プラスチック爆弾のプラスチックは合成樹脂じゃない

「...」


「...!っし!」


数多の風切り音、捉えるのがやっとの速さで繰り出される拳、この光景だけ倍速で流れているような錯覚さえ起きている。『全てを奪われた本物』対『全てを奪った偽物』...取り返すように、奪うように、その攻防は更に激しさを増している。


...美雨は美雨に一撃でも入れれば勝ちなので当然物量に任せて押しに来る。反対に美雨は一瞬の隙に全力を叩き込む為に決定的な隙を探している。つまり、完全に防戦一方...だからこそ


「私もいるぞっ!」


美雨の脳天めがけて蹴りをお見舞いする!


「...」


「頭に目でも付いてるのかよ...」


しかし、あっさりと私の奇襲は防がれる。だが、まだまだここから!


「時間は稼いでもらったからな!準備万端なんだよ!―――Materialize創製M134ミニガン機関銃!」


私の背後...殺意に塗れた巨大な銃身がその姿を現す...


「!」


瞬間、今まで無表情だった美雨の表情が焦りを見せたような気がした。


「こっからは祝福のうりょく勝負だ!」


―――――――――――ガガガガガガガガガガガガ!


分間約2,000発の弾丸、大勢の敵を掃討するために造られた兵器...そんな兵器がたった一人に牙を向けばどうなるか。答えは一つ、羽虫のように逃げ惑うことしかできない!


「...!」


美雨は全力で射線から外れて反撃を行ってくる!しかし、お札はコントロールを失いあらぬ方向へ飛んでいく。紙一重で回避し続けるがそれも限界...壁際まで追い詰めた。もう選択の余地はない...取れる行動は一つだけ。王手だ!


「死ね!」


そう言って私はM134ミニガン機関銃を発射した!...回避は不可能...!正面から飛んでくる死に美雨は...


「なっ!」


――――防がれた!?


...美雨の正面には彼女守るように光輝く何かがあった。それは『結界』...弾丸が結界に弾かれている。ここで祝福のうりょくを使ってくる...そんなことは


「読めてんだよ!リミッター解放!」


M134ミニガン機関銃の設定を分間2,000発から6,000発に変更!


「――――――くらえやぁぁぁ!」


約三倍の物量が美雨を襲う!流石に結界も耐えきれないのか段々と罅が入り欠けていく...これで終わり!そう思ったその時...


「...」


「!?」


M134ミニガン機関銃が急遽その攻撃を停止した...何が起こったのかと背後を確認し私は戦慄した...のだ。M134ミニガン機関銃の銃身に幾つものお札が突き刺さっていた。


...!そう思った時にはもう遅い...美雨の拳は眼前まで迫り...


―――――私はを浮かべた。


美雨の拳は私には届かなかった。からの攻撃によって...


「忘れてもらっちゃ困るヨ!」


何もない空間から美雨の声がする。何もないように見える空間から...―――――。私が美雨と入れ替わる瞬間に渡していた。周りの景色と同化しずっと身をひそめながらこの時を待っていたのだ。完全に勝ちを確信しこの瞬間を!


「...!」


「返してもらうヨ」


美雨の放った一撃は完全に美雨の腹部を捉え...そのまま腹部を貫き完全にその機能を停止させた。全身から力が抜けたように美雨にもたれ掛かったと同時にその体が灰のように霧散していく。


い―――。


最期の一欠片まで灰になり完全にその姿が消えた...消える瞬間、その口が少しだけ動いたように見えた。


「...」


気が付けば少し悲し気な顔をした美雨がそこに立っていた。


「戻ったのか?」


少し自分の手と足を動かし何かを確認した美雨はコクリと頷き...


「「「ボス!」」」


それを見ていた猫といつの間にか目覚めていた兄妹人質 が一斉に美雨の元まで走っていく。これで一件落着...


「レニちゃん~まだ何にも解決してないよ~?」


「...そうだったわ」


無線から聞こえた声に私は正気に戻る。...私ここに何しに来たんだっけ?                                                                                                                                                                                                                                         

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