アルバトロス...最近改名したんだってね

『工芸の町スヴァルタールヴァヘイム』...合衆国南部に位置する町で怪しさ満点の霧の町ニヴルヘルとは違って活気に溢れた華やかな町。大通りでは沢山の露店が開かれていて食べ物、装飾品、骨董品など色々なものが売られている。


私は露店で串焼きを買って大通りの裏路地へと抜ける。そしてとある民家の裏手にある階段を勝手に降りる。


階段を下っていくと大きな扉とそれを守るように二人のガタイの大きなスーツの男が立っている。


「お嬢さん、ここは立ち入り禁止ですぜ」


「帰った、帰った」


男たちは私を見つけると手でしっしっと払うような動きをしながら帰れと促す。なので私は...


―――――――――――――男たちをブン殴る!


「ガッ」っと言いながら壁に叩きつけられた男たちを尻目に扉を蹴り開け中に入る。


扉の向こうでは待ってましたと言わんばかりの人数のスーツの男女が私を囲むようにして立っていた。


「...ボスから丁重に御もてなしせよとのご命令だ――――行くぞ!」


「「「「うおぉぉぉ!」」」」


―――――誰かが放った号令と共に全員がこちらになだれ込んでくる。そして...


「...で、あっけなく侵入されたと?」


「すんませんボス」


私は迫りくる兵隊ソルジャーを片っ端から捻り潰して施設の最深部まで来ていた。


「なぁ、クソガキ...ここは遊び場じゃねぇんだぞ?」


「そんなクソガキに遊ばれてるお前らが悪い」


「はっ...ちげぇねぇ」


施設の最深部、幾つものモニターとコンピュータが置いてある広い部屋。ここはクロユリ合衆国の隣国、『ズラジカル・ガーデン諸島』のマフィア『ケイマーダ・グランデ』のアジト。そしてこの部屋の隅にあるテーブルに腰掛ける金色の髪をした女性。左目には眼帯、謎の学生帽っぽい帽子に黒いジャケット...大人な女性感を出そうとして反抗期の子供っぽさが前面に出ているイカしたファッションセンス...彼女こそ、この施設とここにいる兵隊ソルジャーを取りまとめているファミリーのトップドン。...『金槍の頭目ゴールデンランスヘッド』。


「で?てめぇこんな所に何しに来た」


「いや、用事があるのはそっちの奴だ」


そう言って目線を移した先には大量のモニターとコンピュータに囲まれながらキーボードを叩く小柄な少女...不釣り合いな大きいヘッドフォンを首にかけボサボサの髪に大きな丸メガネ。外見からは想像も出来ないがこの少女こそ『鷦鷯しょうりょう相談役コンシリエーレ』...所謂、右腕というやつか。


「おぉ?レニちゃんではないですか~」


「おひさ


こっちに気づいた少女がフレンドリーに挨拶してくるのでこっちも雑に挨拶を返す。


「して~今日は何用で~?」


「いや、ちょっと調べてほしいことがあってな」


「ふむ~聞きましょう~」


そうして雑にリキャスター幹部襲撃事件の概要を話す。


「なるほど~わかりました~では...」


「三割でどうだ?」


「ん~まぁ、無難ですね~...引き受けましょ~」


...友人でもほうしゅうの話も抜かりなくするあたり流石、相談役コンシリエーレといったところか。


金の話も終わったからか少女は真面目な顔でモニターと睨めっこを始める。


...この『ケイマーダ・グランデ』のアジトでは合衆国全域の監視カメラをハッキングして閲覧できる天才ハッカーがいる。そう、相談役コンシリエーレでありながら少女の本分は情報収集。この合衆国においてここ以上に情報が集まる場所などほぼないと言っていい。


「相変わらず狡いな」


「そんな狡い奴を金払って勝手に使ってんだからてめぇも人のこと言えねぇだろ」


なんて軽口を言い合っているといきなり部屋の扉がバン!という音をたて勢いよく開いて一人の男が慌てながら入ってくる。


「ボス!何者かがウチのアジトを探して暴れています!」


「あぁ?数は!」


「十人程度です!ただウチの奴らが片っ端からやられています!」


「あぁ?クソッ!来客が多い日だな畜生!おい!」


「わーってる、流石に手伝うって,,,多分、私の追手だからな」


私がここに来てこのアジトを探す奴が現れたということはなんだろう。いや、しかし...どこから漏れた?そしてそこまでして隠したい事ってなんだ?


増えていく疑問を整理しつつ私は首領ドンと共に現場へと走って行く...

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