『勝訴』の紙、名前は『判決等即報用手持幡』

「さようなら」


そう言ってアタシは筋骨隆々の男の脰にアパッチ・リボルバーのダガーを突き刺し抉る。完全に息の根が止まったことを確認し死体を端に放る。


「やっと片付いた」


こういう作戦はいつものお手製爆弾&火炎瓶が使えないので嫌いだ。しかし、無事制圧を完了。これで心置きなく吹っ飛ばせる...アタシはポケットから小型爆弾を取り出しいかにも厳重そうな扉に貼り付ける。


「いいや限界だ!押すね!今だ!」


と、特に意味のないセリフを言って起爆し扉を吹き飛ばす。


「...」


...無残な姿となった扉を尻目に部屋へ入りざっと一通り室内を見渡す。特に怪しいモノはなし。気になったのは部屋隅の紙束...ざっと二千枚くらいか?


「...はぁ」


アタシはため息を吐く。


「ロータスくん!共和国が秘密裏に進めている計画を調べてきてくれたまえ!」どこぞの神にそう言われて遠路はるばる共和国の軍事施設に潜入したのはいいが...


「めんどくさ...」


紙束を適当に手に取ってざっと目を通す。大半は顔写真付きの書類...専門用語らしき表記もあることから何かの実験。恐らく人体実験のデータだろうか?後は何かの設計図...小型で円盤のような形をした何か...データの所々黒塗りでほとんどが数字で書かれている。これは...あれだ。全然関係ない機密実験のデータと謎の兵器の開発記録の暗号文を見つけてしまった。...回収すべきという事は分かるがこれを持って帰れば間違いなく暗号解読までやらされるのが目に見えている。その上で当初の予定である計画の内容に関する資料は見つかっていない。ハズレだ...また別の施設へ潜入しなければならない。つまりただ単に仕事が増えただけだ。やらかした...暗号解読して内容を精査してまとめて報告書作って...ポイントBに潜入してまた資料探して更に本職の仕事も消化して...アタシ過労死するんじゃないだろうか?


「持って帰r...っ!」


...廊下から足音!?馬鹿な!施設内にいたのは全て無力化したはず!...見逃した?いや、そんなわけがない。仮にそうだとしたらもう既に救援要請がでて応援が来ているはず...つまり共和国兵士ではない?だとしたら何者...そんなことよりこれはどうすべきか?どこかに隠れ...れる場所はない。接触を試みる...扉の裏に隠れて背後をとって確認...あ、扉はさっき吹っ飛ばしたんだった!何してんだアタシ!仕方がない...ここは待ち伏せしかないか。


...足音がだんだんと近づいてくる。アタシは入り口に向けてアパッチ・リボルバーを構える。


「...」


「おいおい、いきなり物騒だな」


現れたのは黄緑色の髪をした小柄な少年...?少女?どちらかは分からない中性的な容姿...黒いローブに黒いグローブ...だが一番特徴的なのは何か右目のみを覆うような独特な形状の仮面を付けている。


「動くな、手を上げろ」


アタシは右手のアパッチ・リボルバーを強く握り左手をポケットに突っ込む。


「分かった...だが、聞いてくれ。アンタが何者だとしてもウチは敵対する気はない」


「ならここに何をしに来た?その前に貴方、何者?」


「ウチは...検体S-AS14サーズ・フォーティーン。名前なんかない、好きに呼んでくれ」


そう言って目の前の人物は手を上げる。


「ふざけているの?」


「いいや、いたって真面目だ」


明らかに怪しい恰好。...だが逆を言えば共和国兵士でもないということだ。ここは...ん?そういえばこの顔をどこかで見た気がする。そう今さっき...


アタシはふと紙束から一枚紙を手に取る。そこには...S-AS14そう書かれていた。

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