第16話 ステータスとは……

 恭子は商業ギルドに戻るとマルガに教会であったことを話したもちろんカザール商会を絶対に潰すという意思表明も。


「よりにもよってカザール商会かぁ……」


 マルガは頭を抱えた。


 実はカザール商会はカラッサでも5本の指に入る大商会だ。独自の販路を持ち発言力もある。しかしいい噂は聞かない。例えば禁制品のやり取りをしているとか、武器を密輸している、奴隷の不正売買など悪い噂は絶えない。しかし一切証拠がないのだ。


「と、まあそんな事だから実は内偵していたのよ。といってもスパイが配属されたところはフロント企業見たいだから尻尾はつかめてないんだけどね……」


 そんなときに恭子はカザール商会に喧嘩を売ってしまったのだ。しかも私兵の6人をボコボコにして。今まで実力行使にでる人物はいなかったのだ。今回の件でカザール商会は警戒を強めること間違いなかった。


「……んで潰すって言ったけどどうやって潰すのよ?」


「ん~、店舗に雷落とせばいいんじゃない?」


「はぁ!?」


 マルガが言うところの潰すと恭子の言うところ潰すは意味合いが全く違った。恭子の曰く潰すは文字通りで力技だった。店舗に雷落とすという発言にさすがにマルガは驚愕した。一般的に魔法もスキルもこの世界にはある。しかし一つの建物を破壊するほどの威力を持つ魔法を扱えるのはごく一部で高官クラスや英雄クラスしか存在しない。


「そんな事できるわけ……え?まさか出来ちゃったりするの?」


「多分できると思う」


 そう、恭子は魔法師ではなく魔術師なのだ。マニュアルありきの魔法師とは違い自分の知識と想像性にものを言わせることが出来る魔術師であれば可能なのだ。しかしマルガはまだその事を知らない。


「もちろん正確な場所等を把握する為に測量しないといけませんが」


「測量ねぇ……」


 恭子は決して真正面からやる気はなかった。後々面倒になりそうだからだ。そこで教会を中心にカザール商会の位置、距離、高さ等を把握してピンポイントに雷を落として崩壊させるプランを考えていた。証拠は残さず潰す。卑怯に見えて全く卑怯ではない。なぜならカザール商会に何もさせず完封するというのが恭子のプランだからだ。マルガは頭を抱えるしかなかった。この少女はとんでもない事を考えるなと。


 マルガとしてもまだ納得できたわけではない。確かにカラッサからカザール商会が無くなれば商業ギルドとしては利益がある。しかし恭子にそんな実力があるかどうか分からないからだ。


「私のステータス、実は自分もまだ見てないんですけどよかったら一緒に見ます?それでいけるかどうか判断してください」


 恭子はステータスを確認する為ギルドカードに魔力を流した。スキルが発現してから詳細を確認することにしたのだ。マルガは頷き恭子と一緒にギルドカードを確認した。そして驚愕した。


 名前:榊原恭子(07)

 種族:クォーター


 Lv.62

 STR:50

 DEX:80

 AGI:68

 MGI:99

 LUK:80


 スキル

 状態異常耐性(Lv.5)

 総合武術・異(Lv.5)

 総合武器術(Lv.5)

 総合魔術・改(Lv.9++)

 錬金法(Lv.9++)


 称号

 賢者の忘れ形見、魔族に愛されし者、竜族に愛されし者、狂人、変革者、魔境の住人、神鳥に愛されし者、カラッサの商人


(な、なんだこれ?)


 恭子は数値やレベルは全く気にならなかった。それより見たことがない言葉がずらりと並んでいた。特に称号の部分に身に覚えがない事がずらりと記載されている。


(忘れ形見?洋一と美優の事かな?……狂人って何!?)


 自分の事ながら突っ込み所満載のステータスだった。恭子はギルドカードを見つめ真剣に考え込んだ。


(魔族と竜族にはあったことが無いから意味わからん……)


 マルガはマルガで口をあんぐり開けている。


 恭子はステータスをじっくり見たが特に称号の所には心当たりがなかった。そこでマルガに聞いてみたところ、どうやら魔族と竜族には会ったことがあるらしい。一部の勢力を除き他種族とはいえ今の時代は特に仲が悪いというわけではないらしい。むしろ商業ギルド的には積極的に交流を行なっているらしい。利益があるからだ。もちろん水面下では何をしているか分かったものじゃないが。しかし称号については分からないとのこと。


「恭子ちゃん……あなた……」


「ん?」


「あなた、少なくとも辺境伯騎士団長より強いわよ……。それに魔法じゃなくて魔術師だったなんて……いろいろ納得だわぁ」


 マルガは恭子に対していろんな事に納得がいった 。魔境で暮らしサーベルウルフを倒せる実力、なおかつ魔法師ではなく魔術師という事がマルガを大いに納得させた。そして平然とカザール商会を潰すと言えるほどの実力者かつ狂人。


「一応見せてくれたから……これ私のステータスね」


 名前:マルガ・リーフレット(27)

 種族:ハーフヒューマン


 Lv.25

 STR:18

 DEX:31

 AGI:15

 MGI:40

 LUK:30


 スキル

 状態異常耐性(Lv.1)

 中級魔法術(Lv.4)

 商人(Lv.6)

 統率(Lv.4)

 コーディネーター

 不屈


 称号

 カラッサの商人ギルドマスター、調整人


 これらを見る限り恭子とマルガのステータスは天と地の差がある。マルガが言うに自分ステータスでも高い方の分類らしい。それを恭子ははるかに上回っている。


 恭子からしてみれば自分のステータスを公開した事によりこの世界の平均を知る事が出来た。これは大きい。


「で、どうです?やっちゃってもいいです?」


「もう、止めてもやるんでしょう!」


「ええ、まぁ……」


「んで私に話したという事は協力してほしんでしょ?でも手は汚したくないわよ。立場もあるし」


「ええ、協力してほしい事は……」


 恭子はマルガに協力してほしいこと、それは教会の修繕する為の業者の手配だった。キッカケがあればいつでも崩れかねない為できるだけ早く修繕したかったのだ。


「お金は?……もしかして」


「私が払います。今後カラッサで活動するにあたり拠点として活用するので」


 恭子はカラッサの拠点が欲しいが為教会を直すと言っているのだ。マルガはため息をつきながら了承した。こういった直球で行動する恭子を嫌いにはなれなかったからだ。


「恭子ちゃん。夜のお泊り会にそのシスターマリアも連れて行くわよ」


 マルガは唐突にそんな提案をしてきた。恭子は首を傾げながら了承した。シスターも連れて行けば守る事が出来ると判断したのだ。話を終えた恭子とマルガは仕事終わりのミラも連れて教会に向かった。

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