第3話 ご主人さまと私

 ご主人さまはすくすくと成長している。


「リチェ!」


 私を見つけるとすぐにご主人さまは飛んでくる。それがまた愛らしくてしかたがない。


 私のご主人さま最高すぎる。


 私は、鳥の姿より人の姿でいることが多くなった。そのほうがご主人さまのお世話をしやすいからだ。


『ご主人さま、そんなに急いでいらっしゃらなくても、リチェは逃げませんよ?』


 ご主人さまと契約をしてから一年が経ち、ご主人さまは五歳、私は二歳になっていた。二歳といっても私の場合はもう成獣なので、大して変わらない。まぁ、少し経験値が上がって態度が落ち着いてきたくらいかな? 精霊寄りの私たちは、成獣になると見た目はまったく歳をとらなくなる性質があるため、変わるとすれば内面的なものになる。あとは、パワーかな? 力は、契約したことでご主人さまからの魔力の供給もあってメキメキ伸びた。あ、貰っている魔力はほんのちょっぴりだよ。しかし、侮るなかれ! そのちょっぴりで私のやる気はマックスまで高まるの。


 実は、自から見てもサファイアテイルは超お得な使い魔なのだ。というのも、他の使い魔とは違って、サファイアテイルは、ご主人さまからの魔力を貰わなくても、本来大丈夫な鳥であり、ご主人さまに負担をかけない鳥なのだ。

 

 でもね、私はちょっぴりだけご主人さまから魔力を貰うことにしている。だって、可愛いご主人さまの一部をからだに取り入れられるという特権。そんな甘い誘惑に耐えられなかったんだもの。ご主人さまは魔力が膨大にあるからこのくらい大丈夫なはずだし、むしろ絆が深まって、そのうちご主人さまと私の合わせ技的魔法も産み出されちゃうかもだし。


「リチェ! 一緒に裏の森に行こう!」


 私に抱きついて、ご主人さまが勢いよく言う。

 ああ、この腰まで届かないところでのハグ。可愛くて、可愛くて……私の心臓、壊れちゃうかも。


『今からですか?』


 うっ。

 私を見上げて目をキラキラさせているご主人さまに悩殺されそう。


 とはいえ、もう昼もかなり過ぎたところだし、今からだと遅くないかな?

 少し迷ったけれど、ああ、駄目だ。ご主人さまには適いそうにない。


「うん、そう! 見せたいものがあるんだ!」


 ご主人さまから、こんなに楽しそうな笑顔を向けられては、何としてもご主人さまの願いを叶えたくなってしまう。


 うん、日が暮れるまでに戻れば大丈夫かな?      最悪、遅くなったら私がご主人さまを抱っこして飛べばいいもの。


『承知しました。ご主人様、参りましょう』


 特に準備も無いので、そのまま、ご主人様と私は手を繋いで屋敷の裏手にある森へと向かった。


 ご主人様が私に見せたいものって何かな?


 すごく楽しみ。


 知らず知らず私は口許に笑みを浮かべていた。


 そして、それを嬉しそうにご主人さまが見つめていたなんて……私は少しも気がつかなかった。


 

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