第4話 狩猟
恭子はバイクで事故った後来た道を戻り家にたどり着いた。
(すげぇいってぇし、すげぇ疲れた……)
恭子にすごい疲労感が襲い掛かってきた。なんせまだ異世界ヴィルトエルに来て初日。ヴィルトエルの洗礼というより亡き両親の愛の洗礼のフルコースを味わっているのだから。でも不思議と体は元気だったが精神的に参ってしまった。いきなり死んだと聞かされ、いきなり異世界に転生し森の中でただ一人、と思いきやいきなり両親の遺産を見つけ、挙句の果てに事故り今に至る。恭子は家に入るなりベッドにダイブしそのまま眠ってしまった。朝、目が覚める。
(お腹すいたな……)
思えは初日から何も食べていない。家の中を探すが何もない。冷静に考えればあるはずがない。仮にあったとしても何年、何年放置されていたか分からない家の食べ物を食べるなんてデンジャラスすぎる。たとえ冷蔵庫や冷凍庫があったとしても中身を食べる気なんてしない。
仕方がないで今日は家周りの森を探索する事にした。幸い家のすぐそば井戸と綺麗な小川がある為、水は問題なさそうだ。家の中をくまなく探し探索用っぽい道具を用意した。
と言っても身体が小さい為、他の道具は持つことができない。扱うにあたり問題なさそうな草刈り用のカマと背負うかご、後は水筒のみ。
(とりあえず食べ物よ、食べ物。毒かどうかなんて後で調べればいい。食べれそうなものを採取しよう)
恭子は森に足を踏み入れるが、うっそうとしていて少し薄暗い。木々は鬱蒼と生い茂り、見たこともない植物がちらほら生えている。とはいえ雑草程度なら何となくわかる。そもそも草を食べる気なんてない。狙うは木の実や果実、願わくば毒じゃないキノコ。
ガサガサ、ガサガサ、歩くたびに音がする。少し怖くなってきた。
(大丈夫、大丈夫……)
自分に言い聞かせ、ひたすら歩く。森に入ってから1時間くらいだろうか、少しひらけた場所に出た。
(やった!果実発見!!)
そこにはリンゴのような赤い果実が生っていた。でもよく見るとその実は真っ赤ではなく若干青みがかかっているためブルーベリーのように見えた。見た目は美味しそうだが、万が一この世界で毒だった場合命取りになるので家で調べるまで我慢する。その後も、キノコや木の実、果物を採取した。木苺のような赤い実が生っているのを見つけ夢中で採っていたら、いつの間にか日も落ち始め夕方になっていた。
(そろそろ帰ろうかな……)
家に帰ろうとしたその時……
(あれ?なんかさっきより薄暗くない……?)
ふと周りを見ると先ほどと違い若干薄暗い。しかも木々がざわついている。一瞬熊でも出たのかと思ったが、次の瞬間、バキバキと木をなぎ倒すような音と獣の鳴き声のようなものが聞こえた。そしてその音とは別に背後からも聞こえる。恭子は思わず後ろを振り返った。するとそこには体長約2メートル程の狼がいた。
(……おう)
それは突然だった。狼はものすごい勢いで恭子に向かって襲い掛かってきたのだ。
(無理無理無理!絶対死ぬって!!)
咄嗟に避けるが、すぐに態勢を立て直すともう一度恭子に向かってくる。しかも前足を大きく振りかぶり今にも獲物を仕留めるかのような動作だ。
(やられるっ!?)
恭子も反射的に手にしていたカマを振りかざす。ガキン!!!その音は明らかに金属同士がぶつかったような音だった。さらに狼は衝撃で後方に吹き飛んだ。
(嘘でしょ?カマで殴っただけであんなに飛ぶものなの?!)
恭子はまたまた驚いたが、こんな大チャンスを逃すわけにはいかない。すぐさまカマをしまい、背負っていたかごを狼の頭に被せた。
「お、おらぁぁぁ!!この駄犬がぁぁぁぁぁ!!!」
するとなんと狼は身動きが取れず、かごの中でジタバタしている。それを見て恭子は右手にカマ、左手は拳で襲ってきた狼をサンドバックの如くボコボコに殴りまくった。次第に狼は抵抗もできず、ただただ殴られるしかできなかった。
「はぁはぁはぁ……」
そのうち狼は動かなくなった。どうやら息絶えたようだ。恭子はおおよそ10分間連続で殴り続けていたのだ。恭子は気づいていないがとんでもない体力だ。
なんとか助かったが、その代償は大きかった。カマはひん曲がっており、殴った拳も出血していた。
(まじか……これ治るかな)
地球でも異世界でも恭子にとって初めての狩りであった。
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