第10話 リチェル五歳
ルイスから学ぶようになって凡そ二年が経とうとしていた。
ルイスは、ちょっと変わっているけれど良い先生だ。私の魔力のコントロールは格段に良くなったし、ご主人さまが得意だった氷魔法も上達した。ご主人さまは、大きな私の氷像を作ってくれたけれど、私も、ミニチュアならご主人さまの氷像を作れるようになった。ルイスはお母様に告げた通り、一般教養やマナーやダンスなども教えてくれていて、私が必要なものは全て教える気満々だ。たまに、ルイスの熱量が怖いと思う時がある。
今日は私の五歳の誕生日だ。
あの時のご主人さまと同じ歳になったんだ……と思うと、感慨深い。
ご主人さまのその後は、まだ調べられていない。私の年齢だと調べる手段がなかった。多分、幼女のうちは無理だと思う。
「今日来るのかい?」
なぜかお母様より私の誕生日に張り切って、朝から来ていたルイスが不愉快そうな顔をしていた。
「彼の子どもたちが、どうしてもリチェルに会いたいらしくて、断れなかったのよ」
お母様が溜め息をついた。
「侯爵の方はお断りしたわ。……なぜ放っておいてくれないのかしら?」
ん? んんん?
「三年前に夫人が亡くなられて、寂しいのかもしれないな」
「それにしたって、兄弟二人でやってくるとか……」
「何歳だ?」
「……確か、長男が十二歳。次男が十歳だったはず」
えっと、もしかして今日の私の誕生会にお父様の息子たちが来るの?
私の誕生会といっても、ごく内輪だけのささやかなものだ。何時もはルイスとお母様とこの家に使えてくれている使用人たちで祝ってくれる。それは、こじんまりとしているけれど、和気藹々で、楽しくて、ちよっとだけくすぐったくなるようなひと時だった。そこに侯爵家の息子たちが来るの?
私は未だにお父様の顔もその息子たち……お兄さまたちの顔も知らなかった。
だから、もしそうなら、私はお兄さまたちと初顔合わせになる。
私の誕生日なのに、プレッシャーが……
「ふーん。今からリチェルと仲良くしようたって駄目だ。私がリチェルの一番だとわからせてやろう」
ルイスが不適な笑みを浮かべた。……何故か臨戦態勢の時のような魔力がルイスの身体から溢れ出てきている。
「……ルイス、大人気ないわよ」
お母様が今日何度目かの溜め息をついた。
そして、やって来ちゃったの。
お兄さまたち。
「初めまして、私の名前はレオンハルトだ。レオンと呼んでくれ」
「初めまして、私の名前はアンドリューだよ。アンディと呼んでね」
ふえっ。
目の前に見目麗しい兄弟が立っていた。
……はっきりいって、私って貴方たちのお父様の浮気相手の子どもなんですけど? 大丈夫ですか? と尋ねたい。普通は疎ましいはずだよね? 思わず二人をまじまじと見つめてしまう。
レオンは髪の色が私と同じだった。これは、兄妹だから同じなのかな? レオンは、落ち着いた雰囲気で、アンディより背が高いから一番上のお兄さま?
アンディは金色の髪で薄いブルーの瞳。快活そうな感じがした。
二人ともジーッと私を見ている。
なんで、そんなに見るのかな?
私は、二人からジーッと見つめられて落ち着かない気分になった。
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