第5話 相棒

 家に戻った恭子はと言っても傷口を綺麗な水で洗い、綺麗な布で巻いた、応急処置的な事しかできない。錬金部屋に薬があると思うがどれが何の薬かわかりそうにない。そこで恭子は書庫に向かい現状役に立ちそうな本を探した。30分ぐらい探すとある本を見つけた。


「初心者の為の異世界生活……著者 榊原洋一・美優」


 明らかに今は無き両親の手作りの本だ。そして、その本をパラパラとめくると。


 ……薬草・の作り方……


 もう少し読み込んでみると意外に簡単そうだった。何より精巧なイラスト付きの為薬草がどの植物なのかよくわかった。


「たしか庭先に群生していた気がする」


 恭子の記憶通り庭先に大量に生えていた。


(ただの雑草かと思ってた……)


 とりあえず応急処置の為、薬草を採取し軽く握りつぶしてから先ほど怪我部分に巻く。そして採取した薬草らしきものを持って錬金部屋に向かい、傷薬を作る為に水を錬金釜に入れる。あとはこの工程……薬草をすりつぶして入れるだけの簡単仕様。


「肝心のすり鉢が見当たらない」


 恭子はあたりを見渡すと、ちょうど良いサイズの板があった為すり潰してはいないがとりあえず刻んで入れた。そして、錬金釜に素材を入れる。何分経過したのだろうか……


 ピコーン!と音がなり錬金釜の上に完成の文字が出た。


 ≪超低級・回復薬≫


 どうやら無事に成功したようだ。恭子は出来上がったそれを傷口に塗り込む。すると、あっという間に傷がふさがり痛みが引いたのを感じた。そして恭子は……


「……腹減った」


 ぐぅ~と腹の虫が鳴る。とりあえず、先ほど取ってきた果実が問題ないか書庫で調べて食べることにした。少し調べると恭子がとってきた果実はブルーベリーアップルと呼ばれる果実で本の通り問題なく食べられる事が分かった。ブルーベリーアップルを数個取ってくると皮ごと食べる。甘酸っぱい味と酸味がちょうどいいバランスで食欲を誘う。


「にしても何だったんだ……」


 恭子は自分が襲われたときの事を思い出す。確かに恭子はあのカマで攻撃を防いだ。自分にそのような力があるとは思えない。


「知れべるにしても調べようがないからなぁ……」


 恭子は襲われ狼を倒した際その死体と一緒に壊れたそのカマを捨ててしまったのだ。今思えば持ち帰るべきだったと後悔したが怪我もし冷静ではなかった為仕方がないと割り切った。腹が膨れると急に眠くなった為、その日はもう寝ることにした。


 翌朝、起きた恭子はノープランで行動する事をやめた。前日の様なイレギュラーに対応できなくてはいけない。その為、まず食料の確保、薬の備蓄、装備の確認等。まず、両親が作った本を参考にしながら家にある備蓄の確認をする。しばらく家の探索をしたが装備や道具類は必要以上に合ったがやはり消耗品はあまりない。恐らく傷んでしまうからだろう。やはり食料は森の中で探すしかない。といっても5歳の子供だ。できることに限りはあるが……


「昨日と同じ轍は踏まない!!」


 恭子は念入りに準備を始めた。


 今の恭子にとっての最大の敵は森に住んでいる獣ではない。戦闘行為が問題である。地球で喧嘩慣れしているとはいえ状況が違いする。そこで恭子が考えた打開策は……


「エアーバイクを使うわ!」


 恭子は先日事故ったエアーバイクを使う事にした。昨日ブルーベリーアップルを採取した場所は近場なのですぐ分かる。森の中に長居をせずに必要な分だけ取りバイクでとんずらをする。これなら獣に襲われるリスクが減る。さらに言えばバイクを乗る練習になる。幸いバイクの使い方は何となくわかった。感覚的だが頭の中で念じればいいだけ。早速、準備した装備を身に着け長袖の服とズボンで全身を包み、バイクの後ろにカゴを固定する。


 準備ができた恭子は早速、目的地に向けて出発した。昨日とは違いバイクを使っている為目的地は5分程度に到着した。そして、昨日同様採取を行う。しばらく進むと何かが動く気配を感じた。少しするとそれは姿を現した。


 ≪グォォォォ≫


(狼だ!昨日よりでかい!)


 恭子はとっさにバイクを後ろに走らせ逃げだした。すると、狼はバイクを追いかけてきた。


(まずい!このままでは追いつかれる)


 恭子は必死にバイクを走らせるが狼とのスピードは違う。


(ちっ!頼むよ相棒!!)


 恭子は、必死にバイクに念じる。すると、バイクがそれに応えるようにスピードが上がる。


(よし!何とか……)


 しかし、狼も負けじと食らいついてくる。さらに、前足の爪で攻撃を仕掛けてくる。それもギリギリでかわすが、ハンドルを爪が掠めてしまい傷が付いた。


(やばい、どうすれば、攻撃手段は……)


 恭子が考えているバイクの挙動が少し変化した。目視は出来ないがバイクの後部が変形した気がした。そして……


 何かが爆発したような音が聞こえた。


(え?何?)


 恭子は爆発音が気になりバイクを止めると後部座席の両脇にいままでなかった筒の様な物がついていた。しかも煙を吐いて。


(ナニコレ……)


 恭子はUターンして来た道を戻る。すると襲ってきた狼の死骸が横たわっていた。


「……え、えぐっ」


 狼の死骸はバラバラになって吹き飛んでいた。まるで散弾銃で撃たれたような感じだ。恐らく恭子がバイクに乗っている最中に攻撃するように念じた為バイクが搭載されている武装を使い攻撃したと仮定した。


(ナニコレ!怖いんですけど)


 とはいえ今の恭子には攻撃手段がない為ありがたいのは確か。むしろかなり助かる。とりあえず、バイクに乗って家に帰る事にした。

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