アルプス一万尺は29番まである
「
「なるほど、穴を掘って魔眼の効果範囲から抜け出したか。しかし、姿を見せたのは愚策だったな!」
「かもな」
私は適当に返事しながら後ろにいる芽衣に後ろ手でハンドサインを送っていた。
「...了解しました」
相変わらず察しがいいな...
「一応、確認なんだがお前らは美雨の部下なのか?」
「そうだ、美雨様は俺たち兄妹を拾ってくれた恩人...あの方の邪魔をするのならここで死ね」
「なるほどな...一ついいか?」
「なんだ?」
「お前ら...戦うのは初めてか?」
「「!」」
兄妹そろって驚いた顔をしている。...分かりやすいな。
「ならちゃんとした戦い方を教えてやる」
「ほざけ!」
そう言って兄の方が魔眼を使おうとする...しかし!
「っ!
「!」
妹の掛け声に反射的に後ろへ下がる。...いい判断だな。
直後にバン!という音と共にゴルフクラブのドライバーが凄い勢いで上空から飛んで来た。下がらなければ直撃していた。まぁ、もちろん普通はこんな所にゴルフクラブは飛んでこない。つまり...
「『
芽衣が何もないはずの場所に蹴りを入れる。空を蹴ったはずのその足は...
「...っつ!」
私達が認識できない何か...妹に直撃する!
「
「おっと君の相手は私」
私は通せんぼするように兄の前に立ちはだかる。
「邪魔だ!魔眼―――解放!
「妹の方は結構周りが見えてるな...」
そう、私が今手に持っている物は手鏡...魔眼を使えば自分も巻き添えになる。
「くっ!」
「...どうすればいいか迷ったな。でも戦場で立ち止まるのはやめときな」
止めを刺しに兄へ接近する。
「...近づいたな!この距離なら鏡は視界に入らない!魔眼―――」
「残念っ」
私は少し横に首を傾ける。...そう、確かにこの距離なら私の持っている鏡を視界に入れずに魔眼を使えるだろう。しかし、問題は私の背後...
「...」
「チェックメイトです」
気絶し芽衣に抱えられてる妹がその視界に入っていた。
「その
「...そうか。あがっ...」
私のチョップで兄の方も大人しくなる。
「...状況終了。どうなさいますか?」
「これを手土産に美雨から話を聞く」
「了解いたしました」
二人で兄妹を担いで更に奥へと進む。
「...芽衣」
「承知しております」
...見られている。鳥がこっちを見ている。いや、正確には呼ばれているのだろう。
五分くらい鳥の後を追うように歩いていると鳥が突然、廃ビルの前で止まる。...入れということだろう。
「芽衣」
「これは中々ですね...」
廃ビルに一歩足を踏み入れただけで分かってしまう程に視線を感じる。数百の何かがこちらを監視している。
「レニちゃん生きてますか~」
「あぁ、一歩間違えば死にそうだけどな」
「でしょうね~」
急に無線からのんびりとした声が聞こえた。
「で、いきなりどうした?」
「先ほどの軍服の方達の所属が分かりました~」
「本当か?」
「はい~先ほどの軍服の方達の所属は...―――」
無線を遮るようにコツン、コツンと足音をたてふらりと目の前に黒髪で赤いチャイナドレス、白いヘイローを付けた女性が現れる...
「...」
「貴方がアストラエア 反神派筆頭
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