第12話 商人
「こんにちは!ようこそ商業ギルドカラッサ支部へ!!順番が着次第ご案内いたします!そちらの席でお待ちくださいませっ!」
(ん、なんだここは!?ファミレスかぁ!?)
恭子が商業ギルドに踏み入れただけで総出でさわやかに挨拶をしてくる。そして活気があり雰囲気が明るい。
待合処だろうか職員に促され恭子は順番が来るまで待つことにした。その間、ギルド内を観察することに。
店内は白を基調にした清潔な感じだ。ギルド職員は今のところ全員女性ばかりだ。ブルーのベレー帽とホワイトシャツにブルーベスト。ボトムスは全員違うようでズボンの者もいればロングスカートの者もいる。ギルド内の雰囲気と合っていてる。
恭子が座った椅子の前にはテーブルがあり、いろんな冊子がおいてある。暇つぶしにでもという事だろうか。その中には門番さんから借りた地図と同じものもあった。そして一番目を引いたのは商業ギルド案内という冊子だった。表紙の所には目立つように『君も商人にならないかっ!?』と書かれている
(直球すぎるだろっ)
恭子はそう思いつつページをめくり始める。冒頭には商人の歴史や役割が書かれている。一応飛ばさずに読んでいくが恭子の今欲しい事は書かれていない。そして数ページ読み終えると知りたかった部分にたどり着いた。
(あったあった。商人募集要項)
恭子が知りたい部分、それは商人に登録する為の必要条件。
・年齢7歳以上
・他ギルドに所属をしていない事
・1年間利益申請額100万コイン以上可
と3つだけ。年齢と他ギルドの所属についてはクリアしている。ここに来る前に市場のチェックはしたが年間の利益が最低100万コインというのは実感がわかない。確かに商人であり商才があれば年間100万ぐらいは問題ないだろう。しかし恭子は前世でも根っこからの商人でもなければ知識もない。
またこの利益申請額というのも大事な項目だ。これは地球で言うある意味確定申告みたいなものだろうか?
ここまで商業ギルド案内を読み解いて分かった事は、商業ギルドは会社ではなくあくまでも組合程度の意味合いが強いのだ。ゆえに商人は個人事業主という事になる。
この冊子をベースに恭子の今後の動き方を考えると現時点で2パターン思いつく。
魔境でとれる魔獣の素材を商業ギルドで買い取ってもらう業者としての立ち位置。これの場合は例のサーベルウルフの毛皮の値段次第だろう。
もう一つは錬金釜を使用した薬の販売。これは思いついては見たが販路をどうやって開拓するか?もしくは自分で店舗を持つか?
どのみちすべてはサーベルウルフに掛かっていると言っても過言ではないだろう。
「お客様!お待たせ致しました!担当のミラと申します!」
そんな事を考えていると恭子はギルド職員に呼ばれた。
「こ、これはご丁寧にどうも……えーっと、商人の登録と素材の買取をお願いしたくて」
「畏まりました。こちらへどうぞ!」
職員に恭子は案内されると席に着き早速商人の登録から行う事になった。職員は丁寧に説明してくれるが内容は先ほど読んでいた冊子の通りの内容だった。
「こちらの書類にご記入をお願いします!」
「はい……。えーっとこちらで聞くのも気が引けるのですが、素材の買取は冒険者ギルドでも行っていると聞いていますが、買取価格がこちらの方が高いと聞いていますがそれ以外に違いが分からないというかなんというか」
「ええ、確かに冒険者、商業ギルド双方のギルドで買取業務をしております。大きな違いとしてはサポートの差と言ったところでしょうか。例えば…そうですね、冒険者ギルドは求人募集や仕事の斡旋をしていますが商業ギルドでは行いません。他にも……」
冒険者ギルドでの買取が安い理由がそこにあった。冒険者から見ると素材はあくまでも仕事上の副産物に過ぎない。ゴブリン退治+ついでに手に入れた素材が報酬体系という事で冒険者はお材集めを積極的に行わないのだ。もちろん素材集め等の仕事も存在する。その場合は素材集めの報酬+持ってきた素材の買取が報酬という事になる。
一方、商人は求人募集や仕事の斡旋を一切行わない。その代わり素材等の買取は値段を高めに設定して積極的に行う。仮に市場で特定の素材が不足した場合は商業ギルドが冒険者ギルドに依頼を出すという形をとる。
ある程度の情報は商業ギルドが提供するがそれ以外の事業内容等は自分でやらなくてはいけないという事だ。
「とまあ、そんなところです。もちろん不足しそうな素材はギルド所属の商人に告知されます。まあそのおかげで冒険者と素材集め専門の商人はあまり仲が良くないんですが……。あっ……失礼しました!」
(なるほどね。商人達の素材集めが安定すれば冒険者の仕事が減ってしまうという事か)
「書き終わりました」
「あ、はい!ありがとうございます。……こちらに血判をしてもらうと商人に登録完了という事になります。押した瞬間他のギルドへの登録は出来なくなります。よろしいでしょうか?」
「大丈夫です」
恭子は返事をすると書類に血判を押した。すると書類は輝き始めしばらくすると光が収まった。すると書類はいちまいのカードに変わっていた。
「こちらが商業ギルド発行のギルドカードと商業ギルドに所属された方にお渡ししている手引きになります。ほとんど説明しましたが後ほど目を通していただけると助かります。こちらのギルドカードは身分証明としても使う事が出来ますが再発行の手数料は高いので紛失に注意してください。後こちらのカードには恭子様のステータス情報も血判により記録されました。ステータス情報は恭子様がカードに触れている間にしか内容が表示されないようになっております。後ほどご確認ください!これで恭子様は商人となられましたので素材の買取が可能になりました。次回、買取の際は先ほどと同じように商業ギルドにお越しください!」
「はい、わかりました」
「それでは次に素材の買取を行いたいと思いますのでこちらのカウンターに出していただけますか?」
恭子は職員に促されカバンからサーベルウルフの毛皮1枚をカウンターの上に出した。毛皮を置いた瞬間カウンターが少しだけ光出しすぐに収まった。魔法陣が刻まれているようだった。
「少々おまちください」
「今の光は?」
「このカウンターは査定器といいまして買い取り対象を鑑別してくれます。素材の名前やサイズ、状態等細かい事までは出来ませんがおおよそことはやってくれる便利なカウンターなんですよ!……って、これはもしかして?」
「サーベルウルフの毛皮です。買取できますか?」
「で、できると思いますが、しょ、少々お待ちください!!」
ミラは慌てて席を立ちあがると急ぎ足で奥にいる管理職っぽい女性に話かけていた。遠目でもわかるぐらいその女性も慌てていた。恭子はなんとなくであるがとんでもない事をやってしまったかと不安になるのだった。
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