殺せ!!」
私兵のリーダーは戦意を喪失するも周りの者からの言葉で気を取り直す。そして残った私兵全員で恭子に向かって突撃していく。しかしそのような行為は自殺行為である事を兵士たちは知らない。
「よ、よせ……やめてくれ……」
「死にたくない……」
そんなか細い声は恭子の怒りをさらに燃え上がらせるだけだった。
そして約30分後、マルガが到着した頃にはすべてが終わっていた。
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