第1話4 コエと出会い3

私の自室となったのは2階の奥の南向きの部屋。


初夏の涼しい風が窓から吹き抜け、太陽の香りに包まれた優しい部屋。

名目上は療養になっていたからなのか、ゆっくりと過ごすことをみんなが考えてくれているのがわかる。


ある日を境に急に引きこもり、家族以外とは話さなくなった娘を純粋に心配してくれた。


部屋の窓から顔出して空を見上げる。


『ニーナ様ばっかりずるい』


「はぁ。また、私はずるいのかな。」


私自身から聞こえてくる、私の声は聞き慣れた普通の声にしか聞こえない。

でも周りはそう言ってくれない。


「可愛い」


褒め言葉だ。

そして褒め言葉には必ず妬みが待っている。


私は特別なんていらない。傷つかないでいい、普通が欲しかった。


「にしても、この周りの森も敷地だよね。今更だけど、公爵家ってすごいなぁ」


窓の外に広がる緑の森、奥に川も見える。

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