フラミンゴは嘴を頭にぶっ刺す

一方...


「あはっはははっはあははははぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!」


奇声を上げながらMAC11《サブマシンガン》を乱射するクレイジーガールが一人。


「...無駄ですね」


しかし、その弾丸は標的に当たることなく空中で弾かれたかのように地面へと落下していく。


「動きからして凡人族ミームか?お前...」


凡人族ミーム祝福のうりょくを持たない。そのため戦闘技能が他の種族とは少し違うのだ。...相手が祝福のうりょくを持っている前提でそれを見極めて反撃するスタイル。典型的な凡人族ミームの動きをこのマント野郎は行っている。しかし、ではさっきから弾丸が悉く弾き落とされているのは何故なのか、答えは簡単...


「『神器セイクリッド』か!」


「ご名答...」


...人間にんぎょうは生きる上で色々な物を生み出す。汗であったり、爪であったり、二酸化炭素であったり、排泄物であったり...その気がなくても生きる上で勝手に出来て勝手に体外へと流れ出る。では神に生きるという概念があったとして神は生きる上で何を生み出すのか?...その答えが『神力しんりょく』である。それは神が意図的に放出することもあれば勝手に生み出され外界へと流れ出る。そしてその神力しんりょくは物体であったり人間にんぎょうに宿る。神力しんりょくが宿った物や人間にんぎょうを『神器セイクリッド』と呼ぶ。『神器セイクリッド』はそれそのものに祝福のうりょくが宿り、本人や使用者を経由することで宿った祝福のうりょくを使用できる。


...今回の場合、典型的な凡人族ミーム...能力を持たない動きなので本人ではなく物体を経由した『神器セイクリッド』。祝福のうりょくは恐らく『反射』や『停止』など...考えてもキリがないが攻めてこないとこを見るに効果範囲はかなり狭い。せいぜい半径一、二メートル...なら!


自分テメェで試せばいいだけだろ!」


弾丸を打ちながらマント野郎に肉薄する――――しかし!


「馬鹿ですか?」


「ガッ!」


効果範囲に入ったところで何故か自分の体が後方に吹き飛んだ!


「痛てぇ!」


「頑丈ですね。流石、獣人族ハイブラー


そう言いながら好機とマント野郎は懐からGlock G19ハンドガンを取り出し頭蓋を狙い発砲する。


「ハッ!面白味ないモン使ってんなぁ!」


「全国の使用者に怒られますよ?」


軽口を叩いてみたものの状況は良くない。確実に狙いを定めて来ている以上、隙は見せられない。攻め側に回れないのはかなり痛手だ。更にMAC11《サブマシンガン》を乱射しすぎたせいで弾がない。正確に言えば再装填リロードすればいいがその隙がない。残った弾は両手合わせて300発ぐらいだろう。なによりまだ『神器セイクリッド』の突破方法が分からない。


「やべぇなこれ」


「諦めましたか?では死んでください」


「...いいや、まだこっちには最終手段が残ってるんだよ」


「...ほう?」


残された最終手段...それは――――――――


『戦略的撤退!』


全力でここから離れる!


「逃がすと思いますか?」


「アガッ!」


右肩を抜かれた...しかし、。そうだそのまま


路地裏、弾丸を躱しながら走り抜ける!そして――――――


「どこに行った!?」


路地裏を抜けた瞬間、マント野郎は動揺を隠せないでいた。目を離した一瞬の隙に標的ターゲットの姿が消えた...


「こっちだ」


「しまっ...」


突如、から放たれた弾丸が右腕に直撃する。


が『斥力』の『神器セイクリッド』か?」


マント野郎の右手から滑り落ちた物体、それは何かリモコンのような形...というかどう見てもリモコンである。作者はあんまり使わない扇風機のリモコン...ボタンを押せば自身を対象に斥力を発動させる。なるほどシンプルだ、だからこそこいつは弾丸が飛んでくることを前提にしか祝福のうりょく。...理由は相手の攻撃に合わせてボタンを押さなければならないから。そして攻め側に回ると祝福のうりょくが意味をなさなくなる。だって倒したい相手が祝福のうりょくによって飛んで行ってしまうから。つまり...


「さて、こっからはこっちの番だぁ!」


マント野郎の顔面に蹴りを叩きこむ!...そう、今いる場所は街路樹の上。


「地上よりもこっちのが得意なんでな!」


「くっ...!」


何とか蹴りを両腕で防いだが...しかし、獣人族ハイブラーの蹴りは凡人族ミームのそれとはわけが違う。マント野郎の腕はもう既に使い物にならない程、複雑に折れていた。


「...」


「おっと、逃がすと思うか?」


こうなれば戦略的撤退逃げるのは必然だろう...


「なっ...」


だからこそ...突如、動かなくなった足にマント野郎は動揺を隠せずにいた。金色の髪がまるで蛇のように足に絡みついていた。


金槍ゴールデン・ランス...なんでそう呼ばれてるか教えてやるよ」


そう言い放つとマント野郎に絡みついた金色の髪が意志を持ったように動き出し...腹部を貫いた。


「アガッ!」


嗚咽を上げながらも手に持ったGlock G19ハンドガンで絡みついた髪を打ち切る。ここでその対応が出来るあたり相当訓練を積んでいるのだろう...しかし、相手が悪かった。


獣人族ハイブラーとの戦いで一番大事な事を教えてやるよ――――――それは...。じゃねぇと...」


「ガッ...」


マント野郎が突如、地面に倒れ伏す。


...獣人族ハイブラーには起源オリジンはあっても祝福のうりょくはない。では単純な肉体強化されているだけなのか?否、獣人族ハイブラーは元になった生物の生態を引き継ぐ。故に...自然界で生き抜く為のを彼らは所持している。その最たる例が―――――『毒』。獣人族ハイブラーとの戦いとは即ち...対生物特化の殺し屋と戦うことに他ならない。


「こいつは貰ってくぜ?」


そう言ってリモコンを回収し、アジトに戻...


「あ゛?」


知らない間にアジトの入口が瓦礫に埋もれていた。というか更地になってた...


「...あいつぜってぇ殺す」


これをやった犯人に殺意を抱きながら瓦礫の撤去作業を開始する。


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