十二支と干支は違うもの

「おぅ...これはこれは」


血に塗れ、死臭の漂う裏路地。目の前には数十というスーツの死体が転がっている。駆けつけたはいいもののもう既に事が終わった後、争いというよりは殺戮に近い凄惨。


「おや、ようやく来ましたか」


そこに立つフードを被ってマントを羽織る誰か...まぁ、十中八九この惨状を引き起こした犯人だろう。ただ...


「チッ...囲まれてんな」


「十三...あいつ含めて十四くらいか」


当たりに感じる気配...向けられた殺気を数えつつ私達は目配せをする。


「分ぁってるよな!」


首領ドンがこっちを睨みながら言う。要するにケジメつけさせたいからアレリーダーっぽい奴はこっちで殺らせろということだ。なので...


「露払いはまかせろ」


私はスーパーブラックホーク愛銃に.44マグナム弾を装填し構える。


「ここまでやったんだ!死ぬ覚悟はできてんだろうなぁ!」


開戦の合図と言わんばかりに首領ドンはジャケットから取り出した二丁のMAC11サブマシンガンを乱射しつつマント野郎に向かって走り出す!


「さて、私もやりますか」


そう言った瞬間、隠れていた奴が二人物陰から飛び込んでくる。こちらも例によってマントとフードで正体を隠している。ふむ...両者、手に持っているのはナイフ。動きからしてその辺のゴロツキではなく訓練を受けた暗殺特化...どこかの暗殺部隊だろうか?だとしたら一体どこの組織か...謎は深まるばかりである。まぁ、今はそんな事より目の前のことに集中しよう。


...こちらへ向かってくる日本のナイフを受け止めながら私は久しぶりに自身の起源オリジンを口にする。


「 『戦役』――――Load:WORLD HISTORY読み込み開始 『コード:1870』...Loading completed読み込み完了全行程異常なしオールクリア...Materialize創製!」


そう口にした瞬間、私の背後には何百、何千という数の物体が出現する。『シャスポー銃』...から引っ張ってきたとある戦役に使われた銃。そう、私は『戦役』の史人族ヒストリア


故に―――――争いで私に勝てる者など存在しない!


「...死ね」


私が指を鳴らした瞬間、背後の銃全てがその口から弾丸を発射する!放たれた弾は壁や柱を見境なく破壊していく。凄惨な裏路地はその残虐性を遥かに増し何もない更地へと変えていた。――――はずだった。


「へぇ...」


しかし、たった一人...更地の中でたった一人、残骸にならずに生き残っていた。これには流石に驚いた。こういう主人公の最初の見せ場というのは圧勝に終わるモノではないのか...


「...」


残骸にならずにその場でマントが立ち上がる。


――――バン!


立ち上がったマントに間髪入れずに銃弾を撃ち込む。しかし...


「銃弾が効かない...というより


背中で銃弾を弾く程の硬さを皮膚または甲羅持つ...おそらくこいつは獣人族ハイブラー...起源オリジンは亀か...あるいは...


「...!」


マントがここぞとばかりに動き出す。流石にこの距離はスーパーブラックホーク愛銃を構えるには近すぎる。背後の『シャスポー銃』も祝福のうりょく維持の限界がきて消滅している。これは...不味い!獣人族ハイブラー人間にんぎょうの中でも最強の身体能力を持っている。凡人族ミームであれば蹴りだけでその頭蓋が粉砕する。つまるところ、獣人族ハイブラーに接近戦を仕掛けられた時点でほぼ死んだと思った方がいい。私はこの時点で詰んだといってもいいだろう。


「...だが、残念。惜しかったな」


迫る獣人族ハイブラーの首から朱い液体が滴っている。そう、私の祝福のうりょくで創製したスローイングナイフ...祝福のうりょくで創製したが故に手に持つ動作、投げるモーションすらない一撃!


...だから言っただろ?『争いで私に勝てる者など存在しない』って


斃れていく獣人族ハイブラーを尻目に私は踵を返す。ふと、手にから朱い血が滴っていることに気がつく。最期に一撃入れられたか...


「...だから獣人族ハイブラーは嫌いなんだよ」


そう言って私は自分の腕をスーパーブラックホーク愛銃




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