押印と捺印は微妙に違う

「悪かったって」


「許すと思うか?」


『ケイマーダ・グランデ』のアジトに戻った私は首領ドンに詰められていた。まぁ、あれだけ派手にやれば怒られるのは当たり前だろう。


「今いいですか~」


「あ゛?」


そんな中、間の抜けた声が部屋に響く。


「調べ終わりましたよ~」


「終わったのか」


「はい~ついでに...も調べ終わりました」


「そうか、で?ウチに喧嘩売って来たのは何処の馬鹿だ?」


「はい~確定ではないですが...恐らく『王国の暗部』かと」


「はぁ?王国だぁ?」


「王国って『南ヒミンビョルグ王国』か?」


「はい~王国の暗部...暗殺部隊ってやつですね~」


『南ヒミンビョルグ王国』...クロユリ合衆国の隣国で神を王と崇める王政国家。現国王は『ヘイムダル・ホワイト・ジ・アース』。


「王国の暗部がウチに...というよりレニちゃんに用事があるみたいですね~十中八九...『リキャスター幹部襲撃事件』を調べるな殺すぞって意味でしょうね~」


「『リキャスター幹部襲撃事件』と『王国』何の関係が?」


「それは分かりません~ですが...事件当時の映像は発見しました~」


「見せてくれ」


「はい~ではモニタをご覧ください~」


そう言って映し出されたのは女性が横断歩道を渡ろうとしている映像だった。一体これが何...そう思った瞬間、女性が慌ててヘッドスライディングを始めた...かと思いきやそのコンマ何秒後に黒い何かが道路を走り抜けて行った。


何だこれ...


「これが事件当時の映像です~」


「いや、何も分からん」


「でしょうね~スロー再生します~」


女性が横断歩道を渡ろうとしている映像...それは分かる。女性が慌ててヘッドスライディングを始めた。これも分かるこの後に来る何かを避けようとしたのだろう。で肝心の黒い何かが...


「は?」


私は思わず 面食らってしまった。そう、黒い何か...その正体は車だった。そりゃ道路なんだから車が走っていて当然...だが、その車は一つだけ決定的に間違っていた。つまり...で交差点を滑っているのだ。


「明らかに何かしらの祝福のうりょくでしょうね~」


「この前の...この車に何があったのか分かるか?」


「残念ながら映像がありませんね~」


「そうか...」


つまり分かったのはひっくり返った車が爆速で交差点を通過したことだけか...


「いえ~そうとも限りませんよ~だってこの最初の女の人...『アストラエア 反神派筆頭 美雨メイユイ』さんですからね~」


「は?」


映像の最初の車に轢かれそうな女が美雨メイユイなら...


「断定はできませんが彼女は白ということになりますね~むしろ思いっきり命を狙われてますね~」


「...」


...なるほどこの事件の輪郭は掴めた。


「大体分かった」


「流石レニちゃんです~」


「後一つだけ調べてくれないか?」


「この際ですから~いいですよ~」




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