第9話 私の先生
ルイスが私の先生になった。
何と驚いたことに、ルイスはお医者様ではなかった。魔法使いだったの。生まれたときから、私の魔力量は物凄く多かったみたい。お祝いを持って、生まれたばかりの私を見にきたルイスは、直ぐに気がついたらしい。
魔力量が多すぎると、魔力暴走を起こすことがあって危険だということで、早いうちから魔法の先生について学ぶのが通例なのだそうだ。
私は知らなかったのだけれど、三歳になった直後からルイスは再三私の魔法の先生に立候補してくれていたらしい。でもお母様は、言葉もろくに話せるようになっていないのに、まだ幼すぎて無理と消極的だった。それでもルイスは言葉が話せないのは魔力量と知識の吸収速度のせいで、絶対この娘は天才だからと言い続けて今に至ったと。……天才の根拠は良くわからないのだけど。内心ルイスの独断と偏見ではないかと思っている。
「うん。思った通りだ。リチェルの魔力量は大魔法使いにも匹敵するほどあるね。この歳でこの量だと成長したらどれくらいになるのか計り知れないよ」
初めてのルイスの授業は、私の魔力測定からだった。
魔力の属性と量を鑑定するクリスタルでできた玉に手を当てるというものだ。
こんな高価そうな物を一介の男爵家なんかに持ってきてよかったの? と少し引いてしまった。
それというのも、前世で、大魔法使いバルザックから、この鑑定の玉がこの国に二つしか無い貴重な物だと聞いたことがあったからだ。
「ああ、一目瞭然だったけど、属性は光だ。そして、氷と火が少し?」
そう、鑑定の玉に手を当てた途端、眩いほどの金色の光が溢れ出たの。
「困ったな。リチェルは、国で保護されるレベルじゃないか」
へ?
光は、もしかして前世がサファイアテイルだったから? 氷は……ご主人さまが得意だった属性だ。……っ、ふふっ。火はバルザックが得意な属性だったよね? と、思ったら懐かしさでいっぱいになった。まあ、たまたま属性がそうなっただけだとおもうけれど。
「ちょ、駄目よ! ルイス!」
私とルイスの授業を見守っていたお母様が慌てて口を挟んだ。
「リチェルは、男爵家の平凡な娘なの。好きに生きていいのよ。国になんかに手出しなんてさせないわ。光属性は秘密にしましょう? ルイスも私の可愛い娘が、国に取られたり、稀少な光属性持ちを狙う輩に攫われたら嫌でしよう? 嫌よね? ねっ?」
お母様がルイスに詰め寄る。
私は、それをただ唖然として眺めるだけだった。なにせ、三歳児だし。
しかし、そんなことを言われてもルイスが困るだけでは?
そう思っていたら、
「そうだね! うん。そうしよう!」
ルイスは、あっさりお母様に同意した。
ルイスは、ことごとくお母様に甘い。もう、弱みでも握られているレベルだ。幼馴染みってそういうものなのかな? あれ? 生まれてから2歳までご主人さまの傍にいた私の幼馴染みってご主人さま? ふと思いついて、ホワワンと胸が温かくなった。
「……そうだなあ、それじゃあ、リチェルには光属性を隠す魔道具を準備しよう。うん。それがいいな。まだ小さいから当面は魔力コントロールの学習をしようか。あ! マリアン、その他のこともちゃんと私が教えるからね。心配しないで」
とんとん拍子に話を進めていくルイスにお母様は呆れた顔をしていた。
「あ……リチェル、ごめんね。私には、もうこうなったルイスを止められないわ」
何故かお母様から謝られた。
そして、私はルイスから色々なことを学ぶことになった。
私の左の耳には、光属性を隠す魔道具のピアスをつけられた。ルイスは躊躇うことなく三歳児の耳にピアス穴を開けた。勿論、魔法で痛みが無いようにしてくれたけれど、意外と容赦ない人だなあ……と思った。
「うん。いいね。その色似合っている」
そう言って自画自賛したルイス。ルイスのつけてくれたピアスの色は、赤色。……ルイスの瞳の色だった。
「ちょっと、うちの娘に何独占欲を発揮しているのよ! やめてくれない?」
透かさず、お母様が注意していた。
ルイスって良くわからない人だ。私が、もう少し沢山お話するようになったら、お母様にルイスのことを聞いてみようと思う。お母様の幼馴染みだから悪い人では無いと思うのだけれど。
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